1963年に初代が登場して以来、RRレイアウトを踏襲するスポーツカーというコンセプトを継承しながら、昨年には第8世代と生まれ変わったタイプ992ことポルシェ911。数あるドイツ車の中から、ベストテン第1位はこのモデルだった。
基本は変わらず、常に進化している
ポルシェ911の魅力のひとつは「変わらない」ということだ。外観は、言わずもがなだろう。水平対向6気筒エンジンも、それを車体後端に積む基本レイアウトも、ずっと継承されている。

PORSCHE 911 CARRERA
走らせても、やはり裏切られることはない。ターボ化されても、背後から響くのは“あの”フラットシックスの鼓動。やはり癖や扱いやすさは丸められてきたが、リアエンジンならではのフットワークも健在だ。スイートスポットにハマッた時の快感は、他では得られないものだと言っていい。
一方で「常に進化している」のも911だ。最新の992で限界がさらに高められ、快適性も向上。雨天時の安定性を担保するウェットモードも備わった。一見変わらない見た目も、コクピットがデジタル化され、リアビューはLEDストリップが鮮やかに輝く。しかもこれらは、過去のモチーフをうまく活かした技アリのデザインなのだから堪らない。
価格はじわじわ上昇しているし、サイズも拡大してはきたけれど、それでも911はあくまで911のままで、いつもそこにいる。しかも見れば、乗れば、間違いなく進化を感じさせるかたちで。
スポーツカーの、そしてドイツ車の、色褪せない永遠のアイドル。それがポルシェ911である。
島下泰久/Y.Shimashita
高い実用性の裏に隠されている非日常
タイプ992は単なる最新・最良の911ではなく、歴代の中でも傑出した存在。ワインで言うところのグレートビンテージにあたるモデルだと思う。特にシャシーの潜在能力は、合金製ボディとして考えると、おそろしく高い。

PORSCHE 911 CARRERA
たとえばカレラSなどは、日常領域ではほどよくクイックなハンドリングと、快適さを全面に押し出した乗り味で猫を被っているのだが、いざそのステアリングに鞭を入れた途端、呆れるほどのポテンシャルを見せつけてくる。
どこまでもシャープに切れ込むフロントエンドに対し、ボディは旋回Gをしかと受け止め、さらに大きく余裕を見せつけてくる。自然吸気よりもリニアで、回すほどに力を漲らせるターボエンジンが、このシャシーの手の平で気持ち良く吠える。底なしの剛性感は空冷時代の乗り味を想起させ、己のルーツを掘り起こすかのよう。だからこそポルシェはこのタイプ992に、空冷時代を思い起こさせるディティールを、ふんだんに盛り込んだのだろう。
高い実用性の裏に隠されている非日常。そのギャップは実にクレイジーで心地良い。そしてこれこそが、911というスポーツカーがの目指した理想だと思う。ピュアガソリンの911として、タイプ992はひとつの到達点である。
山田弘樹/K.Yamada
【Specification】PORSCHE 911 CARRERA
■全長×全幅×全高=4519×1852×1298mm
■ホイールベース=2450mm
■車両重量=1505kg
■エンジン種類/排気量=水平対向6DOHC24V+ツインターボ/2981cc
■最高出力=385ps(283kw)/6500rpm
■最大トルク=450Nm(45.9kg-m)/1950-5000rpm
■トランスミッション=8速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/40ZR19:295/35ZR20
■車両本体価格(税込)=13,980,000円

PORSCHE 911 CARRERA/992ではワイドボディを全モデルに採用し、後輪のトレッドを拡大して安全性を向上。新開発のウェットモードを標準装備するほか、衝突被害軽減ブレーキやACC、レーンキープアシストなどの先進機能も充実。キャビン内には初代911をモチーフにした新開発のデジタルコクピットが広がる。
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ポルシェジャパン 0120-846-911