ニュース&トピックス

日産が高齢ドライバー向けに創案した「ハンドルぐるぐる体操」とは?

新潟大学がコンセプト検討に協力。体操内容も創出

日産自動車は、高齢ドライバーの安全走行を促進・啓発する目的で、新潟大学とともに「ハンドルぐるぐる体操」を制作した。この体操は、おもに高齢ドライバーが日々の生活の中で運動習慣をつけることで、筋力と認知力を高めて安全走行できるよう支援するためのもの。日産と新潟大学が共同でコンセプト検討を行ない、新潟大学が体操の内容を創っている。

日産と新潟大学は2018年、まち・生活・交通を結び安全な未来を目指す交通安全プロジェクト「トリトン・セーフティ・イニシアティブ」を立ち上げた。それを皮切りに、高齢者の運動・運転機能データの収集とその同期解析、高齢者への健康・交通安全教室、ドライバーに早目の点灯を呼び掛ける「おもいやりライト運動」などの活動を共同で行なっている。

「ハンドルぐるぐる体操」は、そんなトリトン・セーフティ・イニシアティブの成果のひとつ。新潟大学が取りまとめた高齢者約2,000人の運動機能データに基づき、クルマの走行実験による知見も使いつつ高齢ドライバーが簡単で楽しく実践できる体操として制作されている。この体操は、高齢ドライバーだけでなく運動不足になりがちな人など、誰にでも勧められるもので、高齢者がその家族や地域住民と一緒に楽しめるという。

高齢者は運動機能が低下しがちだ。運動機能が低下すると、クルマの運転機能にもさまざまな悪影響が出てくることが新潟大学の研究からわかってきた。

第一に下半身(特に股関節周辺)の筋力が低下すると、運転姿勢が前かがみになる。そのため、メーターパネルを確認するたびに首の余分な上下運動が増えドアミラーを確認するたびに体の左右動作が必要になってくる。これが安全走行を阻害する原因のひとつとなり、足を伸ばしたり曲げたりしてブレーキやアクセルを操作する動作がしにくくなると考えられている。

第二に、高齢者は肩から腕の筋力が低下することで手を伸ばした姿勢でハンドル操作を続けることがつらくなる。特に長距離運転では背中の筋肉を中心に負担がかかり、疲労が大きくなる。

第三に、運動機能の低下は認知力低下を招き前方車両の急ブレーキなどとっさの場面で、適切な運転行動ができなくなると推測される。またスピード感覚や視野機能が劣ってくると考えられており、このようなことから高齢者は、運動機能の衰えに加えクルマを安全に運転することが徐々に難しくなってくる。

そこで、「ハンドルぐるぐる体操」は血流を良くする「リフレッシュ」、少しハードな「筋力アップ」、脳を刺激する「認知力アップ」の3つのバリエーションを用意。どれも覚えやすいように、3秒間4カウントで完結するリズミカルな動きの繰り返しで構成されている。

それぞれの体操の内容と目的・効果

1:リフレッシュ
ハンドルを持ち、肩を伸ばして引いて、片脚を前に出して体を前かがみにして伸ばし、最後に体をひねる運動。背筋と脚の筋肉を伸縮することで、血流を良くして筋肉を活性化。運転前の身体慣らしや運転合間の疲労軽減に効果が期待できる。

2:筋力アップ
ハンドルを持ち、脚を前に伸ばしてバンザイしながら腰を下げて止める、脚を横に伸ばしてハンドル切りながら腰を下げて止めるという運動。ゆっくり大きな動きをすることで、肩と腰から太ももの筋肉を鍛えられる。運転姿勢が前かがみになるのを予防できる。

3:認知力アップ
ハンドルを回しながら首を左右に振り、脚を伸ばす運動。介護や転倒予防に取り入れられている手法として、ゲーム性のあるミラーバージョン(鏡動き)もある。脳に刺激を与え、認知力アップが期待できる。

3タイプ共通の効果

両手を伸ばしてハンドルを持つことによる腕の筋力アップ。運動習慣をつけることで、とっさの場面で速い反応をとったり、スピード認識力のアップ。

なお、新潟市と出雲崎町ではすでに「ハンドルぐるぐる体操」が高齢者や保育園児に実践されている。また、高齢者と保育園児が一緒になってオンリーワンのハンドルを作るワークショップも開始。今後は体操を広めながら、約1年をかけて複数地域、数百名の規模で効果や定着の検証を行なうと同時に全国への普及も図っていく予定という。

注目の記事
注目の記事

RANKING