
新世代ラグジュアリーサルーンの軽やかさを受け継ぐ上質な走り
今年、日本上陸40周年という節目を迎えたアルピナ。そのプロダクトは、BMWが変革期にある中でどんな世界を提供しているのか? ここでは主要6モデルの味付けを再検証してみる。
BMWは、7シリーズと5シリーズでラグジュアリーサルーンに新たな価値を確立している。かつては重厚な乗り味が重視されていたが、正反対に“軽やか”なのだ。果たして、アルピは新たなBMWの特徴にどんな価値を付加したのだろうか。
まず、5シリーズベースのB5ビターボはBMWと同じ方向性で仕立げられている。いや、より軽やかなほどだ。ダンパーは、減衰力の可変領域がかなり広い。走行モードが「COMFORT」なら、減衰力が低めに維持されるのでサスペンションがスムーズにストロークする実感がある。そのため、高速域で路面の継ぎ目を通過すると縦に揺れることもある。だが、次の瞬間にはそれもスッキリ収まり軽やかさに結びつく。
フラットな乗り味を望むなら、走行モードを「SPORT」にすればいい。ダンパーの減衰力が高めになるのでタイヤの接地感の硬さが気になることもあるが、サスペンションがスムーズにストロークすることに変わりはなく軽やかさはそのままだ。
しかも、走行モードを問わずスッキリした手応えを保つステアリング切り込むと軽やかに向きを変え、「SPORT」モードならハンドリングにダイレクト感が加わる。また、xDriveをベースにアルピナが独自設定した4WDを組み合わせるので、コーナリング中はもちろん高速域での加速中も優れたスタビリティを確かめられる。
D5 Sも、B5ビターボに通じる軽やかさを感じる。さらに、前傾姿勢になるサスペンション設定とフロントまわりが50kg軽い効果で小気味よいハンドリングが楽しめる。しかも、搭載する3L直列6気筒ツインターボは事前に情報がなければディーゼルであることに気づかない。吹け上がりが軽やかで、アクセルを踏み続けると中回転域から迫力あるサウンドを響かせ強大なトルクをパワーに置き換えつつ5000rpmまで一気に吹け上がる。
それでいて、低回転域では優れた静粛性を確保。ラグジュアリーサルーンにふさわしい上質な走りが確かめられる。加速が必要な場面ではアクセルを踏み込むまでもなく、つま先の力加減を変える程度で周囲の流れに先行できる。しかも高速道路なら20km/L台の燃費すら狙えるのだ。
B5ビターボのエンジンも、低回転域から強大なトルクが立ち上がる。ただ、走行モードが「COMFORT」ならトルクが飛び出すようなことはない。アクセル操作だけで期待通りの力強さが引き出しつつ、トルクは3000rpmにかけて盛り上がるので穏やかな加速でも、エンジンのパフォーマンスがさり気なく発揮される。
だが、走行モードが「SPORT」だとハナシが違ってくる。エンジンサウンドが変化し、4000rpmを超えるとサウンドにビートが重なり、超刺激的な加速を開始。吹け上がりもシャープで、2速なら瞬時に6000rpmをオーバー。速度は80km/hを超えるだけなので、高速道路の本線合流で超現実的な刺激が楽しめる。B5ビターボは新世代のラグジャリーサルーンらしい軽やかな走りを実感しつつも、超ハイパフォーマンスカーとしての一面を持つわけだ。
ハイパフォーマンスでラグジュアリー、伝統のアルピナマジックは健在
B4 SビターボとB3 Sビターボは、3Lの直列6気筒ツインターボを搭載する。同じ3Lの直列6気筒でも日本仕様のBMWにはMモデルを除きツインターボが存在しないため、アクセル操作に対する超正確なレスポンスが実感できるという意味でも価値がある。当然、アクセルを一気に踏み込めば凄まじい勢いでフル加速を開始するが、日常的な場面では強大なトルクを力強さの余裕として活用できる。

写真はB4 Sだが、標準のシート表皮はD4も同じダコタレザー。シートバックには、アルピナのメタル製エンブレムが付く。オプションで、より上質なメリノレザーが選択できるほかヘッドレストにロゴなどを入れることもできる。
D4ビターボとD3ビターボは、ディーゼルの3L直列6気筒ツインターボを搭載。このエンジンも、日本仕様の4/3シリーズには存在しない。さすがに4気筒とは異なり直列6気筒ならではの完ぺきな回転バランスが超スムーズな吹け上がりを実現。その過程で、ディーゼルであることを意識させない。高回転域も伸びやかであり、低いギアでは4800rpmくらいでトルクが絞られるが3速からは5200rpmまで引っ張っても胸のすくパワーが維持される。
また、そもそも4/3シリーズでは乗り味が異なる。3シリーズよりも4シリーズはフロント回りの剛性が高く、リアのトレッドを拡大し重心も低い。つまり、ドライビングダイナミクスのポテンシャルが高いわけだ。その結果、サスペンションを引き締めるまでもなく4シリーズはクーペにふさわしいスポーティさを得ている。
それは、B4 S/D4とB3 S/D3の関係でも同じだ。B4 S/D4はよりスポーティであり、ステアリングを大きく切り込むコーナーが連続するワインディングロードを気持ちよく駆けぬける。走行モードを「SPORT」にすれば、舵角に対して超正確なダイレクト感あるハンドリングが楽しめる。
その一方、走行モードがコンフォートならB4 SとD4、B3 SとD3のいずれも快適きわまる走りを提供。まさにハイパフォーマンスにしてラグジュアリー、というアルピナマジックを体現しているのだ。
【Specification】B5 BITURBO LIMOUSINE ALLRAD
■全長×全幅×全高=4960×1870×1485mm
■ホイールベース=2975mm
■車両重量=1990kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC 32V+ツインターボ/4394cc
■最高出力=608ps(447kW)/5750-6250rpm
■最大トルク=800Nm(81.6kg-m)/3000-5000rpm
■トランスミッション=8速スポーツAT
■サスペンション=前Wウイッシュボーン、後インテグラルアーム
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤサイズ=前255/35ZR20、後295/30ZR20
■車両本体価格(税込)=18,860,000円(LHD)
【Specification】D5 S LIMOUSINE ALLRAD
■全長×全幅×全高=4960×1870×1485mm
■ホイールベース=2975mm
■車両重量=1940kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHC24Vディーゼル+ツインターボ/2992cc
■最高出力=326ps(240kW)/4000-4600rpm
■最大トルク=700Nm(71.4kg-m)/1750-2500rpm
■トランスミッション=8速スポーツAT
■サスペンション=前Wウイッシュボーン、後インテグラルアーム
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤサイズ=前255/35ZR20、後295/30ZR20
■車両本体価格(税込)=12,990,000円
【Specification】B4 S BITURBO COUPE
■全長×全幅×全高=4640×1825×1370mm
■ホイールベース=2810mm
■車両重量=1670kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHC24V+ツインターボ/2979cc
■最高出力=440ps(324kW)/5500-6250rpm
■最大トルク=660Nm(67.3kg-m)/3000-4500rpm
■トランスミッション=8速スポーツAT
■サスペンション=前ストラット、後5リンク
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤサイズ=前245/30ZR20、後265/30ZR20
■車両本体価格(税込)=12,219,000円(LHD)
【Specification】D4 BITURBO COUPE
■全長×全幅×全高=4640×1825×1370mm
■ホイールベース=2810mm
■車両重量=1680kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHC24Vディーゼル+ツインターボ/2992cc
■最高出力=350ps(257kW)/4000rpm
■最大トルク=700Nm(71.4kg-m)/1500-3000rpm
■トランスミッション=8速スポーツAT
■サスペンション=前ストラット、後5リンク
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤサイズ=前245/35ZR19、後265/35ZR19
■車両本体価格(税込)=11,400,000円
【Specification】B3 S/D3 BITURBO LIMOUSINE
■全長×全幅×全高=4645×1810×1445mm
■ホイールベース=2810mm
■車両重量=1650【1660】kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHC24V【直6DOHC24Vディーゼル】+ツインターボ/2979【2992】cc
■最高出力=440(324kW)【350ps(257kW)】/5500-6250【4000】rpm
■最大トルク=660Nm(67.3kg-m)【700Nm(71.4kg-m)】/3000-4500【1500-3000】rpm
■トランスミッション=8速スポーツAT
■サスペンション=前ストラット、後5リンク
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤサイズ=前245/30ZR20、後265/30ZR20【前245/35ZR19、後265/35ZR19】
■車両本体価格(税込)=11,620,000円(LHD)【10,310,000円(LHD)】
※【 】内はD3ビターボ
【問い合わせ】
アルピナ社日本総代理店 ニコル・オートモビルズ℡0120-866250 https://alpina.co.jp/