メルセデス・ベンツ

【比較対決】「BMW X5 vs メルセデス・ ベンツGLE」いまをときめくSUVを選ぶなら?

いま人気絶頂のSUV(BMWはSAVと呼ぶが)カテゴリー。本格的なオフロード性能を持ちつつもひと昔前のクロカンイメージはなく、オシャレで使い勝手のよいマルチパーパスビークルとして愛されている。とはいえ、メルセデスとビーエムでは、その仕立て方はやはり異なる。さて、アナタはどちらがお好みですか?

エンジン音を重視するBMW/X5派・萩原秀輝

1980年代、BMWの開発現場を取材したことがある。そこは、エンジン音を研究する施設。当時から、BMWはサウンドとしての演出を重視していたのだ。しかも、加速中だけではなく減速中のサウンドをどう聞かせるかまで。その後、各メーカーもサウンドとしてのエンジン音の演出は開発では欠かせない課題となっている。だが、減速中にまでこだわるという情報が耳に届いたことはない。

BMW X5 M50i/第4世代としてかつてないほど力強い存在感を纏ったX5。インテリアもひときわラグジュアリーになった。

では、BMWはなぜエンジン音を重視してきたのだろうか。それは、走りの臨場感を際立たせるためだ。日常的な場面でも、ドライバーの操作に対してクルマが絶妙な加減で期待を微妙に超える反応を示す。そこにサウンドが重なり、刺激とはいえない程度の反応でさえドライバーはもっとアクセルを踏みたいとか、ステアリングを素早く切り込みたいという気持ちになる。BMWは、そんな積極的な走りへの誘いかけが巧みなのだ。
X5に乗ると、まさに誘いかけが実感できる。M50iは530psを発揮する4.4LのV型8気筒エンジンを搭載しながら、サウンドの演出は派手すぎず中回転域まではビートを刻んでくる。あたかも、走りの気分を盛り上げるかのように。そして、ビートが高回転域で高密度になりレブリミットとなる6500rpmの直前でカァーンという感じの高周波サウンドに変わる。積極的にアクセルを踏み続けることでパワーを稼ぎ出すという、ドライバーとクルマの関係性が深まる瞬間だ。そして、アクセルを戻すとクゥーンという感じに鳴き減速に入る。
メルセデス・ベンツは、BMWよりもクルマからドライバーへの働きかけがさり気ない。GLEにしてもそうで、試乗車の450が積む3Lの直列6気筒エンジンはサウンドの演出こそ控えめだが、アクセルを少し踏み足す程度の加速でも充実した力強さが即座に確保される。48V電気システムの採用により、ISGがモーターとして機能しているからだ。
別の機会に試乗した400dは、3Lの直列6気筒ディーゼルエンジンを積むことが信じられないほど優れた静粛性を実現し、誰もが納得する快適な乗り心地も提供。だが、積極的な走りを促すような誘いかけはない。それは450も同様であり、その価値はメルセデスAMGに託される。
一方、X5は3Lの直列6気筒ディーゼルエンジンを積む35dでもアクセルを踏み込むとグォーンという感じの迫力あるサウンドを響かせながらパワフルに加速。一定の速度を保つ場面でさえブォーッというウナリ音が聞こえ、エンジンがいつでもドライバーの要求に応える状態にあることを知らしめる。ただ、このあたりは聞こえてしまう音なのかもしれないが。

乗用車として最強のブランド/GLE派・嶋田智之

誰かがいっていた“メルセデスはただメルセデスであるというだけで正義だ”という言葉は、ある意味、とても的を射ていると思う。これほど選ぶ理由をわざわざ説明せずとも誰もが自然と理解してくれるブランドなんて、他にない。しかもそれに違わず、乗って使って不満らしい不満を感じる、ということがまずないのだ。趣味性が強く反映されるカテゴリーのクルマにはまた別の考え方があるものの、暮らしを快適に便利に過ごすためのいわゆる乗用車として、最強のブランドなんじゃないか? と思わされることすらある。

MERCEDES-BENZ GLE 450/GLEクーペとの差別化もあって、 GLEには上質で心地よいゆとりをもたらす、初の7人乗りを採用する。

僕にとってSUVは趣味の対象というより、ゆとりとともに日々を謳歌するための相棒であって欲しい存在。だからGLE450は、X5と較べてどうというよりも、ほとんどカテゴリーの最上位あたりに位置するといえるモデルだ。
何がいいかといえば、あらゆる部分から匂い立つような、ジェントルで上質といえるテイスト。エクステリアは個人的にはここまで煌びやかじゃなくてもいいと感じるところもあるけれど、風変わりなところのない穏やかなデザインやウッドとレザーからなる落ち着きのあるインテリアにはすんなり馴染めるし、優しくしっかり身体を支えてくれるシートの座り心地も存分に心地好い。さらにはエアスプリングと電子制御ダンパーの組み合わせからなるサスペンションが滑らかにたっぷりと伸び縮みしてくれるから、しっとりと快適だ。ステアリングを切り込むと、クイックではないけど自然に的確に反応してくれて、2.4トンの車体を“スイッ”と“フワッ”のちょうど中間ぐらいの感じで難なく曲げていく。車体の大きさを意識する必要はあるけど、取りまわしも望外に楽だし視界はいいから、街中でも山越えの国道でも、かったるさなく気持ちよく走れるのだ。
そんなとき、アクセルペダルをガンガン踏んでいきたい気持ちにならないのがちょっと嬉しい。3L直6ターボはたった1600rpmで500Nmのトルクを自然に沸き立たせ、さらに電気モーターの250Nmがアシストを加えるから、街中ではペダルに足を軽く乗せてるだけで充分、峠道でも親指の付け根あたりの力加減ぐらいですんなり走れてしまう。その穏やかなる力強さに身を任せて走ってると、何だかそのペースが気持ちよくなってくる。といって急ぐのが苦手なわけでもない。その気なら直6特有の快いサウンドと伸びを感じながらすっ飛んでいくのだって簡単。結構速いのだ。
X5M50iの530psはさらに速いし飛ばすと気持ちいい。でも、決してスポーツカーじゃない。それにSUVで生き急ぐような走り方を、僕はあまりしたくない。欲しいのはひとつ、ゆとり、なのだ。

リポート=萩原秀輝/H.Hagihara(X5)、嶋田智之/T.Shimada(GLEクラス) フォト=柏田芳敬/Y.Kashiwada ルボラン2020年8月号より転載

注目の記事
注目の記事

RANKING