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トイレットペーパーも精密再現!車内が最大の見どころの「シボレー・ミニモーターホーム」AMT製プラモ【モデルカーズ】

シボレーG30をベースにしたキャンパー

シボレーの商用車ラインナップのうち、1ボックス~1.25ボックス的なボディ形状のバンは、コルベアをベースとしたコルバン95/グリーンブライア・バンがその嚆矢である。コルバンの名はパネルバン(ボディ後半にサイドウィンドウを持たないもの)、グリーンブライアは窓のあるものを指した。また、このフォワードコントロール・タイプ(いわゆるキャブオーバー。エンジンは運転席下ではなくリアだが)のコルベアにはトラックもあり、これらを総称してコルベア95と呼ぶ。
この商品企画は、コルベアがビートルに刺激されたものであったのと同様に、フォルクスワーゲン・タイプ2からインスパイアされたものであろう。フォードではこのコルベア95シリーズに対抗する意味で、ファルコン・ベースの1ボックス・バンであるエコノラインを投入。コルベア95はエコノラインと比べると割高だったこともあり販売は奮わず、今度は逆にシボレーの方が競合車種としてシボレー・バンを発売する。こちらはシェビーⅡをベースとしており、運転席下にエンジンを置くレイアウトを採用していた。

このバンは1964年型でのデビューであったが、1967年型ではボディサイズの拡大を伴う大規模なマイナーチェンジを実施、そして1971年型でフルモデルチェンジを行っている。ここにおいて、シボレー・バン(Gシリーズと呼ばれる)は短いノーズを持つセミキャブオーバーへとレイアウトを変更、このモデルは以後25年間にわたって生産されるロングライフ・モデルとなったのであった。なお、兄弟車のGMC仕様にはバンデューラという名が与えられている(先代ではハンディバン)。

シボレー・バンは積載量で型式名が変わり、1/2トン積みはG10、3/4トン積みはG20、1トン積みはG30。ホイールベースは110インチ(2794mm)と125インチ(3175mm)の2種類があり、キャビンより後ろを異なる架装とする用途(救急車など)には146インチ(3708mm)も用意された。エンジンはG10からG30まで直6は250-cid(4.1L)で共通、V8はG10用が307-cid(5L)、G20/30用が350-cid(5.7L)となる。

後にAチーム・バンにもなったキットのルーツがコレ
さて、ここでご覧頂いているのは、このシボレー・バン(G30)のAMT製1/25スケール・プラモデルの完成品である。このキットはいくつかのバリエーションがあり、最近も再販されているが、この作例はミニ・モーターホーム仕様(品番T517)を制作したものだ。おそらくこれとレスキュー・バン仕様(T517)がAMT製シェビー・バンの最初のものであろう。以前にご紹介したシボレーC30の記事でも述べたように、この頃のシボレーでは、キャンパーとして架装済みの車両をディーラーで販売するようになっており、そのカタログも用意されていた。キットの箱に描かれているのと同じオープンロードの架装が、1971年版カタログにも掲載されている。キットでは「モーターホーム」と銘打たれているのが気になる所。キャンパーとの違いは、一定期間その車両を住処として生活できる点であるという(諸説あり)が、その観点からこの車両はモーターホームとは呼べなさそうだ。

オープンロード・インダストリーという架装メーカーについては、詳しいところは不明である。カリフォルニア州レドンドビーチに本社を置き1960年代後半から1970年代前半にかけて活発に活動していたこと、ウィネベーゴのようにオリジナル・ボディの架装まで手掛けていたこと(コロネードというネーミングがある)など以外は、よく分からない。1970年代半ばに活動を停止してしまったものと思われる。

さて、キットはハイルーフ部分が別パーツで付属しており、ボディのルーフ部分を切り離してこれを載せる構造だ。ボディは実車の感じを良く捉えて造形されている。左側サイドパネル(ウィンドウ部分)もボディと別部品で、窓開きと窓無しの2種類が付属。キットは窓無しを選んだが、キッチンウィンドウのみ開口した(開けたい場合は自分で当該部を切り抜く)。ルーフ部分を切除する作業の前に、このサイドパネルをがっちりと接着しておく。パネルは接着面が少し合わず、隙間ができるので対処が必要だ。

ルーフの切除はボディ内側にカットラインがあるが、少し小さめにカットし、キャンパールーフとの合いを見ながらヤスリで調整する。作例ではキャンパールーフを着脱可能にするため、ガイド兼固定部をプラ板で作り接着した。キャンパールーフはフロントとサイドパネル(後半)が別パーツだが合いが良くない。サイドは隙間がひどく歪みもあったのでプラ板から作り直した。この側面の窓だが、平行四辺形の向きがパーツと箱絵で逆だ。正解は箱絵だが作例ではパーツに合わせ、モールドされていない窓枠も追加した。

ボディカラーは1971年のシボレー・コマーシャルカラーよりチョイスした。上は「FROST WHITE」、クレオス Mr.カラーGX1クールホワイトとC69グランプリホワイトの混色。下は「DARK BLUE」、GX5スージーブルーにGX2ウイノーブラックを混ぜている。シャシーおよび足周りは特に問題となるところはないが、車高が少し高い感じがしたのでリアを落とし、車体がほぼ水平となるようにフロント側も調整した。エンジンはかなり奥まった感じとなるので、ディテールアップしても意味がなかったようだ。

インテリアはこのキットの見せ場と言える部分だ。トイレやレンジ、シンク等ひと通りのパーツがあり、表現も良い。ベッドも後端部分の上部に板状の物が付くが、どう見ても小さいので今回は省略した。インテリアは茶系等のカラーリングにしてみたが、この辺は個人の好みだ。トイレやオーブン周りのキャビネットは木目がモールドで表現されているので、ベースにC44タンを塗装、C43ウッドブラウンで木目を描き込み、C49クリアーオレンジ+C48クリアーイエローを上塗りすれば、ニスを塗った感じとなる。

トイレ左右の壁はボディ内側と接するラインが全く合わないので、プラ板で作り直している。トイレットペーパーもパーツが付属するが、こんな部品が用意されているキットはこれくらいだろう。作例ではティッシュペーパーを貼ってディテールアップした。フロント両シート後ろの小物(丸めた布と工具箱)は、実はミス隠し用に配置した。フロアを後年のAチーム・バン仕様から流用したのだが、本来なら塞ぐべきだった部品取り付け穴がそのままなのに組み立て最終段階で気がつき、苦肉の策としてこれらを追加したのである。

カーテンはパーツとして用意されているが、あまり使いたくなるパーツではなかったので、作例では省略した。ウィンドウはサイドのものが使用不能状態だったのでPET板に置き換え。ボディ左側にはキッチンの排気口やプロパンガスのバルブも付属する。アメリカンカープラモとしては珍しくワイパーが別パーツだ。このワイパーが付くカウルトップ部分が折れやすいためか、後のバージョンではエンジンフードが塞がれてしまった。

作例制作=周東光広/フォト=羽田 洋 modelcars vol.196より再構成のうえ転載

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