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気分は『グリーン ブック』!いにしえのジョーハン製プラモ「1962年型キャデラック60スペシャル」を味わう【モデルカーズ】

収束期に入ったテールフィンと四角いボディが特徴

フィフティーズのイコン的存在となった1959年型の後、キャデラックのテールフィンは年々小さく、低くなっていった。1959年型のマイチェン版である1960年型を挟み、1961年型で大きくボディデザインを変更。フルモデルチェンジという訳ではないが、ホイールベースも若干短縮され129.5インチ(3289mm)となった。新たなスタイリングは同年型のGM他車に通ずる、低く、シャープでスクエアなもの。下側を丸めたAピラーはGMの全ディビジョン共通で、ボディ下側に付く逆さまのテールフィン(ボート船底の尾ビレにちなんで“スケグ・フィン”と呼ばれる)は、オールズモビルも同様の処理を採用していた。

1962年型はこの細部を変更したマイナーチェンジ版で、フロント周りでは前年は円形だったパーキングランプが四角くなり、グリルそのものも平面的になってスクエアな印象を強調。テールランプは前年の横長の楕円形から縦長の四角形となり、その分テールフィンが僅かに低くなっている。またこのテールはこの年からホワイトレンズ(点灯時には赤く光る)となり、1960年代を通じてキャデラックの特徴となった。ラインナップは普及版のシリーズ62、そのサブシリーズである豪華版のシリーズ62デ・ヴィル、高価な2ドア・スペシャリティのエルドラド、4ドア最上級モデルのフリートウッド60スペシャル、そしてリムジンのフリートウッド75(ホイールベース149.8インチ=3805mm)という構成。

ボディ形式は、シリーズ62およびデ・ヴィルには4ドア・セダン(実際はピラーレス・ハードトップ)が6ライト(オペラウィンドウあり)と4ライトの2種類あり、取り回しを重視してリアデッキを7インチ短縮した4ライト・セダンも用意された。これは前年のデ・ヴィルからタウン・セダンの名で導入されたもので、1962年ではシリーズ62にも同名で追加、デ・ヴィル版はパーク・アヴェニューと名を変えている。2ドア・ハードトップはシリーズ62、デ・ヴィルおよびエルドラドに、コンバーチブルはシリーズ62とエルドラドに設定。60スペシャルは4ドア・セダン(4ライト)のみで、小さめのリアウィンドウ、リアピラーの斜線のアクセント、そして格子パターンのリアグリルなどで識別される。エンジンはいずれにも390-cid(6.4L、325hp)が搭載された。

さて、ここでご覧頂いているのは、この1962年型キャデラックのプラモデルを、今から3年ほど前に映画『グリーン ブック』に触発されて制作したものである。同作は2018年制作の、黒人ピアニストとイタリア系用心棒がアメリカ南部を演奏旅行する実話を元にしたロードムービーで、アカデミー賞作品賞などを受賞して話題となった。1962年が舞台なので、主役2人が乗るクルマには1962年型キャデラックが選ばれ、合計3台が使用されたという。具体的にはシリーズ62デ・ヴィルの4ウィンドウ・セダンと思われるが、インパクトのあるボディカラーは映画のイメージに合わせてアレンジされた色だそうだ。

映画に合わせた改造はせず、キットを尊重
作例に使用したのはジョーハン(JO-HAN)製1/25キット(1962年製 No.4862)。これまで再販はなく、使用したのはまさに1962年当時のものだ。当時の箱は同年式他車のキットと共通のデザインが多く、この1962年型では左上にのみ内容に合わせた線画があしらわれている。よく見るとフリートウッドでないのがご愛敬。エンジンレスのプロポーションモデルで、おそらくプロモーショナルモデル(実車の販促グッズ)をキットにしたものだ。1961年型の金型を改修してボディやインテリア等を更新、シャシーはほぼ流用だが、ボディとの固定ピン部分が一部変更されている。スケールはやや小さく厳密には1/26で、外装のオプションパーツおよびカスタムデカールが付属した。

キットは60スペシャルなのでルーフ形状が異なるが、作例ではそのままとしてキット本来の姿を尊重。「ジョーハンのキャデラックは素組みがイチバン。決していじってはいけないとさえ思う」と作者は語る。前後グリル/バンパーなどメッキパーツは経年劣化で剥げていたので、剥離し再メッキ加工。実車専用色のうち劇中車に近い色は、Turquoise Metallic(コード29)とNeptune Blue Metallic(94)の2つで、前者をやや濃くカスタムして塗り直したと思われる。作例では純正色ターコイズをカラーチップにほぼ忠実に合わせて塗っている。クレオスの旧C8シルバーをベースにアクセルSのブルーとグリーンで基本色を作り、極微量のレッドを追加。60スペシャルのリア窓枠とCピラーの飾りはメッキではない。リアバンパーとガーニッシュの間はボディパネルなので注意する。

ホイールベースやタイヤの位置関係も特に問題はない。トレッドも、タイヤがフェンダーからやや奥まった位置にするのが良いだろう。ナンバープレートは劇中車に合わせたが、これは実車のレプリカプレートを作るサイトを利用。州と年式を合わせて文字を自由に組み合わせることが可能で、確認画面の画像をダウンロードして縮小プリント。タイヤの接地面は少し削っている。タイヤ/ホイールを固定して完成後、粗いペーパーヤスリの上に完成したモデルを乗せて押さえながら、ペーパーの方を動かして4個のタイヤの接地部分を均等に削っていくのだ。低いアングルで見ると実車のような重量感が味わえる。

一体成型のシャシーパネル下面は、せっかくのXフレームのモールドを生かすべく塗り分けた。窓枠やメッキールはベアメタルシートを使用、サイドミラーはキットのものを使ったが、これは1962年型シリーズの共通パーツで、実際の形状とは異なる。ドアハンドルはボディと一体のまま、手が入る部分を開口してある。インテリアはボディカラーを基本に、シルバーを加えて明るくしたものと、黒を加えて濃くしたものを使って塗り分けた。ダッシュボードのディテールは筆描きで再現、シフトレバーとターンシグナルレバーを追加している。フロントウィンドウ上部のボカシにはクレオスのディープクリアブルーを使用した。

作例制作=畔蒜幸雄/フォト=服部佳洋 modelcars vol.277より再構成のうえ転載

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