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【比較対決】「メルセデス・ ベンツSクラス vs BMW 7シリーズ」ブランドの威信を賭けた宿命の戦い!

Sクラスでしか味わえない境地/Sクラス派・渡辺敏史

メルセデス&BMWといえば、同じドイツにありながら、台数・規模・ラインナップ云々に至るまで、長年にわたって近接的関係にある真のライバルだ。一方で、世界の高級車づくりにおいてはともにベンチマークであり続けていることに異論はない。

MERCEDES-BENZ S560e long/メルセデス史上最高峰の安全性と快適性を獲得したSクラス。撮影車は最先端の電動化テクノロジーによって走りの愉しさと環境性能をかつてない高度な次元で両立させるEQ Power (プラグインハイブリッド)モデルとなる。

が、現在の立ち位置を築くに至るところまでのプロセスは、まるで異なっている。かたや1886年のパテント・モトールヴァーゲンを皮切りに、戦前から一貫して大型高級車を供給し続けてきたその自負が土台にあるメルセデス。かたや航空機エンジン製造を端緒に二輪・四輪へと軸足を広げ、小さなクルマづくりをコツコツと積み上げながら大型高級車の販売へと結びつけたBMW。改めて歴史を振り返れば、それは最高に日本人が喜びそうな対決構図でもある。

MERCEDES-BENZ S560e long/特濃のメルセデスライドをもって乗る者を納得させる。

そんな両社のフラッグシップたる存在といえば、Sクラスと7シリーズ。BMWが初代E23系7シリーズを初めて上市した1977年から、ライバル関係は40年以上にも及ぶ。ちなみに現行のG11系は2015年にデビュー、2019年にマイナーチェンジを受けて現在は後期型となる。一方のSクラスは現行がW222系となり、そのデビューは2013年。2017年にマイナーチェンジを受けてこちらも現在は後期型が販売されている。ちなみにSクラスは順当にいけば今年中にもフルモデルチェンジが予想されており、今回のモデルが末期も末期であることは想像に難くない。

MERCEDES-BENZ S560e long

両車の内装の意匠やインターフェイスといったところは、共にその後の下位モデルに大きな影響を与えたものになっている。特にメルセデスはこのSクラスの登場後、ADASの設定操作においてサムスイッチのプライオリティがあがったため、 W222系もゴードン ・ワグナーが拘っただろう2スポークのステアリングがこの後期型ではあっさり普通の3スポークに改められた。しかし大画面液晶を並列したメーター&インフォテインメントシステムや、丸いエアベントが並ぶインテリアの構成などはその後のCクラスやEクラスにも引き継がれている。7シリーズも然りで、新たに提案したステアリングやセンターコンソール周りのインターフェースはその後の5シリーズや3シリーズにも横展開され、ファミリーとして操作共有性を高める施策がとられてきた。

MERCEDES-BENZ S560e long

その7シリーズは、アーキテクチャーにおいても他のファミリーに先駆けてCLARプラットフォームを用いたが、その軽量・高剛性ぶりは現状のLセグメントにあっても最大の武器となっている。今やこれが売れ筋だというディーゼル四駆の740dxDriveでさえ車重がほぼ2トンに収められるのは、ピラーの芯材にカーボンを用いるなど材料置換著しいこのアーキテクチャーがゆえだろう。

MERCEDES-BENZ S560e long

対するSクラスも売れ筋となるのがディーゼル四駆のS400d 4マチックだ。最新設計のストレート6のスイートさはBMWにも優ろうかというところだが、一方で車重は100kg以上重く、そのぶん燃費も確実に劣る。設計年次の新旧ゆえの至らなさもあるが、スペックのクレバーさでは7シリーズには敵わない面も多い。
それでも、ADASはギリギリのセンまで拮抗している辺りはメルセデスの意地も感じられる。が、ここでもハードウェアの新旧が微妙な優劣に絡んでしまうのはやむを得ない。7シリーズは位置判定においてナビゲーションとの連携を前提とする、60km/h以下のハンズオフドライブを既に実現している。もっともこの点はメルセデスの側も次期Sクラスでは最重要事項として徹底的に先進性を追求してくるだろう。

MERCEDES-BENZ S560e long

何より、7シリーズ側の今回の取材グレードは、白眉の出来を誇るM760Liだ。どの域からでも滑らかにトルクを滲ませつつ、高回転域まで清涼に吹け上がる12気筒ならではの官能性と、およそ12気筒らしからぬ軽快なハンドリングを併せ持つ稀代のリムジンを前にすれば、その魅力もさすがに陰るかと思いきや、Sクラスはやはり特濃のメルセデスライドをもって乗る者を納得させてくれる。

MERCEDES-BENZ S560e long

軽快さはないが鈍重ではないコーナリング。どんな入力も一撃で沈めるアシと無駄なお釣りを一切漏らさない上屋の動き。そして柔らかいがコシはある乗り心地……と、それらが醸し出す得もいえぬ信頼感や包容感というのは唯一無二、Sクラスでしか味わえない境地だろう。この乗り心地を守る、そして超えるのはやはり次期Sクラスしか考えられなさそうだ。

リポート=島下泰久/T.Shimashita(7シリーズ)、渡辺敏史/T.Watanabe(Sクラス) フォト=郡 大二郎/D.Kori ルボラン2020年8月号より転載
CARSMEET web編集部

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