
毎回カー・マガジン編集部員がこれは! と思った趣味グルマを紹介する『100万円でドロ沼に陥る!? 』。今回はイタリアが誇る大衆車フィアット500を取り上げる。コンディション良好のフィアット500で、イタリアンベーシックの真髄に触れてみたい。
フィアット500とは?
1936年デビューの初代フィアット500と区別するため、ヌォーヴァ500とも呼ばれる2代目は1957年に登場した。3mを切るコンパクトなボディに大人4人の乗車を可能にするためRRレイアウトを採用する。写真のようなワゴンボディのジャルニディエラもラインアップされていた。
仕上げ済みのイタリアン・スタンダードはいかが?

車歴に入れたいエバーグリーン:ベージュのペイントは内装同様に美しく保たれており、ヒストリックカー初心者、また一度は体験したいという方にもオススメ。写真ではわかりづらいが、前後ウインドーの縁にメッキモールが付く点も500Lの特長だ。
イギリスのミニ、ドイツのビートル、フランスの2CVを迎え撃つ、イタリアの大衆車と言えば間違いなくフィアットのヌオーバ500だ。初代の500とは異なり、ヌオーバ500は空冷直列2気筒ユニットをリアに搭載し、3mを切る全長ながら大人4人(ディーラー車は5人登録!)の乗車を可能とした傑作。安価な販売価格、また使い勝手の良さから大人気を博したのはご存知の通り。登場から60年経った現在は、そこに”趣味性”が加わり多くの愛好家を持つに至る。

音と鼓動も魅力のエンジン:リアに搭載される直列2気筒エンジンは空冷式で、補器類は最小でシンプルかつコンパクト。現行ラインナップの水冷2気筒とはまた異なる振動やエグゾーストノートも楽しみたい。ある意味、五感へ訴える官能系エンジンだ。
ここで取り上げる個体は、歴代フィアット&アバルトなどを得意とするトゥルッコの販売車両で、ひと通り整備済でコンディションはすこぶる程よい。販売価格は170万円+税で、値段だけを見れば驚くことはないだろう。しかしその仕上がり見ればむしろ”お得”に思えるはずだ。500Lの外観の特長であるオーバーライダーは備わらないが、もうひとつの特長と言える前後ウインドーを縁取るメッキモールはシッカリと残っている。実はゴムモールを交換する際に省かれることもあるが、現車ではしっかりと残っており丁寧に作業されていたことが伺えた。

お馴染みのポーズはこちらから:ソフトトップの状態は良好で、購入後はここから顔を出した写真を1枚は撮りたくなるはず。映画グランブルーのエンゾとロベルトの様に、巨大なオトコふたりでにっこり顔を出すのもアリ?
オーナーは心底500のある生活を楽しんでいるのだ
動力性能はというと、現代の基準ではハッキリ言って速くない、というか遅い。高速の合流や、交差点での右折ではタイミングを間違えるとヒヤリとするだろう。またシフトアップ、特にダウンは丁寧にエンジン回転数を合わせる必要があるが、レブカウンターは備わらないためエグゾーストノートや体に感じる振動から状態を知り丁寧にギアを繋ぐ必要がある。丸餅オーナーの門内さんの言葉を借りれば「始めは間違いなくギアを鳴らしてしまうけど、スムーズにできるようになると快感なんだ」とのこと。
そう、購入しても苦労が多いのでは? と思われたかもしれないが、門内さんに限らずオーナーは心底500のある生活を楽しんでいるのだ。9月に大磯で開催した読者ミーティングで丸餅に同乗された方は、その点を間違いなく実感できたことだろう。一度気に入れば、抜け出せなくなる500の沼へ陥ってみるのも悪くない。
意外なほどふっくら:ビニールレザー製のシート表皮は前後共に良好で、シートのあんこは意外に厚みがあり座り心地も良い。リアのシートバックは可倒式で、前に倒すとラゲッジスペースとして活用できる。
余分な装備は一切なし:豪華(Lusso)の”L”を車名に冠するように、ダッシュは鉄板むき出しではなく樹脂製のパッドで覆われ、メーターも850と同タイプの燃料計付きとなる。トランスミッションは4速M/Tで、シフトレバーの後ろに備わるレバーは左がチョークで右がスターター。RRのためフロントにトランクを備えるが、容量は必要最小限といったところ。
1971 FIAT 500L
車両本体価格:170万円+税
1度体験すべき度 ★★★★
実用度 ★★★
ドロ沼度 ★★★★★
ヒストリックカー相場の上昇に伴い、フィアット500も安価な出物は少なくこちらの個体もオッ!と目を引くほどの値段ではないが、コンディションを見ればお得に感じることは間違いない。一度体験して肌に合うと、離れられなくなることは、丸餅博士が実証中だ。
【SHOP INFORMATION】
A.TRUCCO(トゥルッコ)
住所:埼玉県川口市青木1-6-1/電話:048-242-4610/営業時間:10:00-19:00/定休日:月曜日、レース・イベント開催日