スマートキーの普及がドアハンドル形状を変えた
クルマのパーツ全般を見ていると、それなりに時代進化はしていても基本形状はさほど変わっていないことが多い。代表的なタイヤは薄くはなっていても黒くて丸いパーツであることは変わっていないし、ゴムによって雨滴をはじくワイパーの基本構造もずっと不変だ。ステアリングホイールについてもフラットボトムなどが増えてはいるが基本的には円形であるし、ペダル類の形状もさほど変わっていない。
しかし、ここ数年で大きく流れが変わったパーツがある。それがドアハンドル(アウター側)だ。かつてはパネル上のパーツを引き上げるフラップタイプが主流だったが、最近ではハンドル部を握って操作するグリップタイプが主流になっている。その理由はいくつか考えられるが、もっと大きく影響しているのはスマートキーの普及だろう。
キーを身に着けているだけでドアロックを解除できるスマートキー、その利用を考えるとドアハンドルに内蔵されたセンサーに触れることでロックを解除し、そのままグリップを握って引くことでドアを開けるというシークエンスがマッチする。
実際、スズキの軽自動車などにはフラップタイプのドアハンドルとスマートキーを組み合わせモデルもあるが、その場合はドアハンドル脇のスイッチを押してロックを解除するようになってしまい、スマートさではかなわないのは事実だろう。
また、グリップタイプのハンドルであればグリップ部分に小型アンテナを内蔵させておけるので設計や製造面でも有利になる。スマートキーが大前提となってきているという事情から、市販車の多くがグリップタイプのドアハンドルを採用するようになっているといえる。
もともとグリップタイプのドアハンドルというのはフォルクスワーゲンが、握りやすく力を入れやすいという合理性から採用してきたことで知られているが、いまの時代においてはスマートキーとの相性の良さが、その普及に一役買っているのだ。
ただし、そうしたトレンドにも変化が現れている。
それが、普段は格納されていてスマートキーを持って近づくと飛び出してくるリトラクタブルタイプのドアハンドルだ。最近では、DS3クロスバックやHonda eといったコンパクトなモデルでも採用例が見られるようになっている。
リトラクタブルタイプのドアハンドルが持つ最大のメリットはボディ表面の凸凹を最小限とできること。燃費や電費に大きく影響する空気抵抗を改善できるという意味では時代に求められる機能性があるといえ、ドアハンドルの新トレンドとして増えていくことは間違いない。
また、ミニバンの後席ドアでおなじみのスライドドアでは、ドアハンドルを使わずにスイッチ操作や足の動作で開閉するタイプも増えてきており、ドアハンドルをほとんど使っていないというオーナーもいるかもしれない。ユニークな装備としては、マイナーチェンジをしたばかりのホンダ・オデッセイにジェスチャーによってスライドドアを開閉する機構も注目だ。また、事前に設定しておくとスマートキーを持って近づくだけで自動的にスライドドアが開くといった機構がダイハツやトヨタのスライドドア車に採用されている。
いまだにキーを挿してロックを解除しているというユーザーは少数派だろうが、いまやハンドルに触れずにドアを開けるという時代はすでに現実になっているのである。