名称を「モビリティリゾートもてぎ」へと変更
え!? 25年間ありがとうって、まさか…。「ツインリングもてぎ」じゃなくなると聞いて、ビックリした。よく聞いてみると、なくなるのではなく、施設の名称が変わるのだと知ってホッとした。 1997年開業の「ツインリンクもてぎ」は2022年3月から「モビリティリゾートもてぎ」として生まれ変わるというのだ。
クルマやバイクに関心の高い人ならば、栃木県と茨城県の県境の中山間地域にある、ホンダ直系の大型施設「ツインリンクもてぎ」という名称を知らない人はいないはずだ。それにしても、なぜこのタイミングで施設名称を変える必要があるのか? その実態を知るため、コンちゃんと一緒に「ツインリンクもてぎ」へ出かけた。
筆者としては勝手知ったる、茂木町への道だが、コンちゃんにとっては常磐自動車道の水戸ICを降りて茨城県内を走り抜けて栃木を目指すのは初体験だ。南ゲートで、モビリティランド・ツインリンクもてぎ・広報宣伝催事課の上野一郎さんと久しぶりに再開した。
思い出話はさておき、まず訪れたのは「森と星空のキャンプヴィレッジ」だ。その丘の上に2021年7月オープンしたロータステントエリアを覗いてみた。ロータス(蓮:はす)とは、テントの形状を示し、玉ねぎ型とも呼ばれる大型テントだ。
ロータステントは常時設営されていて、内部は横一列に4つのベッドが並ぶ。テント生地はかなりしっかりしているが、適度に採光があることで上質な空間という雰囲気を醸し出している。ロータステントにはワイドバージョンもあり、さらに室内空間が大きい。こちらは1日3組限定の特別スペースとなる。ロータステントエリアの隣側、山の斜面に沿ったところには、自宅から持ち込んだテントを張る林間サイトも用意されている。
いったん丘を下ると、ベルテントエリアがあり、クルマをテントのすぐ隣に止めて、ベルテントとタープを組みあせた”森のテラス”でバーベキューが楽しそうだ。
すでにお伝えした通り、房総半島に自前キャンプ施設「キョンちゃんスタジオ・サイトA」を開設した身としては、こうしたキャンプ場の細かいところに目がいってしまう。ついトイレを覗いてみたが、そこは森や星空をモチーフとした演出があり清潔感たっぷりだった。
上野さんによると、ツインリンクもてぎがグランピングを始めたのは今(2021年)から5年前の2016年だったという。「当時、グランピングは全国で5カ所程度しかありませんでしたが、森や自然の中での楽しみを全面に押し出すために、導入を決めました」と事業実施に向けた経緯を教えくれた。いまではグランピングは全国で200数十カ所まで増えていると言われるほどのブームとなっている。
そうした中でも、森と夜空のキャンプヴィレッジのグランピングは超人気スポットで、週末はかなり先まで予約で一杯の状況だ。また、以前は12月から3月までの冬季はこのエリアは休止していたのだが、ユーザーからの熱い要望があり冬季も開業する方針転換をした。寒さ対策として、テント内には電気カーペットなど様々な暖房設備を準備している。そのほか、このエリアにはエアコン・ヒーター完備のログキャビンもある。
次は、ハローウッズに出かけてみた。「自然とふれあいながら、遊ぶ・学ぶ。森の中で、『溢れる生命(いのち)』を見つけよう」をテーマに掲げる場である。里山をベースとして、様々な非動力系のアクティビティがある。
例えば、”キツツキのテラス”、”風彩のデッキ”、”みどりぐるぐる広場”、”森のポーディアム”、”トカゲの岩登り”、そして”ハッチョウトンボの棚田”など。こうした楽しいネーミングも、ツインリンクもてぎの社員の皆さん考案したものだという。ここへ来て楽しむ人たちが、心とカラダを自然のなかで開放できる場を作りたいという、社員一人ひとりの思いが施設の各所で感じられる。
さらに、子どもから大人まで大注目のアクティビティが、森のジップライン「ムササビ」と、メガジップライン「つばめ」だ。ワイヤーロープにぶら下がって滑空するジップラインは全国各地にあるが、ハーローウッズでは”森の空中散歩”と銘打つ楽しい空間。さらに、ガイドさんが一緒に自然の中を体験するリード役を務めてくれるのが特長だ。
ハローウッズは2000年開業と歴史は古いのだが、昨今はキャンプブームや、SDGs(持続的な開発目標)を重視する社会環境の変化などから、ホンダ本社を含めてハローウッズへの関心が高まっており、ツインリングもてぎにおける、モータースポーツと自然を楽しむ場との融合について、改めて考えていくことになったという。
ツインリングもてぎ、および鈴鹿サーキットを運営する、モビリティランドも2022年3月にホンダモビリティランドと社名が変わる。これと同時に、この地は「モビリティリゾートもてぎ」となるのだ。
ありがとう、オーバルコース
最後に、モータースポーツ面で、ツインリンクもてぎのこれまでを振り返っておきたい。
いま(2021年)から24年前となる1997年に関東地方では最大級のモータースポーツ関連施設として誕生し、海外レースでは、1998年から2011年までは、アメリカのインディアナポリス500マイルレースを軸とするインディカーレースの公式シリーズ戦としてインディジャパンが開催された。
二輪の世界最高峰レースであるMOTO GP 日本グランプリが1999年と、2004年から2019年まで開催(2020年、2021年はコロナ禍で未開催)されてきた。国内レースでは、スーパーGT、全日本スーパーフォーミュラ選手権、全日本ロードレース選手権、全日本カート選手権など、日本トップクラスのレーサーやライダーの妙技が楽しめる場である。そのほか、アマチュアレースやスポーツ走行など、ユーザー自らが国際格式のレーシングコースを堪能できる。
筆者は、ツインリンクもてぎの建設の構想段階だった90年代前半、米NASCARとの関係で米ノースキャロライナ州シャーロットに居住していた。そこにツインリンクもてぎ関係者ら視察に訪れ、日本でのオーバルレースの可能性について意見交換した。
その後、日本テレビのインディジャパン中継番組では出演者のひとりとして、ツインリンクもてぎの魅力を視聴者の皆さんに伝えようと努めてきた。だが残念なことに、オーバルレースに代表されるアメリカンモータースポーツは、F1やMOTO GPのようなヨーロッパを起源とするモータースポーツにように、日本では多くの人に受け入れてもらうことができなかった。また、14年間に渡り解説者として参加した日テレG+NASCARの中継番組も2019年で幕を下ろした。
そうした中、ロードコースとオーバルコースが立体交差するという、ツインリンク(2重のサーキット)として使命は、今回の施設名称変更によって”ひと段落”することになる。いつの世も、時代は移り変わるものだと、なんだかしみじみ。
次回は、もっとじっくり時間をとって、コンちゃんと一緒に新生「モビリティリゾートもてぎ」の森の中で様々な体験をしてみたい。
この記事を書いた人
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。