日産

ニッサン・エルグランドが大幅改良でさらに進化

走りを愛するなら、安全にもこだわるべきだ

ニッサンのラージクラスミニバンの雄、エルグランドが仕様向上され登場した。今回の変更では、もともと定評のあった走りの性能に加え、安全・運転支援技術がいっそう充実し、すべてのグレードに標準装備されたのがトピックだ。

ミニバンが、ファミリーカーの主役になったのは20世紀の末だった。その役割について、疑問を抱く人はいないはずだ。進化の過程を振り返れば、大切な家族のための移動手段として走りの余裕が実感でき、快適で安全なクルマを目指し開発が進められてきた。まさに、エルグランドはそうした進化を具現化した日産のプレミアムミニバンである。

プレミアム感に溢れるコクピット。頭上スペースも広く快適なドライビングを提供してくれる。

ただ、一般論としてミニバンはスライドドアやテールゲートなど大きな開口部がありボディ剛性が確保しにくい。そのため、操縦性や安定性に影響が及びかねない。

だが、エルグランドは心配が無用だ。そもそも、走りのコンセプトは“ダイナミック&ラグジュアリー”だ。それを実現する低重心プラットフォームを採用し、エンジンを極限まで低い位置に搭載。大容量燃料タンクを薄型化し床下に配置することも可能に。なおかつ、トレッドが広くホイールベースは3000mmに達するほど長いので、低重心化とともに基本性能の段階で優れた素質を備える。

したがって、操縦安定性の向上を目指してサスペンションの設定をハードにする必要がない。むしろ、エルグランドの設定はソフトであり、それでいてボディがムダに動くことはない。加減速でもボディが前後に揺れるピッチングは最小限にとどまり、コーナリング中のロールも自然だ。

 

山岳路でステアリングを切り込むと、きわめて素直な応答性を示す。応答性の遅れを感じることがなく、切ったなりにシッカリと曲がる。そのため、ボディにムダな動きがないこととの相乗作用で、コーナーが連続する場面を駆けぬけても安心感を保ちつつダイナミックな走りも楽しめる。

高速道路でも、ステアリングの素直な応答性が役立つ。ステアリングに軽く手を添えながら操作をしても、自然な感覚でレーンチェンジが可能であり直進状態にスッと戻れる。ミニバンは、レジャーのために高速道路を長距離移動する機会が多いはずなので、こうした特徴が魅力になる。

しかも、2.5Lエンジンを積むグレードでも、低回転域から充実したトルクを得ている。場面を問わず周囲の流れに合わせて走るなら、アクセルを深く踏む機会がなくエンジン音が耳に届かないほどだ。

エンジンは2.5L直4と3.5L V6の2種がライ ンナップ。そのうち2.5ℓ直4は最高出力170 ps、最大トルク245Nmを発生、分厚い低速トルクとスムーズな吹け上がりを実現している。

高速道路の本線合流などでアクセルを踏み込んでも、エンジン音のボリュームは増すにせよノイズにつながる領域を遮断し騒がしい思いをせずに済む。

実は、こうした静粛性はプレミアムミニバンとして鍛え上げたボディによる効果が大きい。その証拠に、市街地などに多いザラついた路面を通過する際に聞こえるゴーッという感じのロードノイズを抑え込んでしまう。ボリュームが低めなだけではなく、複数の音質が重なるとか多方向から耳に届くとか響くといったノイズを際立たせる傾向も回避している。

アルミ製リンクを使用して軽量化を図ったフロントストラット、リアマルチリンクサスペンションを採用。しなやかな乗り心地と滑るようなコーナリングを両立するとともに、意のままのクイックで正確なハンドリングと、疲れにくい快適さを実現している。

乗り心地についても、ソフトに設定されたサスペンションがしなやかに動いている実感があり不快な印象とは無縁でいられる。最近のプレミアム系ブランドのモデルは、感覚的に乗り心地を損なうので振動にミシッとかゴツッというノイズが伴わないような対策をしている。

エルグランドの開発時にそれが課題になっていたかどうかは定かではないものの、結果としてボディがキシむ感じがする、こうしたノイズをミニバンとしては巧みに抑え込んでいる。

ラージサイズミニバンならではの広いキャビンスペースは、シートの掛け心地や乗り心地も良好で、長時間移動も苦にならない。

 

安全性については、とくに見逃すことができない。ちなみに、2017年に国土交通省と経済産業省が運転支援装備普及のために先進安全技術を整理したクルマをセーフティ・サポートカー(サポカー)として区分している。

エルグランドは、今回の仕様向上により踏み間違い衝突防止アシスト(ペダル踏み間違い時加速抑制装置)に加えて、インテリジェント エマージェンシーブレーキ(対車両および対歩行者)、車線逸脱防止支援と車線逸脱警報(車線逸脱警報装置)、ハイビームアシスト(先進ライト)を全グレードに標準装備。サポカー区分では、最も内容が充実したサポカーSワイドが適用されているのだ。

 

<インテリジェント エマージェンシーブレーキ>
前方を検知するカメラで、衝突しそうになると警告によりドライバーに回避操作を促し、 万一ドライバーが減速しなかった場合には、自動的に緊急ブレーキを作動させて衝突を回避、または衝突時の被害や傷害を軽減する。

<車線逸脱防止支援システム&車線逸脱警報>
車線逸脱警報は、意図せず走行車線を逸 脱しそうな場合、メーター内ディスプレイへの警告表示とブザーで注意を喚起。車線逸脱防止支援システムが車線内に戻す方向に力を短時間発生させ、車線内に戻す操作を促す。

<ハイビームアシスト>
前方のカメラで、先行車や対向車のライト、道路周辺の明るさを検知し、ハイビームとロービームを自動で切り替えるシステム。夜間前方視界の確保と、手動でのわずらわしさを軽減。

なかでもサポカーSの必須機能となっている踏み間違い衝突防止アシストは、誤発進事故が取りざたされている現状において大きな役割を果たす。駐車操作などの低速走行時、進行方向に壁などの障害物がある場合に、万一ブレーキ操作が遅れ衝突する危険を察知したり、アクセルとブレーキを間違えて踏み込んでしまったときに、ドライバーに警告灯とブザーで警告。さらに、自動的にエンジン出力やブレーキを制御することで、障害物への衝突防止や過度の加速の防止を支援する。これは、壁はもちろんコンビニのガラスなども認識してくれる。また、渋滞中のクリープ走行時も踏み間違い衝突防止アシストが介入し、先行車との追突を回避または加害を軽減することが可能だ。

<踏み間違い衝突防止アシスト>
駐車などで進行方向に障害物がある場合、 ブレーキ操作が遅れてしまった時やブレーキ と間違えてアクセルを踏んでしまった時に、 自動的に加速を抑制、また自動的にブレーキ を作動させる。

さらに、エルグランドはベーシックグレードの250XGを除きインテリジェントクルーズコントロールを標準装備している。設定速度を自動制御しながら先行車との車間が維持でき、ナビゲーションとの協調によりコーナーの手前では車速を抑制する。そのため、長距離走行でのドライバーの負担が大幅に低減されることは間違いない。負担の軽減は、大切な家族を守るというミニバンでは不可欠な価値にも結びつくわけだ。

<インテリジェントクルーズコントロール>
ドライバーが設定した車速を上限として、停止~約100㎞/hの範囲で先行車との車間を保つよう追従走行。高速道路等でのドライバーの負担を軽減し、快適な走行を提供する。

 

Specification

ニッサン・エルグランド250ハイウェイスター・プレミアム・アーバンクローム(2WD)
車両本体価格:4,477,680円(税込)
全長/全幅/全高:4975mm/1850mm/1815mm
ホイールベース:3000mm
トレッド(前/後):1600mm/1600mm
車両重量:1950kg
最小回転半径:5.7m
乗車定員:7名
エンジン型式/種類:QR25DE/直4DOHC16V
内径×行程:89.0mm×100.0mm
総排気量:2488cc
圧縮比:9.6
最高出力:170ps(125kW)/5600rpm
最大トルク:245Nm(25.0kg-m)/3900rpm
燃料タンク容量:73L(レギュラー)
燃費(JC08):10.8km/L
トランスミッション形式:6速AT
サスペンション形式:前 ストラット/コイル、後 マルチリンク/コイル
ブレーキ 前/後:Vディスク/Vディスク
タイヤサイズ:前225/55R18、後225/55R18

 

迫力ある堂々としたフォルムに、上質感が溢 れるエクステリアはエルグランドの魅力のひ とつ。まさにプレミアムミニバンの風格だ。

 

<お詫び>
ル・ボラン2019年2月号 P108-110において車両本体価格に誤りがありました。正しくは上記「Specification」に記載の通りです。ここに訂正させて頂きますとともに、大変ご迷惑をおかけしました事を深くお詫び申し上げます。

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