
今年のホストはアストンマーティン
「ブリティッシュ・サマー」と呼ばれる1年で最も過ごしのいい時期を迎えたイギリスで、F1イギリスGPに並ぶ(今やその規模すら超えたという話もある)モータリング・イベントとして有名なグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(FoS)が、7月4日から7日にかけて開催された。
今回メインフィーチャーされたのは、グッドウッド・サーキットで初めてレースに参加してから今年で70年を迎えるというアストンマーティンだった。それを祝して会場中央のグッドウッド・ハウス前には1959年にル・マンを制した(実はこれも今年で60周年を迎える)レーシングスポーツ、DBR1をディスプレイした巨大なモニュメントが建設され、毎日お昼に行われた記念セレモニーには、そのもとに30台あまりの歴代レーシング・アストンが顔を揃えたのである。

今年で創業100周年を迎えたベントレーもテーマのひとつ。1919年のEXP2をはじめ、2003年にル・マンを制したスピード8、現役のコンチネンタルGT3など20台以上が出場。さらに会場内では歴代の貴重なモデルを集めたコンクール・デレガンスまで開催されていた。

ホンダがマン島TTレース挑戦をきっかけに世界の舞台に飛び出して今年で60年。それを記念して歴代GPマシンがデモランを披露。「参加するのは今回が初めて。Moto GPマシンの迫力をみなさんに感じて欲しい」とはワークスRC213Vで参加のレジェンド、岡田忠之氏。
他にもベントレー100周年、トゥール・ド・フランス120周年、メルセデス・モータースポーツ125周年、ホンダWGP参戦60周年、ジャッキー・スチュワートF1王座獲得50周年、マーチ50周年、ポルシェ917誕生50周年(これだけのメモリアル・イヤーが揃うのも彼の地の歴史の長さと深さを物語っている)など、多くのメモリアル・イヤーに合わせたプログラムを用意。2輪、4輪合わせて600台以上のマシンと、多数のレジェンド・ドライバー&ライダーが集まりハイスピードデモランを披露してくれた。
その中でも注目を集めたのが、6月にニュルブルクリンク・ノルドシュライフェでEVの最速タイムを更新したばかりのVW ID.Rが、ロマン・デュマとともに登場したことだ。約1.8kmに及ぶグッドウッドのヒルクライム・コースのレコードタイムは、1999年にニック・ハイドフェルドがマクラーレンMP4-13で打ち立てた41.6秒。以後、安全に考慮(過去には死亡事故も起きている)して現役F1チームによるタイムアタックが禁止されたこともあり、永久的なコースレコードと化していたこのタイムを破るべく、昨年からID.Rを投入してきたVWチームは、グッドウッド専用のセッティングを施したID.Rで初日から積極的にアタックを開始。金曜に41.1秒を記録し20年ぶりの更新を果たしたうえ、土曜にはタイムを39.9秒にまで詰めてみせたのである!
もはやコンセプトカーお披露目の場に?
そんな今年のFoSのもう一つのトピックが、各メーカーがこぞって持ち込んだ新型車、コンセプトカーの発表ラッシュだ。
例えば木曜には新生デ・トマソがP72、メルセデスAMGがA45 4MATIC+、フォードがGT Mk II、ラディカルがラプチャーをワールドプレミアした他、土曜の昼には何の前触れもなく突如ポルシェ911RSRがデビューを飾るなど、モーターショー顔負けの内容とボリュームとなっていた。
またランドローバー・ディフェンダー、アストンマーティン DBX、レクサスLCコンバーチブル、ポルシェ・タイカン、MINIジョンクーパーワークスGP、そしてホンダeなどのプロトタイプも続々出走。その光景にプレスルームやコースサイドのカメラスタンドがてんやわんやの大騒ぎになるほどだった。
さらに広大な会場内には、試乗コースも備えた巨大なメーカー・パビリオンが乱立。一部では、限られた顧客だけを招き入れての新型車の内覧会が催されるなど、各メーカーがグッドウッドFoSを単なるモーターイベントではなく、従来の展示型とは違う新たなモーターショーとして捉え、力を入れていることが如実に感じられた4日間でもあった。