これがディーゼルの生きる道!?
BEVやPHEVなど、パワーユニットの電化転換を急速に推し進める欧州自動車メーカーにあって、ことディーゼルの存在価値が薄らぎつつあるのは確かだが、高性能モデルにフォーカスすれば、その特性は俄然輝きを増してくるのも事実。たとえば、こんな2台は――。
現在、ドイツを含む欧州の各都市で乗り入れ規制が始まっているディーゼル車だが、実は問題となっているのは窒素酸化物(NOx)で、二酸化炭素(CO2)ではない。ディーゼルのCO2排出量は大まかにいってガソリンよりも20%ほど少ないのだ。ゆえに、’21年の欧州内における95g/kmのCO2排ガス規制に対応するには、どうしてもディーゼルのラインアップが不可欠なのだ。もちろん、適正な排ガス対策を行なっていれば、ディーゼルは特にロングツーリング時などに理想的なパワーユニットなのは周知の通りだ。そんな背景のもと、今回アウディはスポーティモデルのS6とS7に新しいディーゼルエンジンを搭載、主に欧州のメディア向けに試乗会を開催した。
搭載されるのは3L V6TDIで、最高出力349ps/3850rpm、最大トルク700Nm/2500−3100rpmを発生。このエンジンには48Vのオンボードパワーサプライが組み込まれており、EPC(エレクトリックパワーコンプレッサー)を採用。この別名“電気モーター・ターボ”は、低回転域で250ミリセカンドの間に作動してターボラグを解消、同時にこの瞬間に発生する排気ガスの低減を効果的に行う。
インテリジェンスなスポーティディーゼル
もうひとつ、両モデルには48Vのマイルドハイブリッドシステムが採用されている。これはベルト駆動のスタータージェネレーター(BSG)とリチウムイオン電池で構成され、8kWまでの回生エネルギーを効果的に蓄える。一方、コースティング時にはエンジンを休止、さらに赤信号の手前、22km/hになると自動的にアイドリングストップを開始し、スムーズな再スタートも可能にする。こうして燃費は100km走行あたり約0.4L向上しているという。
一方、外観はほとんどベースのA6/A7と変わらず、大径タイヤ、ブラック塗装のドアミラーなどで区別される程度。インテリアもA8やA6譲りのフィードバック機能付きデジタルタッチインパネが備わり、スポーツシートはなんとオプション設定となる。
さて、まずはS7を駆ってアウトバーンへ向かったが、4WDのクワトロと60km/hから作動する後輪ステアが、高速巡行時に比類のない安定感をみせてくれるのにはあらためて舌を巻いた。渋滞に巻き込まれた場合などは、アウディの先進ドライバーアシストシステム、たとえばアダプティブクルーズアシストでリラックスしたドライブも可能にしてくれる。
一般道に下りても、アウディ製アッパーミドルのダイナミック性能は一層冴えてくる。その好感度を増す要因のひとつが、適切ギアレシオと鋭いレスポンスを持つ8速ATだ。また、アップダウンに富んだカントリーロードでは、標準採用の可変ダンパー付きスポーツサスペンションと前述した4WSの恩恵で、素晴らしいロードホールディングと軽快なフットワークを堪能することができた。
新しいS6とS7はすでにドイツを始めとする欧州では販売を開始しており、価格S6が7万6500ユーロ(約995万円 *19%の付加価値税込)、S7が8万750ユーロ(約1080万円)。ただし、現状でこの2台のスポーティディーゼルが日本へ導入される可能性はなく、450psの3L V6TFSIエンジン搭載モデルが年内にも上陸するはずだ。
【SPECIFICATI】アウディ S6セダンTDI[アウディ S7スポーツバックTDI]
■全長×全幅×全高=4954×1886×1446mm[4742×1890×1602mm]
■ホイールベース=2928mm
■トレッド(前/後)=1620/1603mm[1618/1614mm]
■車両重量=1955kg[1845kg]
■エンジン型式/種類=-/V6DOHC24V
■内径/行径=83.0×91.40mm
■総排気量=2697cc
■圧縮比=15.5
■最高出力=349ps(257kw)/3850rpm
■最大トルク=700Nm(71.4kg-m)/2500-3100rpm
■燃料タンク容量=63L(軽油)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前5リンク/コイル、後5リンク/コイル
■ブレーキ=前Vディスク、後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前255/40R20(8.5J)、後255/40R20(8.5J)
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