新型車の安全性能がどんどん高まっていく中で、それを評価する側も次々と新たなハードルを設定。衝突時のキャビンを守るボディ構造や、サイド&カーテンエアバッグ装備は当然となり(もちろんまだ未装備のクルマもあるが)、さらに衝突被害軽減ブレーキに代表される先進安全装備も「装着されていないクルマは評価の価値なし」といい切る評価組織も出てきている。
その先端をいくのが欧州のユーロNCAPとアメリカのIIHS(全米道路安全保険協会)だが、ここにきてユーロNCAPが新たな方向性として「ロードマップ2025」を公表。同機構の20周年に合わせてのプランだが、その内容は多岐におよび、自動車メーカーはもちろん、IIHSや日本の自動車アセスメント(JNCAP)などへ影響をおよぼすことになりそうだ。
そこに示された今後評価が必要となる次世代安全機能を挙げていくと、「居眠り運転などを防ぐ運転者監視システム」、「緊急自動ステアリング」、「後退時や交差点で有効な衝突被害軽減ブレーキ」、「他車やインフラなどと通信して危険を防ぐV2X(車車間・路車間通信)」、「追突時のムチ打ち被害軽減の強化」、「歩行者および自転車保護性能の進化」、「事故時の救出性の確保」、「車内置き去りの検出」など。たしかにどれもクルマに起因する危険の除去には欠かせないもので、’25年までにすべて実現させるのが理想としている。
ユーロNCAPはこうした次世代安全機能を評価するシステムを随時導入し、自動車メーカーなどに装備化をうながしていく考えだが、「V2X」などは道路側のインフラ整備を待たなければならない面もあり、評価は簡単ではない。一方で日本の現状から見ていくと、歩行者保護性能の進化はもちろん、ニュースで目にすることの多い「車内置き去り」への対応は注目に値する。
ユーロNCAPのロードマップでは最後に置かれているが、日本では車内への子供置き去りによる熱中症事故のニュースが後を絶たず、最近では幼稚園や保育園の送迎バス内での置き去りも報じられている。また、被害者は幼児・子供だけでなく高齢者や身体障害者におよぶ可能性も高く、いち早い対応が迫られる部分でもある。車内にカメラを設置して子供などの存在を確認し、危険な状態を感知してクルマの所有者や緊急サービスセンターへ通知がいくシステムはすでに実用化されており、ユーロNCAPはその評価を想定しているが、日本でもスマートフォンを活用した車内チェックシステムの構築は難しくないはず。JNCAPでも装着を推奨するなどの取り組みが望まれるところだ。
先進安全機能の標準装備化は、コスト増=車両価格上昇がついて回るだけに悩ましい面もあるが、この多岐におよぶユーロNCAPのロードマップ提示を参考に、日本でもできるところから導入の検討を望みたいところ。交通事故の犠牲者を減らしていくことはもちろん重要だが、車内置き去りなどクルマにまつわる悲劇を全体的に減らす視点も欠かせない。また、このユーロNCAPの提示したロードマップが今後、欧州の新型車開発にどう反映されていくのか、そのあたりにも注目したいところだ。