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国内自動車メーカーの2018年度決算、やや不透明な状況に

トヨタは売上高30兆円超えながら利益は減少。日産自動車は試練のときを迎える

国内上場企業の決算発表時期を迎えるなかで、国内乗用車メーカー7社の2018年度(2019年3月期)決算が出揃った。2017年度は7社のうちトヨタ自動車を含む4社が純利益で過去最高を更新していたが、2018年度は一転。米国での優遇税制(法人税率引き下げ)の恩恵が大きかった2017年度の反動もあり、なんと三菱自動車を除く6社が減益。本業の儲けを示す営業利益もトヨタはプラスを保ったが、5社はマイナス。厳しい状況が浮き彫りとなる結果となった。
トヨタは中国や欧州での新車販売増に支えられ、売上高はついに30兆円を突破。国内企業では初の30兆円超えという歴史を刻み、2019年度予想でもこのペースを保つとともに営業利益、純利益とも増加を見込んでいる。だが足元を見ると時期を同じくして米中の貿易摩擦が激化して日米の平均株価は下落し、円高も進行。欧州も英国のブレグジットの先行き不透明など不安要素が膨らんでおり、予断を許さない状況にある。こうした動きはトヨタもある程度は織り込み済みだろうが、予想どおりの業績を積み重ねていけるかどうかは未知数だ。
ホンダも売上高は過去最高ながら、英国をはじめ欧州の工場閉鎖など生産縮小のためのコスト(退職金など)などが響いて利益が減少。今後、グローバル生産体制の効率化などで利益を確保する考えだが、不透明な時代をどう乗り越えていくのか興味深いところだ。日産自動車は米国市場での販売コスト増、グローバル市場での販売台数減が響いて売上高、利益ともに減少。カルロス・ゴーン元会長の逮捕も企業イメージの低下を招き、利益に影響をおよぼしたとしている。今後、日産は拡大戦略を見直して手堅く業績回復を図る考えだが、しばらくは試練のときが続きそうだ。
スズキはインドや日本国内の販売増で売上高は過去最高を更新する一方で、インドルピーの通貨安などで営業利益は減少し、さらに国内でのリコール費用813億円を計上したことで純利益も減少。2017年度は売上高、利益、販売台数ともに過去最高を更新して気を吐いたスズキだが、リコールの発覚など問題が表面化し、踊り場に差しかかった印象だ。マツダも売上高は増加ペースを保った一方で、2018年7月の豪雨災害による損失が小さくなく、それに米国での販売コスト増加、中国の販売減などが重なったことで利益が大幅に減少。今後、巻き返しを狙う考えだ。
完成検査の不正で販売台数を減らしたスバルは売上高、利益ともに減少。一方で対照的なのが三菱自動車で、売上高、利益、販売台数ともに2ケタ増となっている。2017年度にやっと黒字転換を果たした三菱だが、手堅く業績回復の道を歩んでいる印象だ。
グローバルでは米中摩擦による中国の販売減や欧州の政情不安、国内ではガソリン高騰やクルマ離れなどなかなかいい要素を見つけにくい時代だが、トヨタの30兆円に加えて10兆円以上を売り上げる企業が3社もある自動車業界の強さはいまだ健在と見ていいだろう。電動化や自動運転、安全性強化など開発費やコスト増要因は少なくないが、それはライバルである欧米メーカーも同じこと。この厳しい時代をどう乗り越えていくべきなのか、明確な指針を示すとともに、中堅メーカーも独自性を失わずに進んでいって欲しいものだ。

ル・ボラン2019年7月号より転載
田畑修

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