自動車型録美術館

マツダ・コスモスポーツ/あっという間に抜き去っていった見たこともないスポーツカー【自動車型録美術館】第28回

MAZDA COSMO SPORT/マツダ・コスモスポーツ

ロータリーエンジン搭載の新型車に対する期待が高まっています。今回はマツダロータリーの原点、初代コスモスポーツのカタログです

不思議な体験

コスモスポーツが発売される前のことです。古くからの知人一家と富士山に向けて一台で移動するため、知人の所有する初代セドリックのステーションワゴンにのせられました。小学生だったわたしの席は、後ろ向きに座る3列目。セドリックのステーションワゴンは、バックドアのリアウインドーにパワーウインドーが設定されていました。乗車中、不必要に目の前の窓を上下させていたのは、ご想像の通りです。

富士山のスバルラインを走ることが目的のひとつでした。富士山の近く、スバルラインにあともう少し、というところの閑散とした道で、見たこともないクルマが、すぐ後ろに迫ってきました。息がとまりました。低い、地を這うような低さ、その迫力。コスモスポーツでした。

あっという間に抜き去っていくスポーツカーの姿に、前席に乗っていた父の知人と父は、異口同音に、あれは何、と訊いてきたのです。わたしはあまりのショックに声が出ませんでした。

ロータリーエンジン

ロータリーエンジンのしくみは、小学生には難しいものでした。4サイクルや2ストロークのエンジンですら、よく理解していなかったのですから、無理もありません。マツダはロータリーエンジンに対する理解促進のため、実に様々な資料を用意しています。それらもいずれ、こちらで紹介したいと考えています。

国産車カタログベスト4

1960年代から1970年代にかけての国産車カタログで、わたしが勝手に選んだベスト4があります。まずは本稿の第12回でとりあげた、いすゞ117クーペ。懐かしいLPのレコードジャケットのような装丁のカタログは、史上稀に見る傑作だと思っています。ついで、こちらのマツダ・コスモスポーツ。更にトヨタ2000GT(マイナー前)のケース入りカタログ。そしてスカイラインGT-R(PGC10)のケース入りカタログ、の4点です。これらは、どれもが力作で、甲乙つけがたい仕上がりです。コスモスポーツでは横尾忠則氏による輸出用カタログもわすれてはなりません。トヨタ2000GTやスカイラインGT-Rのケース入りカタログ、そしてコスモスポーツの輸出用カタログなども、いずれこちらで紹介する予定です。

世界初の量産2ローターエンジン搭載車です

海外のロータリーエンジン搭載車はどうでしょう。本家NSUにも2ローター・エンジンを搭載したモデルがありました。NSU Ro80です。初代コスモスポーツに少しだけ遅れて登場したNSU Ro80のカタログも、装丁はコスモスポーツのものによく似ています。

縦長のケースにカードが収められたスタイルで、NSUのRo80にかける意気込みが伝わってくるようです。面白いのはカタログの色。コスモスポーツがケースと中のカード、どちらも黒ベースなのに対し、NSU Ro80はケースとカード、どちらも白が主体なのです。このRo80やシトロエンGSビロトールのカタログは、おりをみて、こちらでとりあげたいと思っています。

●サイズ:(縦×横)346mm×258mm(ケース) 340mm×255mm(カード)
●カード(3種):1枚もの×2 4p×1 36p×1

 

Text:板谷熊太郎 /Kumataro ITAYA カー・マガジン480号(2018年6月号)より転載

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