アウディ

「クワトロ」、そして「RS」の意味とは? 【2021 Audi RS SPECIAL】

アウディの高性能モデルである「RS」にとって2019年は四半世紀、そしてブランドの牽引役でもあり続けてきた「クワトロ」は2020年が40周年という節目だった。では、この2つの称号はフォーリングスに何をもたらしてきたのか? ここでは現代のアウディを象徴するRSとクワトロの意味を考察してみる。

4WDという機構面だけにはとどまらない!

日本では「技術による先進」と訳されているアウディのスローガン、“Vorsprung durch Technik”が初めて広告に使用されたのは1971年の1月。つまり今年がちょうど半世紀という節目なわけだが、その言葉をもっともわかりやすく体現した最初のモデルは1980年デビューの初代アウディ・クワトロだった。

当時このモデルが自動車界に与えた影響力がどれほどであったかは、改めて説明するまでもないだろう。乗用車+4WDという組み合わせ自体は決して初めてというわけではなかった。だが、センターデフを備えてフルタイム4WDとした初代クワトロは、それまでの4WDに対する意識を変革。悪路走破性だけでなく、幅広い路面状況下でパフォーマンスを高める機構としての有効性を実証してみせた。

初代クワトロ以降、アウディはその4WDシステムを時代に応じて進化させ続けると同時に、幅広いモデルにも展開。アウディ100がスキージャンプ台を昇る象徴的なCMを憶えているクルマ好きも多いはずだ。

その端的な例として挙げられるのは、やはりラリーでの活躍だろう。デビュー翌年からWRCに参戦したアウディ・クワトロは、数々のタイトルを獲得。その中にはミシェル・ムートンによる初の女性WRCウィナー誕生という記録も含まれるわけだが、ラリー好きならご存じの通り、以降のWRCマシンは長らく4WD一色に塗りつぶされた状態が続くことになる。
アウディにおける“クワトロ効果”は、それだけにとどまらない。いまやドイツを代表するプレミアムブランドの一角として広く知られるアウディだが、ブランド力という意味では低迷期も存在した。その源流を辿れば戦前の超高級車として知られたホルヒ、あるいはアウトウニオン時代のグランプリカーといった数々の名車に行き当たるアウディだが、戦後は持ち前の技術力や独自のキャラクターをアピールできない時代も存在した。

1994年登場のRS2アバントは直列5気筒ターボ(排気量は2.2L)にクワトロ、そしてワゴンボディというアウディの独自性を網羅した1台だった。現在のRSモデルは、ここを起点に順調に選択肢を拡大している。

初代クワトロは、そんなアウディがプレミアムブランドとして復権を果たす起爆剤となった。当時のアウディで指揮を執ったのは、のちにフォルクスワーゲン・グループの総帥となるフェルディナンド・ピエヒ。初代クワトロはピエヒの時代に生まれた最初期の作品だが、以降もアウディはエアロボディ(アウディ100)を筆頭としたインパクトのある、誰にでもわかりやすい技術で先進性をアピール。プレミアムブランドとしての認知度で先行していたメルセデスやBMWをキャッチアップする道を歩むことになった。
ブランド力の確立、という意味では1994年デビューのRS2アバントで高性能ロードカー市場に参入した効果も大きい。それまではメルセデスのAMG、BMWのMに相当するモデルを持たなかったアウディが持てるリソースのすべてを投じたRS2アバントは、全天候型の万能スポーツモデルとして独自のポジションを確立。いまやAMGもMも4WD化に熱心だが、アウディはすでに前世紀から現代的高性能ロードカーのフォーマットを作り上げ、それを武器にここでも見事なキャッチアップを成し遂げているわけだ。

日本でも今年の発売が予告されているe-tron GTだが、それをベースとしたRSモデル初のピュアEVもプロトタイプが公開済み。元々4WDと電気駆動は親和性の高い組み合わせだが、その出来映えにも期待が高まる。

そんなクワトロとRSだが、もちろん先進的なのはイメージだけではない。現在に至るクワトロシステムは、その過程でも常に技術レベルは最先端を維持、それはRSモデルにも反映されてきた。また、デビューを控えるRS初のピュアEVからも先取の姿勢は鮮明。アウディにおけるクワトロとRSは、もはやその先進性を象徴する言葉へと昇華されているのである。

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アウディジャパン 0120-598-106

photo=アウディジャパン/Audi Japan ルボラン2021年3月号別冊付録より転載
小野泰治

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