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【海外試乗】「プジョー308」欧州Cセグメントの雄が フルモデルチェンジ! 新世代フレンチ ライオンの 咆哮を聞け!

2代目が欧州COTYを手始めに商業的にも成功したからこそ、第3世代308が正常進化型モデルチェンジに徹するのは予想できた。実車のデザインはオンライン画像で眺めるよりもずっと力強く、エッジのひとつひとつが空力的で、香り立つような存在感を放っていた。しかも走らせると、同クラスのライバル勢を圧倒する完成度の高さをみせた。

PHEV版が最良と躊躇なくいえる

新型308のモデルチェンジで正常進化がマストだったことは想像に難しくない。だが「全方位で最適化といった、生ぬるい手法は最初からプジョーとして採らなかった」とプロダクト・マネージャーのヴェラ・シャルパンティエ女史は笑う。効率と最適化が当たり前なら、どこから着手したか?

EV走行の最大レンジは59km。満充電からおもにハイブリッドモードで140㎞ほど回生を意識せず走っても、残量は40%ほどあった。

答えはクアルコムがハードウェアを、ハーマンがOSを担当したインフォテイメントシステムだ。iコネクト・アドバンストと呼ばれるそれは、タッチスクリーン上と3D表示のメーターパネル内に、必要な機能をパーソナライズ設定できる。

アルカンターラやナッパレザー、アルミなど素材感豊かな内装。ADAS機能はステアリング左側に、メディア機能は同右側に集約されている。

その要はヴァーチャルiトグルというタスクローンチャーで、単なるショートカットキーでなく特定の電話番号にかけたり好みのエアコン温度をメモリーしたり、各アプリ機能の内部へ一発アクセスできる。しかも一段下には物理的トグルスイッチがあり、走行中に優先度の高い機能が配される。いわばデジタルとフィジカルを巧みに組み合わせ、音声コマンド認識やメーターパネル内のナビ表示など日本語にもフル機能で対応予定。現時点で最良のインフォテイメントのひとつといえる。

前席は人間工学に基づく設計と調節幅の広さによりドイツのAGR認証を得ている。先代でネックだった後席の足元も広くなった。

かくしてエルゴノミーの精度を高めたiコクピットからダッシュボード全体を見渡すと、進化と洗練ぶりが著しい。ドリンクホルダーのスライド式リッドや、センターコンソール兼アームレストが左右2分割の観音開きである点も、実にフランス車らしいデリカシーといえる。またAQSという車内換気と空気の質を自動的にクリーンに保つ機能も新たに備わる。

SWには2732mmというハッチより57mm長いホイールベースが与えられ、キャラ的に1.5Lディーゼル+EAT8の組み合わせがベストといえる。

先代から受け継ぐEMP2プラットフォームは、新しい308ではPHEV化に伴いEMP2エヴォ3へ進化。具体的にホイールベースは55mm延長、構造材の接着面を増大させ剛性を高め、外板を構造に近づけるエクステリアとした。ハッチバックの全長4367mmは、先代の国内認証値と比べ+92mm、全幅1852mmは+47mm、全高1441mmは29mm低い。つまり長く幅広く低いが、広がった分はドアハンドルがおもで、前/後トレッドは4mmと1mm減。Cd値は0.28に収まった。

1.6L直4ターボ180ps+電気モーター110psをe-EAT8に組み合わせた前輪駆動。トルクはシステム総計360Nmを発生。

ハイブリッド225ps仕様を走らせて早々、高速道路で風切り音の少なさ、車内の静粛性の高さに舌を巻いた。ガソリンとディーゼルの各130ps仕様も試したが、端的にいってパワフルでシャープなPHEVが頭ひとつ抜きん出る。12.4kWhのリチウムイオンバッテリーを後車軸の真上に載せた重量配分とマルチリンク式リアサスがすこぶるいい。

ホイール&タイヤは17インチか18インチの2択で、225/40R18か225/45R17、いずれもミシュラン・プライマシー4が組み合わされる。

乗り心地が一貫してしなやかで、ロール量は多くないが、前車軸の剛性と踏ん張りがステアリングと旋回フィールにきっちり反映される。荷重がのった時のみならず、前後左右に移る過渡期のフィールが抜群にリニアで質が高いのだ。軽快さとトルクのバランス感ならディーゼル、よりアジャイルさを求めればガソリンに軍配が上がる。SWに乗り換えると挙動はやや穏やかだが、むしろハッチバックとの差が小さいことが印象に残った。

ハイブリッドはハッチバックもSWもICE版より荷室容量が約1割減となるが、フラットなフロアはキープ。後席は3分割可倒式だ。

実際、308がドイツのライバル勢を圧倒するのは、GTというハイエンド仕様の完成度のみか、アリュール仕様のICE版もチープさを感じさせない底力、ミニマム・ラインの高さだ。ポリティカリー・コレクトなクルマは増えたが、インテリジェンス面でも静的にも動的にも「本能的に正しい」、308はそんな一台だった。

【Specification】プジョー308 ハイブリッド225e-EAT8[SWハイブリッド180e-EAT8]

■全長×全幅×全高=4367×1859×1441[4636×1852×1444]mm
■ホイールベース=2675[2732]mm
■トレッド=前1559、後1554mm
■車両重量=-[1659kg]
■エンジン型式/種類=-/直4DOHC16V
■総排気量=1598cc
■最高出力=182ps(132kW)/6000rpm[150ps(110kW)/6000rpm]
■最大トルク=250Nm(25.5kg-m)/1750rpm[250Nm(25.5kg-m)/1750rpm]
■モーター最高出力=110ps(80kW)/2500rpm[110ps(80kW)/2500rpm]
■モーター最大トルク=320-500Nm(32.6-51.0kg-m)/2500rpm[320-500Nm(32.6-51.0kg-m)/2500rpm]
■燃料タンク容量=40L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後ディスク
■タイヤ(ホイール)=前225/40R18、後225/40R18[前225/45R17、後225/45R17]
※表中はすべて欧州仕様値

この記事を書いた人

南陽一浩

1971年生まれ、静岡県出身、慶應義塾大学卒。ネコ・パブリッシング勤務を経てフリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・男性ファッション・旅行等の分野において、おもに日仏の男性誌や専門誌へ寄稿し、企業や美術館のリサーチやコーディネイト通訳も手がける。2014年に帰国して活動の場を東京に移し、雑誌全般とウェブ媒体に試乗記やコラム、紀行文等を寄稿中。2020年よりAJAJの新米会員。

南陽一浩

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