誰もが一度は欲しくなる、憧れのオープンスポーツ
現行Z4は、実は存続が危ぶまれていたモデルである。2シーターオープンは、憧れの的ではあるものの、実際の販売台数には結びつかないというのが現実で、憧れのまま終わっているという。コストもかかるし設計/生産もそれなりに大変であるにもかかわらず数が出ないのであれば、存続打ち切りの判断もやむを得ないだろう。ところがちょうどその頃に舞い込んできたのがトヨタとの協業、つまりスープラの開発提案だった。トヨタからの打診がなければ現行Z4は生まれていなかったし、トヨタからの打診がZ4の存続打ち切り決定後だったらスープラも生まれていなかったかもしれないのである。
いったん作ると決めたら一切妥協せず、全力で取り組むのがBMWである。仮想敵をミッドシップのポルシェ・ボクスターとしたことからもそれは窺えるし、可変ギアレシオのスポーツステアリングを全車に標準装備とした判断もそれを裏付ける。従来型よりも全幅を拡大しホイールベースを縮め、ハードトップからソフトトップへ変更することで重心を下げたのは、4輪の接地性と回頭性の向上を狙ったものに他ならない。
運転席に座ると、目の前にドーンとロングノーズのボンネットが見える光景は、それだけで痛快だ。前輪が遠くにあってもその位置と舵角は手に取るようにドライバーに伝わってくる。51:49(前軸重800kg:後軸重770kg)の前後重量配分により、旋回軸がボディのほぼ中央部に位置し、そこを中心にボディが小気味よく向きを変える様はまさしくスポーツカーのそれである。今回の試乗車は340ps/500Nmを発生する6気筒エンジン搭載モデルだったが、4気筒の197ps/320Nmを使い切って走る方が、このクルマの魅力やポテンシャルを余すことなく引き出せると思う。