
2017年7月に国内導入以来、予測を上回る2000台を超える販売台数を記録しているシトロエンのベストセラーコンパクト「C3」。エアバンプが特徴的な際立つルックスをはじめ、コダワリのインテリアなど魅力満載だ。ここでは、C3を軸に個性派ライバルとキャラクターを比較してみよう。
前年を上回りそうな勢いでヒットしているC3
シトロエンC3の売れ行きが好調らしい。3代目となる現行モデルは2017年の夏に国内発表されて、翌2018年には年間で2600台ほど、そして今年は最初の4カ月に900台近くが売れて前の年を上回りそうな勢いだ。一方で、例えばこのクラスの事実上の王者であるフォルクスワーゲン・ポロが2018年に1万2000台以上を登録してたりする事実もあるけれど、もともと日本におけるシトロエンのポジションは特殊なところに位置していて、昔から万人がこぞって手に入れたがる類とは言いづらい存在だった。何せ入り口からして少し解りにくい上、奥行きがどんななのか想像もしにくいから。なのに、売れ行きが好調に推移している。C3については個人的にも好感を持ってるし、思いのほか巷の関心が高いことを肌感覚で感じていたりもしたのだけど、出てきた数字には軽く驚いたのも事実。それは一体なぜなんだ? を探るのが、今回のミッションである。
比較検討のために用意されたクルマ達の中から最初に乗ってみたのは、王者ポロだった。あらためて感じるのは、死角らしい死角を見つけることのできない恐ろしいほどの総合力の高さと、ちょっとした無敵感だ。このクラスに求められるだけの実用性はほぼ完璧に満たしていて、乗り心地は快適。骨格も筋肉もしっかりしてる車体が生み出す走りはシャッキリしていて気持ちいいし動きも正確。トルクの出し方とパワーの伸ばし方の上手な!? エンジンは数値からは予想できない滑らかで活発な走りを提供してくれる。おまけに昨今のフォルクルワーゲンのスタイリングには野暮ったさが欠片もない。コンパクトハッチバックの侵しがたいベンチマークだ。それでいて211万9000円からという価格は見越した生産台数の莫大さの賜物に違いないけど、ユーザーにはこの上なくありがたいものであるのも確かなのだ。
あらゆる面でコスパが高いC3
スマート・フォーフォー・ブラバスは、独特のインパクトを持つルックスと走りっぷり、上手に演出された上質感を兼ね備えたモデルだ。ブランド違いだからちょっと妙な言い方だけど、まるで乗用車ベースで作られたメルセデスAMGモデルの最も小さいヤツみたいな印象、といえばいいか。かわいい系のスマート・フォーフォーをいかつい姿に仕立て上げたそのルックスは心の中の“男の子”な部分を掻き立ててくれるし、いかにもジャーマンチューンドカーっぽいガツンと締まった乗り味も気分を高めてくれる。実際、0.9Lとは思えないぐらいに速いし、結構楽しい。フットワークも悪くない。各部にレザーをあしらうインテリアのトーンもあって、小さなGTカーのような感じを受ける。なかなか上々なのだ。が、それだけに価格は318万円。価値観を見出せる人にはいいけれど。
フィアット500Xは、ルーツであるチンクエチェントの持っていた独自の明るい世界観と走らせる楽しさを、コンパクトSUVに落とし込んだモデルだ。本能的に親しみを感じちゃうようななごみ系のキャラクターは唯一無二。新しい1.3Lエンジンの爽快なフィール、それに違和感ひとつなくスポーティなフットワークは、週末に運転手を務めるパパ(かママ)が最も楽しめるクルマであることを示している。いろんな意味で、気分がとにかく上がるのだ。そのぶん乗り味も躍動感に満ちた感じだから物静かな気分にはちょっとなれないけど、何だかやたらとエネルギッシュな気分にはなれる。典型的なイタリアン! なのだ。298万円からという価格は、車格が実際のところは半分ぐらい上であることを考えれば、まぁ妥当というところだろう。
それでは今回の主役、シトロエンC3はどうなのか。まずはナンバーワンよりオンリーワンを重んじるフランスならではの、特徴的なスタイリングだ。視覚的な優劣や好嫌は見る人の心に宿るものだから語るつもりはないけれど、これが多くの人の目を惹き付けているのは間違いない。そして柔軟にして密度感のある、極上の乗り心地だ。これほど快適なコンパクトカーは他にない。その2点だけで、C3を選ぶ価値は充分にある。その上ポロ並みの実用性はあるし、スマート・ブラバスとは正反対ながらインパクトと上質感はあるし、500Xと別種ながら“シトロエン”というブランドそのものといえる世界観を強力に薫らせてもいる。意外や速さもあるし、マジカルだけどハンドリングも悪くない。見た目に惑わされがちだけど、1台の乗用車としての出来映えは相当にいいのだ。222万円からという価格でここまで満足感の高いクルマは、そうはないとすら思う。実はシトロエンって、昔から脈々とそういうクルマばかり作り続けてきてたブランドなのだけど……。全てのシトロエンがそうなのだけど、一般的にはメジャーとはいえないながら、反面、その味にはひとたび知ってしまうと驚異的に後を引く恐ろしい成分が含まれていて、ずっと乗り続けたい気にさせられるか、降りてしまったとしてもそれから常に気になる存在であり続ける症状に苛まれる、というようなところがある。このC3が日本におけるシトロエンの世界をドラスティックに変えていくことになるのかどうか、楽しみだ。
CITROEN C3 SHINE

水平基調のコクピットを採用し、シンプルで落ち着く空間が拡がる。シート形状がC4カクタスと異なるが、同じエスプリといえるインテリア。世界初搭載のコネクテッドカムはドライブレコーダー内蔵の16GBメモリを使い、前方の風景を撮ることができる。
【Specification】CITROEN C3 SHINE
■全長×全幅×全高=3995×1750×1495mm
■ホイールベース=2535mm
■車両重量=1160kg
■エンジン種類/排気量=直3DOHC12V+ターボ/1199cc
■最高出力=110ps(81kW)/5500rpm
■最大トルク=205Nm(20.9kg-m)/1500rpm
■トランスミッション=6速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:トーションビーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=205/55R16:205/55R16
■車両本体価格(税込)=2,460,000円
■問い合わせ先=プジョー・シトロエン・ジャポン0120-55-4106

新型ポロの特徴は、よりワイド感が強調されたデザインで、ACCやフロントアシストと呼ぶ自動ブレーキ、駐車時に自動的にステアリング操作をサポートするパークアシストなど安全装備も充実している点。エンジンは1L直3ターボに7速DSGを組み合わせる。
【Specification】VOLKSWAGEN POLO TSI HIGHLINE
■全長×全幅×全高=4060×1750×1450mm
■ホイールベース=2550mm
■車両重量=1160kg
■エンジン種類/排気量=直3DOHC12V+ターボ/999cc
■最高出力=95ps(70kW)/5000-5500rpm
■最大トルク=175Nm(17.9kg-m)/2000-3500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:トレーリングアーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ドラム
■タイヤサイズ(F:R)=195/55R16:195/55R16
■車両本体価格(税込)=2,679,000円
■問い合わせ先=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン0120-993-199
SMART FORFOUR BRABUS XCLUSIVE

最高出力90ps、最大トルク135Nmを発生する0.9L直列3気筒ターボエンジンを搭載。インテリアはダッシュボードやメーターパネルに加えて、運転席側Aピラーの根元に備わるタコメーターにも専用デザインを採用。エクステリアも随所に専用パーツを装備する。
【Specification】SMART FORFOUR BRABUS XCLUSIVE
■全長×全幅×全高=3550×1665×1545mm
■ホイールベース=2495mm
■車両重量=1080kg
■エンジン種類/排気量=直3DOHC12V+ターボ/897cc
■最高出力=109ps(80kW)/5750rpm
■最大トルク=170Nm(17.3kg-m)/2000rpm
■トランスミッション=6速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:ド・ディオン
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ドラム
■タイヤサイズ(F:R)=185/45R17:205/40R17
■車両本体価格(税込)=3,180,000円
■問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本0120-656-256
FIAT 500X CROSS

マイナーチェンジで新開発の1.3L直4ターボと6速DCTに換装。前後バンパーのデザインを刷新し、上級モデル「500Xクロス」のライトまわりにはLEDを採用。また、タッチ式ディスプレイのインフォテインメント機能と先進安全運転支援機構が追加された。
【Specification】FIAT 500X CROSS
■全長×全幅×全高=4280×1795×1610mm
■ホイールベース=2570mm
■車両重量=1440kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1331cc
■最高出力=151ps(111kW)/5500rpm
■最大トルク=270Nm(27.5kg-m)/1850rpm
■トランスミッション=6速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:ストラット
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=215/55R17:215/55R17
■車両本体価格(税込)=3,340,000円
■問い合わせ先=FCA ジャパン0120-404-053