カー・マガジン編集部員がこれは!と思った趣味グルマを紹介する『100万円でドロ沼に陥る!? 』。今回は、プジョー最後のフロントエンジン・リア駆動となっている505を取り上げます。ファミリーカーとして、またドライバーズカーとしても楽しめるFRセダンはいかが?
プジョー505とは?
抜群の乗り心地で大ヒットを記録したプジョー504の後継モデルとして、1979年に登場した。504の美点は受け継ぎつつ、リアサスペンションは604のメカニズムを採用することでリアの居住性を向上させている。セダンの他、ステーションワゴンや8人乗りのファミリエールも用意された。
適度な刺激とコンフォートの両立

乗り心地を大きくサポート:日常の使用でも邪魔にならない程度にサイドサポートが立ったシート形状で、ホールド性は良好だ。乗降時など、頻繁に触れる箇所に擦れやヤレは見られるが大きな破れはない。ちなみに国内へ正規輸入されたGTiは全て左ハンドル仕様となる。
プジョー505は、世界的なヒットを飛ばした504の後を継いで1979年にデビューした。504譲りの快適な乗り心地、そしてかつてのプジョーらしさを堪能できる貴重なモデルだ。
ピニンファリーナがデザインを担当した端正なエクステリアは、504の特徴的な”ツリ目”を踏襲するが、テールエンドはなだらかに落ち込むのではなく水平基調となっており、時代を反映したアップデートが施されている。

足もと広々で大人も満足:先代の504からホイールベースは変更されず2740mmのままだが、フロントシートの形状を変えることでレッグスペースは拡大されている。ボディ幅が広がり、天地スペースも確保されているため居住性はなかなかのもの。
今回取り上げたGTiは、1984年に追加されたグレードで、その名から想像できる通りスポーティな仕立てが特徴だ。現代の基準でいえば、急峻な上り坂を駆け上がり、タイトコーナーを得意とするホットバージョンを想像するが、この時代はスポーティな味付けといったところ。PRV製の直列4気筒ユニットの最高出力は130psで、トランスミッションは4速A/Tだ。ちなみに、国内へ正規輸入された505GTiはA/Tモデルのみで、当初は3速だったが’87年から4速仕様となっている。
適度にスパイスの効いた、FRセダンを手懐ける。その瞬間こそ、505を所有する喜びだ

熱くなり過ぎずドライブを楽しもう:プジョー、ルノー、ボルボが共同開発した直4ユニットは、2165ccの排気量から130psを発揮する。取材した個体は’90年式のためトルコンA/Tは4速仕様だ。現在のGTi達に比べればチューニング度合いはかなりマイルド。
乗り心地はソフトでロールも深いが、リズムに乗って走らせることが楽しく、意外なほどハイスピードでコーナーを駆け抜ける。この瞬間こそ、プジョー謹製のダンパーセッティングやシートクッションを堪能できる至福の時だ。わかりやすい強烈な刺激ではなく、普段の乗り心地を犠牲にすることなく、バランスよくドライビングプレジャーを高めている点に好感が持てる。ホイールベースは504と同じだが、前席の形状変更。また604譲りのセミトレーリングアームを採用することで居住スペース、乗り心地とも向上している。つまり505はファミリーカーとしても大いに活躍してくれるのだ。

ドライバーズシートが特等席:メーターやスイッチ類はドライバーを囲むように配置されているため、視認性、操作性共に良い。紫外線のダメージを受けやすいダッシュパッドにヒビ割れはなく、色褪せも生産から30年近く経過していることを考慮すれば抑えられている。
隣の芝生、ではないが際立つ個性があるわけではないので、他に心動かされる瞬間があるかもしれない。しかし、じっくり付き合うことで発見できる美点を、505は多数備えている。プジョー最後のFRセダンとなった505の魅力を、改めて確認する貴重なチャンスだ。

ヴァカンスの国で求められる収納力:奥行き、深さ共に申し分ないトランクは、リッドが直立付近まで開くため使い勝手は非常に良い。これだけのスペースがあれば、長旅の荷物でも問題なく呑み込んでくれる。写真ではわからないが、トランクリッド後端にスポイラーを備える。
1990 PEUGEOT 505 GTi
車両購入価格:580,000円
プジョー度 ★★★★
実用度 ★★★★
ドロ沼度 ★★★

GTiと言えば”ホットバージョン”の代名詞だが、この時代はスポーティといった程度。刹那的な速さに溺れるよりも、永く付き合ってクルマの動き方やクセを覚え、スムーズに操る喜びに浸りたい。V6ではなく直4という点は、メンテナンスを考えると歓迎できる。

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