海外試乗

ポルシェ マカンを脅かす官能マシンが登場! マセラティの新型SUV「グレカーレ」はミドル級SUVに吹き荒ぶトライデントの新たな風になる

当初の予定よりやや遅れて登場したマセラティの新しいミドルクラスSUV「グレカーレ」。このセグメントを得意とする輸入車メーカーは数多いが、グレカーレの優位性とは何か?イタリア・ミラノで開催された国際試乗会にて、ステアリングを握った第一印象を報告しよう。

SUVとしての素養も備えた官能マシン

昨今、スポーツカーメイクスがSUVをリリースすることにさしたる驚きはないが、イタリアンブランドとしては初めて、2016年にSUV市場に挑んだのがマセラティ・レヴァンテだった。初公開されたパブリシティフォトが弊誌の表紙を飾った時、そのセンセーショナルで理屈抜きのカッコよさに興奮したことを鮮明に覚えている。

MASERATI GRECALE TROFEO

上位グレードの「トロフェオ」は0→100㎞/h加速3.8秒、最高速度は285㎞/hを記録。完全自社製のV6エンジン、ネットゥーノを搭載する。

そして2022年3月末、イタリア・ミラノでマセラティの新型ミドルクラスSUV、グレカーレと対面した時、あの時とまったく同じ興奮を抱く自分がいた。”猫も杓子もSUV”な現代でも、グレカーレは6年前のようなトキメキを与えてくれる……。早々に、そんな無上の歓びを胸に、スタジオでのプレゼンテーションから国際試乗会はスタートした。
グレカーレにはお馴染みの3つのグレードが用意される。エントリーグレードの「GT」と中間の「モデナ」には、2L直4エンジン+48Vマイルドハイブリッドを搭載。最上位グレードの「トロフェオ」は、スーパースポーツMC20が積むネットゥーノ・エンジンをベースにウェットサンプ潤滑システム、気筒休止システムの新規採用などの変更を施したV6ツインターボが搭載され、全グレードとも、必要に応じてトルクを100%後輪に送ることができるAWDシステムを採用。2023年には、マセラティ初のフル電動モデルも登場予定で、すでに「フォルゴーレ」の名も与えられ、プレゼン会場には試作車も展示されていた。

MASERATI GRECALE MODENA

ミドルスペックの「モデナ」は「GT」とパワートレインを共有するが、最高出力は330psへと30ps高められている。0→100㎞/h加速5.3秒、最高速度は240㎞/hをマーク。

プラットフォームはアルファ・ロメオ・ジュリアなど同族ステランティスの他のモデルにも採用される「ジョルジオ・プラットフォーム」の改良版を使用。ベースのGTは全長4846mm、全幅1948mm、全高1670mm、モデナとトロフェオは全幅1979mmとなり、本命ライバルといえるポルシェ・マカン(全長4726mm、全幅1922mm、全高1621mm)よりも若干大きいボディサイズとなり、ミドルクラスSUVの中では最大級と言っていいだろう。
インテリアはレザーとカーボンファイバートリムにより、スポーティかつモダンな雰囲気でパッケージされている。12.3インチのセンターディスプレーとその下には8.8インチのディスプレーが備わり、この2枚の間にシフトセレクタースイッチが配置される。しかし、このスイッチ操作には多少の慣れが必要であったことをエンジニアに伝えると、車内スペース確保の観点からのレイアウトであり、570Lのラゲッジスペースや後席の広さの獲得につながったとのこと。本命ライバルのマカンだけでなく、メルセデス・ベンツGLC、BMW X3/X4などの実力派とも渡り合う、SUVとしての素養はしっかりと身に付けたモデルだと言えるだろう。

後席やラゲッジスペース(GT/モデナは535L、トロフェオは570L)は余裕のあるスペースが確保される。写真のモデナの内装は、ピエール・ルイージ・ネルヴィの建築からインスパイアされたデザイン。

走行モードによって乗り心地は大きく変わる

今回はGTとトロフェオを合計2時間の試乗が許され、そのステージは狭く曲がりくねった田舎道、アウトストラーダ、そしてミラノの中心街だ。グレカーレの秘めた性能をすべて理解するには物足りないプログラムであったが、それでも初対面の印象を裏切ることはなく、むしろ日本国内での試乗を待ち遠しくさせる内容だった。

12.3インチのメータークラスター、同サイズのインフォテイメントディスプレイ、その下の8.8インチのディスプレイは空調機能を司る。ステアリングに装着された回転式ドライブモードコントローラーの中央にあるボタンで、ドライブモードとは別にダンパーモードの切り替えが可能だ。

まず試乗したGTは、車高調整機能付きエアサスペンションやアダプティブダンパーがオプション装備されていた。走行モードを「コンフォート」にセットすると、ヨーロッパの田舎道にありがちな荒れた舗装路も見事にいなす一方で、試しに同じ道で「スポーツ」に切り替えてみると、サスペンションは顕著に引き締まり、コンフォート性は消え失せてしまった。走行モードによるサス設定は大きく異なり、ワインディング路ならどんな走りなのか? ぜひ国内で試してみたいチェック項目のひとつだ。

MASERATI GRECALE GT

Cピラーにはトライデントエンブレムを配し、リアエンドにはジウジアーロが手がけた3200GTをモチーフとしたブーメラン型のテールライトを装着。グリルデザインは全モデル統一となるが、GTはクロームメッキ、モデナとトロフェオはブラックアウト仕様となる。

また、直4ハイブリッドはサウンドやパフォーマンスにおいてマセラティの期待を裏切ることはなく、リニアな吹け上がりで、市街地から高速路まで、まさにオールマイティな完成度を示してくれた。

マセラティ初の100%電動化SUV「フォルゴーレ」は2023年に登場予定

2023年末には、4番目のバージョンとして、電気自動車の「フォルゴーレ」(イタリア語で「稲妻」の意)がラインナップに加わる。バッテリー容量が105kWhとされ、モーター最大トルク800Nmを引き出す。

そして、ステアリングの切れ味はかなりクイックな設定で、アルファ・ロメオ・ステルヴィオ(ステアリングギアレシオは12:1)ほど極端ではないが、いい塩梅のセットアップであることも付け加えておきたい。

トロフェオはごく限られた時間での試乗となったが、幸運にもアウトストラーダでアクセルペダルをフラットアウさせられるチャンスに恵まれた。馬力のピークは6500rpmゆえ、高回転域でこそエンジンの真価が発揮される。素晴らしいサウンドとスーパーカー由来の心臓部が織りなす躍動感溢れる走りは、この領域ではしっかりと発揮されていた。
しかし刹那的にも、2023年にはフル電動モデル「フォルゴーレ」がラインナップに加わり、トロフェオは主役の座を譲ることが確定している。そう、MC20から始まったマセラティの”ルネサンス”は、まだまだ序章にすぎないのだ。

【Specification】マセラティ・グレカーレGT [モデナ]{トロフェオ}
■全長×全幅×全高=4846×1948×1670[4847×1979×1667]{4859×1979×1659}mm
■ホイールベース=2901mm
■トレッド=(前/後)1621/1694mm
■車両重量=1870[1895]{2027}kg
■内径×行経 =84.0×90.0{88.0×82.0}
■エンジン型式/種類=ー/直4DOHC16V +MHEV {ー/V6DOHC24V +ツインターボ}
■圧縮比=11.0{9.5}
■総排気量=1995{3000}cc
■最高出力=300ps(220kW)/5750rpm[330ps(243kW)/5750rpm{530ps(390kW)/6500rpm}
■最大トルク=450Nm(45.9kg-m)/2000-4000rpm{620Nm(63.2kg-m)/3000-5500rpm}
■燃料タンク容量=64L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前ストラット/コイル{ストラット/エア}、後Wウイッシュボーン/コイル{Wウイッシュボーン/エア}
■ブレーキ=前Vディスク、後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前235/55R19[255/45R20]{255/40R21}、後235/55R19[295/40R20]{295/35R21}
公式ページ https://www.maserati.com/jp/ja/models/grecale

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