遠藤イヅルが自身のイラストともに1980年代以降の趣味車、いわゆる”ヤングタイマー”なクルマを振り返るという『ボクらのヤングタイマー列伝』です。前回の『ファミリアアスティナ』に続き、『ランティス』をピックアップしますヨ!
ボクらのヤングタイマー列伝第33回『マツダ・ファミリアアスティナ』の記事はコチラから
ランティスといえばクーペの存在。そのスタイルは今のマツダ3に通じるほどのかっこよさ!
前回はアクセラの前身ファミリアに存在したファミリアアスティナをお送りしました。今回取り上げるのは、前回も少しだけ触れた『マツダ・ランティス』です。
アスティナは海外では323Fと呼ばれていましたが、ランティスクーペも同じく323Fでしたので、実質的な後継モデルだったことが伺えます。とはいえ、ファミリア系の3シリーズを名乗るも、ランティスはファミリアの兄弟車でもなんでもなく、ファミリアとクロノスの間を埋めるべく登場した新規開発車だったのです。クロノスはカペラからモデルチェンジされた際に3ナンバーとなってエンジンもV6が積まれるなど上級移行していましたので、ランティスにはカペラ的なサイズのセダンも用意されました。
だけど、もしランティスがセダンだけだったら、今なお多くの人に”ランティス好きだった!”という印象を持たせることはできなかったはず。そう、もうお分かりですね。ランティスといえばクーペの存在。クーペと言っても実際は5ドアハッチバックなのですが、そのスタイルは今のマツダ3に通じるほどのかっこよさ! 切れ上がった短いテール、美しい弧を描くルーフなどは今でも旧さを感じさせません。それでいてランティスはホイールベースが長いため、セダンのみならずクーペも居住性が高め。しかもランティスの2リッターは名作の誉れ高いV6でしたので、スタイル抜群のハッチバックをV6のマニュアルミッションで乗る、なんていうツウな楽しみ方もありました。前述のセダンもこれまたユーノス500もかくや、というほどの美しいデザインの持ち主で、未だにランティスセダン愛好家がいるほどです。
ここまで褒めちぎっているだけのことはあって、本当にいいクルマでしたが、いいクルマだから売れるというわけではないのが悲しいところ(涙)。佳作ランティスもマツダ5チャンネル化失敗の影響を受け、1993年から1998年までという、一世代限りでその幕を閉じましてしまうのでした。
そうなると323Fの次はどうなったの?ということなのですが、323Fは再びファミリアの元に戻ります。あ! そうだよね、ファミリアには『ネオ』もあったよね!……ところが残念! ネオがあった8代目ファミリア(BH型)はほぼランティスの生産時期と被っているのです。結局323Fは”マツダ謹製ファミリア”としては最後の型になる、9代目(BJ型)の『Sワゴン』が襲名するのです。えー! アスティナ、ランティスクーペが築いた”4ドアクーペ”の系譜はどこに(涙)。でもこうしてみるとクルマの歴史って本当に面白いですよね。
この記事を書いた人
1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。