モデルカーズ

羽をもがれたチキン!?往年のキットも丁寧な作業でこの仕上がり!「1962年型クライスラー300」ジョーハン製プラモ【モデルカーズ】

レターカーからノン・レターの300へ

クライスラー(メーカーとして)が送り出してきた名車といえば、ダッジのチャージャーやチャレンジャー、プリマスのフューリーやロードランナーなどの名前がまず挙がるだろう。ではブランドとしてのクライスラーにおける名車は? と問われれば、1950~1960年代のクライスラー300レターカーがその答えとなるはずである。

【画像17枚】美しく仕上げられた1962年型300の全体像はコチラ!

「300」という名は、1955年型クライスラーから現れたものだ。クライスラーC-300――その名の通り、最高出力300hpを発揮するエンジンを載せた高性能モデル。搭載されたのは、クライスラー自慢のHEMIヘッド(半球形燃焼室)を持つ331-cid(5.4L)、ファイアーパワーV8。C-300はレース出場を最初から考慮したモデルであり、同年のNASCARグランナショナルにて40戦中23勝を挙げるなどの圧倒的な強さを見せつけた。

このC-300は翌1956年型で300Bとなり、エンジン出力は340hpに達した。300B以降、末尾のアルファベットはC、D、E、F……と毎年変わっていくことになるが、これが”レターカー”の通称の由来だ。シリーズ中一番の傑作車として名高い1957年型300Cではエンジンは392-cid(6.4L)に拡大され、最高出力は375hpまでアップしたが(390hp仕様もオプションで用意)、ここからレースへの出場はなくなった。これは、NASCARのルール変更への抗議とも言われている。

翌1958年型の300DではエンジンがHEMIでなくなったが、以後もレターカー・シリーズはクライスラー随一の高性能モデルとして続いていく。その地位に若干の変化が訪れたのは1962年型でのこと。この年のレターカーは300Hであるが、アルファベットのつかない只の300(300スポーツ)がラインナップされるようになったのである。この”ノン・レター”の300は実質的には、クライスラーの中級モデルであるウィンザーがその名を変えたものであった。

300Hに用意された技術的なアドバンテージは”クロス・ラム”と呼ばれるインダクションシステム(オプション)だが、これは1960年型の300Fから導入されたもの。キャブレターとエアクリーナーをエンジンの上ではなく左右に置き、長いチューブパイプで繋ぐ形だが、これにより、標準仕様300Hの413-cid(6.8L)では380hpである最高出力が、405hpへと跳ね上がっている。300スポーツが搭載するのは383‐cid(6.3L、305hp)であったが、300Hの標準仕様と同じ413もオプションで選ぶことができた。

この300H/300スポーツをはじめとして、ニューヨーカーやニューポートなど1962年型クライスラーのボディスタイルは、前半部は1961年型ほぼそのままのスタイルだった。特徴的な斜めのヘッドライトも前年から受け継いでいたが、巨大なテールフィンがそぎ落とされたのが大きな違いである。この変更に、デザイン担当副社長のヴァージル・エクスナーは「plucked chiken(羽をもがれたチキン)」と嘆いたとも言われるが、市場の反応は好評だったようで、販売台数は前年比で33.7%アップしたという。

的確なディテールアップでこの仕上がり!
1960年代前半のアメリカは、毎年各社プロモーショナルモデルを用意し、それをプラモデルに転用したキットが発売されるという状況にあったが、クライスラーも例にもれず、1962年型はジョーハンから300ハードトップの1/25スケール・キットがリリースされている(キットNo.4662)。これは1970年代に「USAオールディーズ」シリーズで再販され(C-4062)、販売期間が長かったせいか、絶版キットとしては比較的入手しやすい存在だ。ここでお目にかけている作品は、このキットを組み立てたものである。

この300ハードトップが300Hか300スポーツか、実車でも見た目上の違いが少ないのでなかなか判断の付きづらいところだが、ホイールからして300スポーツのようだ。300スポーツでも、300Hとほぼ同様の前後バケットシートや413”ゴールデンライオン”エンジンがオプションで選べるが、これらを装着した個体の再現ということになる。

作例では、ライトレンズをクリアーパーツに置き換え、グリルをくり抜いてメッシュを張るなどのディテールアップを行った。エンジン回りにも配管や配線を追加しリアリティを向上、1960年代の金型によるキットとは思えないほどの密度感を見せている。ボディカラーは実車の”キャラメル”という色を再現。インテリアも丁寧に仕上げられており、ステアリングホイールを実車同様にクリアー化、ドア内張りにレギュレーターを再現、フロアマットも追加するなどして、素晴らしい効果を上げている。

作例制作=ダッズ松本/フォト=羽田 洋 modelcars vol.122より再構成のうえ転載

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