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まさかのトランプ大統領誕生! で変わる世界自動車産業の勝ち組、負け組

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▲アメリカ大統領選からさかのぼることちょうど1年前、パリで開催されたのが国連気候変動枠組条約 第21回締約国会議(COP21)。ここで法的拘束力のある強い「パリ協定」が採択された。写真は会議の公式車両として提供された電気自動車の日産リーフ。

 

保護貿易主義より問題なのは…

 

トランプ氏のようなポピュリズム政治家は保護貿易主義で自国を守ると主張するが、貿易の実態は相互依存要素が大きく、保護主義が直ちに自国利益に繋がるわけではない。政権経験豊富な共和党のブレーンはそんなことは先刻承知で、トランプ氏の暴走を抑える動きになるはず。

 

ただそういう論理的な考えでなく、ただただ選挙に勝つためのポピュリズムに走った候補者が勝ったわけだから、「冷静な」共和党ブレーンがトランプ氏をコントロールできると思い込むのは危険かもしれない。なにしろどんな内容であれトランプ氏の言動は「公約」であり、大統領に就任すれば実行しなくてはならないものだ。有能なブレーンたちがトランプ公約を竜頭蛇尾レベルに押さえてくれることを期待したいものだが、言ってしまったことは実行しなくてはならないというのが現実だから、何もなかったように波風が立たないなどという楽観は通用しない。よってFTAベースで進んできた自動車業界の世界分業体制は、しばし踊り場状態で様子見に転じる可能性はある。

 

それでなくとも自動車業界は中国市場への傾斜を強めている状況なので、トランプ氏が北米の生産体制に障害をもたらせば、メーカーの中国シフトはいっそう強まり、氏の主張する「強いアメリカ」とは矛盾する米国のプレゼンス低下が起きるだろう。TPPを批准しないという氏の主張は保護貿易主義的背景と整合性のある主張で、短期的には米国の利益誘導交渉に役立つだろうが、中長期的、それも自動車産業的にみるとASEAN(東南アジア諸国連合)域内フリートレードによる水平分業メリットで失地を招く可能性もある。つまり中国に進出している米系自動車産業がASEAN域内フリートレードにタダ乗りしているとみなされ、いずれTPP加盟国の反発を買うことになるというものだ。

 

トランプ次期大統領の動きには、この保護貿易主義よりももっと重大な問題がある。それはパリ協定だ。このポピュリズム政治家は地球温暖化はフェイクだと言い、自国産業振興のためにパリ協定から脱退するとも主張してきた。米国は温暖化問題ではブッシュ時代にも京都議定書を骨抜きにした悪名高い孤立主義者だが、今度は長年に渡る交渉でようやく世界中が足並みを揃えたこの協定さえ反故にしようとしている。

 

文:竹平 誠(モータージャーナリスト、近未来技術エバンジェリスト)

 

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