ランボルギーニ

【海外試乗】V8+PHEVを積み、よりパワフルでよりエレガントに! 猛牛、新たなる地平へ「ランボルギーニ・ウルス SE」

アヴェンタドールの後継であるレヴェルトに続き、ランボルギーニの電動化モデル第2弾として登場したウルスSE。昨今みられるスーパースポーツやスーパーSUVのPHEV化かと思うところだが、今回の進化による恩恵は非常に大きい。サンタアガタ・ボロニェーゼの頭脳とパッションで完成したウルスSEのステアリングを握った第一報をお届けしよう。

顧客の信頼に応える! それがウルスSEの始まり

ランボルギーニ・ウルスSEの国際試乗会でのプレゼンテーションは、ファイナンシャルリザルトの発表から行なわれた。

見た目以上に職人気質な走りだった。

2021、2022、2023年と右肩上がりに上昇するアウトモービリ・ランボルギーニの営業利益が示されたが、2024年も半期が経過した現在、すでに前年の7割を達成していると言う。しかし、彼らはこの成果に手放しで歓喜することなく、未来に向けた研究開発費への投資を行ない、決して安穏とした空気ではないという。

では、なぜ投資をしてチャレンジするのか? という問いには「お客様(顧客)は私たちをとても信頼してくれるから」と言い切る。

ランボルギーニのデザイン思想でもある「feel like a pilot」が際立つように刷新されたキャビン。まる1日ナルドサーキットとレッチェ市街地で試乗した。

またこんなエピソードも披露された。「2012年に中国で初めてウルスのコンセプトモデルを公開しました。しかし当時は多くの人がこのスーパーSUVの成功を信じていなかった。伝統あるスポーツカーブランドに絶望する声さえ聞こえてきました。しかし今年4月、再び中国へと戻り、ウルスSEをワールドプレミアさせた時、多くの喝采を受けた。それは私たちにとって非常に特別な瞬間でした」

中央の12.3インチスクリーン操作は直感的な操作が可能。センターコンソールにはタンブーロと呼ばれるセレクターが備わり、左レバーがお馴染みのアニマで6つの走行モードを選択。右レバーで4つの電動モードを選択。

試乗会冒頭のプレゼンテーションから、ランボルギーニは顧客から信頼をされているという一点を信じ、疑心を信頼へと変え、果敢に挑戦を続けるモデルこそウルスであることを訴えたわけだが、結論を先に記せば、その志はステアリングを握った新しいウルスSEからも感じ取れ、実に真面目で職人堅気なクルマへと進化していることに驚かされた。

繊細なリデザインで洗練された外観

2025年型ウルスSEの国際試乗会がイタリアの“かかと部分”に位置するレッチェ地方のナルドサーキットと、その周辺一般道で行なわれた。2022年に発売されたSとペルフォルマンテが引退、実質的にはリセットされ、大規模なモデルチェンジを受けてPHEV仕様のSEがリリースされた。

すでに日本国内でもお披露目されているウルスSEだが、実際にステアリングを握れる機会は今回が初となり、各国メディアやジャーナリストが南イタリアを訪れた。

ステアリングまわりは先代からのキャリーオーバー。

まず、エクステリアは全体的に意匠変更が施されている。エンブレムはフロントフード上へと移換され、ヘッドライトのグラフィックはY字型からブランドシンボルの闘牛の尻尾の形(釣り針型)へと刷新。リア部分中央には紙を折ったようなシャープなセンターピークがプレスラインとして際立ち、リアのナンバープレートはより低い位置に再配置されている。チーフデザイナーのミィティア・ボルケルト氏は、「新しいデザインを既存部品へとフィットさせることは、クルマをゼロからデザインすることよりも困難であった」と語ったが、ペルフォルマンテやSと比べてもよりエレガントで洗練された外観へと変貌している。

後席の乗り心地は4/5人乗りのスポーツカーという印象で、タウンスピードでは硬さが気になったものの、90km/h付近に近づくと安定感が高まり快適さも高まった。

エンジンは同グループではお馴染みの4L90度バンクのV8ツインターボとなり、これにPHEVシステムを組み合わせる。後輪に搭載されたモーターは192ps/483Nmでアシストを行ない、システム合計で800ps/950Nmを発揮。0→100km/h加速は3.4秒を記録し、Sが3.5秒、ペルフォルマンテが3.3秒であることを鑑みると、携えたパワープラントはすでにハイパフォーマンス領域と言える。

走行モードは、ロードとトラック用の「Strada」「Sport」「Corsa」、雪上の「Neve」、砂地・砂漠の「Sabbia」、オフロードの「Terra」の6種類。これに電動走行モードの「EV Drive」「Hybrid」「Recharge」「Performance」の4種類から選び組み合わせる。

走行モードはデフォルトの「STRADA」と、「Hybrid」を選び、まずは市街地での試乗へと静かに走り出す。ガレージから交通量のある公道まで静音であることは、いまの時代どんなクルマであれ正義であり歓迎されるだろう。40〜60km/hの日本でのタウンスピードならば、基本的にはエンジンが始動することはなく、25.9kWhのバッテリーは約60kmのEV走行をも可能にしてくれる。南イタリアの舗装路は経済状況とイコールなのか、穴やうねりがいたるところに現れるものの、それでもしなやかでストローク感のある足回りが、快適な乗り心地を担保してくれ、ファミリーカーとしての役割も十分に果たしてくれる。

今回のアップデートでは25.9kWhのバッテリーを積んだV8+PHEVをセットアップしたウルスSEのみがラインナップ。仮にさらなるパフォーマンスモデルなどの派生車が用意されたとしても電動化仕様であることは明確。

一方、「SPORT」や「CORSA」をセレクトすれば、その表情は一変。“ファミリーカー”の前に、“パフォーマンスやダイナミクス性能を犠牲にしたくない人の”と、枕詞がつくことになる。そう、車両重量が2.5トンもある体躯でありながら、ランボルギーニらしいハンドリングを実現したスポーツカーの顔をのぞかせる。身のこなしが驚くほど素早く、しなやかな回頭性で接地感も高い。

一般道での試乗では、この“手品”を理解することができなかったが、午後に行なわれたチーフ・テクニカル・オフィサーであり工学博士のルーヴェン・モール氏のワークショップとドリフトプログラム、グラベルコース試乗で全てが腹落ちすることとなった。

「2速固定」「ESCオフ」でドリフト。モール氏によれば、車両にとって何が最善かを考えて車両設計をしたという。「試したい操作にクルマが驚くほど簡単に追従する感覚を確認することができるだろう」と語った。

新しい走行性能がウルスSEの価値

ウルスSE最大の進化点は、新しい全輪駆動システムであり、前後トルク配分を「管理」「予見」することで最適なハンドリング特性を実現している。

チーフ・テクニカル・オフィサーであるルーヴェン・モール氏によるワークショップも行なわれた。プレゼンテーションは専門性が高く濃い内容であった。人間の感覚と車両性能を管理することで、自然でファンなドライビングを実現。

具体的には、従来までのトルセン式から置き換わったハングオン式のセンターディファレンシャルと電子制御式リアディファレンシャルが前後左右に動力を配分し、最適なトラクションとレスポンスを「管理」することでこれを実現している。しかしモール氏は「システムは決して新しいものではありません。大切なのはこのシステムの使用方法の背後にあるインテリジェンスです」と語る。つまりこれは「予見」であり、独自開発した予測制御システムが、ドライバーのステアリングやペダル操作から次の挙動を判断。多くのメーカーがサプライヤーからソフトウェアを購入して済ませるところを、自分たちのインテリジェンスによりアルゴリズムを構築することで実現していて、これが“手品”の種明かしということになる。

チーフデザイナーのミィティア・ボルケルト氏は「ランボルギーニはいつの時代も宇宙船のような“ 未来から来た何か”のようなクルマであり、カウンタックこそ(我々デザイナーにとって)最大の贈り物」と語る。

ドリフトプログラムやグラベルコース試乗では、スポーツモードに切り替えて後方への駆動力を増やし、あるいはスタビリティコントロールを解除すれば、楽しいオーバーステア遊びに興じることができ、これが一般道でのランボルギーニらしいハンドリングの正体でもあったわけだ。

ピレリとランボルギーニは、ウルスSE専用に21〜23インチのPゼロタイヤと、冬用として22インチのスコーピオン・ウィンター2タイヤを共同開発。聞いた話ではかなりの短期間で濃密なテストを行ない完成へと至った。

電動化と脱炭素化に向けたロードマップ「コル・タウリ戦略」からランボルギーニは電動化の道を着実に突き進んでいる。しかし、ランボルギーニは顧客がクルマに求めているものをよく理解しており、ウルスSEはそれを十分に提供している。

システム合計の最大出力は800ps、最大トルクは950Nmを発揮して、先代ペルフォルマンテのパワーを大きく引き放したウルスSE。すでに日本でも予約注文は開始され、デリバリーは’25年以降とされる。

そんな要望や期待に応えるために、彼らは職人堅気なまでにクルマ作りに取り組んでいるという事実を忘れてはいけないだろう。

再設計されたリアエンドには、紙の折り目のようなセンターピークがプレスラインとしてあしらわれた。

ライト類も刷新され、Y型テールライトを囲む六角形の黒い意匠は「実はガヤルドからのインスピレーション」とボルケルト氏は教えてくれた。

【SPECIFICATION】LAMBORGHINI URUS SE(ランボルギーニ・ウルス SE)
■車両本体価格(税込)=31,500,000円
■全長×全幅×全高=5123×2022×1638mm
■ホイールベース=3003mm
■トレッド=前:1695、後:1710mm
■車両重量=2505kg
■エンジン形式/種類=ー/V8DOHC32V+ツインターボ
■内径×行程=86×86mm
■総排気量=3996cc
■最高出力=620ps(456kW)/6000rpm
■最大トルク=800Nm(81.6kg-m)/2250-4500rpm
■モーター形式/種類=ー/交流同期電動機
■モーター最高出力=192ps(141kW)/3200rpm
■モーター最大トルク=483Nm(49.3kg-m)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:マルチリンク/エア、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:285/45ZR21、後:315/40ZR21
問い合わせ先=ランボルギーニジャパン 0120-988-889

フォト=アウトモービリ・ランボルギーニ ル・ボラン2024年12月号より転載

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