フェラーリ

【海外試乗】「フェラーリF8 トリブート」背中で猛る史上最高のV8

トリブート(=称賛、感謝)が込められた史上最高のV8マシン、フェラーリF8トリブート。スーパースポーツも内燃機関と電動プラントによるハイブリットが主流になりつつある今、背中にV8エンジンのみを背負い込んだ、最新の跳ね馬を聖地マラネロで駆った!

エアロダイナミクスの究極系マシン

2019年F1第15戦シンガポールGP決勝。フェラーリは約2年ぶりとなるワンツー・フィニッシュを飾り、セバスチャン・ベッテルが今季初勝利を手中に収めた数時間後、聖地マラネロに招かれた世界各国のメディア関係者たちに向けてフェラーリのV8ミッドシップの最新モデル、F8トリブートのプレゼンテーションが行われた。

先代までの片側1灯テールライトから再びV8の始祖308GTBに由来する片側2灯へ変更。リアのルーバーには488チャレンジと同じ軽量なレキザン樹脂が採用される。

製品マーケティング部長のエマニュエル・カランド氏は「こんな素晴らしい日にF8トリブートについて話せるのは、私たちにとって非常に幸運であり重要」と興奮冷めやらぬトーンで語った。目の前に佇むF8トリブートは7月25日の日本初公開時にその全貌を眺めていたものの、不思議なもので、この日・この地にいたからこそ、実にエモーショナルな物体として目に映り、興奮の渦へと引き込まれている自分に気づかされた。

488GTBと比較すると出力は50ps増加したにも関わらず、エンジンの応答性を測定すると、その応答時間はまったく同じだったという。また、マネッティーノの操作でレスポンスやサウンドが緻密に変化する。

あらためてF8トリブートの周りを一周してみると、そこに表面的な美学がないことに気づかされる。あらゆるセクションがエアロダイナミクスや冷却システムに紐づくデザインであり、F1コンストラクターとしての矜持が前面に押し出されている。中でも目を引くのは、やはりフロントフードのSダクト。488GTBのスペチアーレ、488ピスタから採用されたソリューションだが、フロントバンパーの中央部から気流を取り込み、ノーズ下を通り抜けてボンネットから上方に排出させることで、488GTB比で+15%のダウンフォースを獲得。クルマ側面の気流は、フロントからサイドシルまで続くスプリッターでコントロールされながら、ボディサイドのマッシブなエアインテークに飲み込まれ、エンジンおよびブレーキ冷却に寄与する。デザイン部門のエイドリアン・グリフィス氏は、この気流の流れを「トリマラン効果(※三胴船のような安定感)」と表現し、エアロダイナミクスがデザイン上の最重要項目であり、デザインは、それの果てしない追求であったことを強調した。

想像と極限の先へ連れて行ってくれる。

では、肝心要の心臓部はどうか。1975年にリリースされた308GTBからの系譜となるフェラーリV8ミッドシップは、自然吸気を止めた先代の488GTBからツインターボを搭載。F8トリブートは670psから720psへ50psのパワーアップがなされ、エンジンのみで18kgの軽量化に成功(全体では40㎏マイナス)した。出力だけ眺めれば、488ピスタと同等となり、このエンジンが元となっていることは明らかだが、エキゾーストマニフォールド(-9.7kg)、バルブトレイン(-0.3kg)、クランクシャフト(-1.3kg)、コネクティングロッド(-1.7kg)などの新しいコンポーネンツは軒並み軽量化。ターボチャージャーには新しく速度センサーが装備され、これにより両バンクへ均等・均速にターボが作用することで、標高や外気温に影響されないパワー供給が可能となったのだ。
また同時に、排ガス規制対策も十分に考慮され、「ユーロ6b」よりも厳しい「中国6b」にも適合。時代に合わせた当然の処置として触媒コンバーターのGPF(ガソリン・パティキュレート・フィルター)を導入したことでこれを可能にしたのだが、試乗の印象は後述するとして、GPFの導入が背中のV8を骨抜きにすることはなかったことを、蛇足ながら先に記しておきたい。

フォト=フェラーリ・ジャパン/FERRARI JAPAN ル・ボラン2019年12月号より転載
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