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シンプル!虚無!最廉価モデルの簡素な姿を味わう、レベル製プラモ「1957年型フォード・カスタム」【モデルカーズ】

何も足さない、何も引かない

往年のアメリカ車には、外観上のアイデンティティを大事にするブランドが多く、テールフィン全盛期においてもそうした風潮が見られた。フォードは1950年代の大半を通して円形のテールレンズを採用し、誰にもひと目で分かる特徴としていたが、その穏やかな姿は、フィフティーズ・アメリカンの明るく健康的なイメージを作り上げた存在のひとつと言えるのではないだろうか。

【画像22枚】虚空にスキャットが轟くような無のディテールを見る!

その円形テールが初めて使用されたのは1952年型からだが、このボディは1955年型で一新され、ラップアラウンド式フロントウィンドウやテールフィンを盛り込み、それまでの野暮ったさを捨てて当時のトレンドに沿ったものとなった。また、長年LヘッドだったV8エンジンは、1954年型でOHVへと漸くの進化を遂げている。そして、1957年型では完全なフルモデルチェンジを実施した。

そのスタイリングは低くスマートに生まれ変わったのが特徴で、全高は4インチ(102mm)低くなったとされた。これはフレームの形状を一新した成果と言ってよい。それまでの直線的なラダーフレームから、サイドレールを横方向に広げた形に変わったこのフレームは、ペリメーター型にほぼ近いと言えるもので、このためフロア位置を大きく下げることに成功した。さらにデフはプロペラシャフトからの接続位置を下側に大きくオフセットしたものとし、リアサスペンションのリーフスプリングはフレームの横(外側)に配置するなどしたのも、その設計に貢献している。

この新型シャシーの効果は著しく、前年型と比べて段違いにスタイリッシュとなったフォードであったが、同年にもっとエキサイティングなモデルチェンジを行ったプリマスやダッジの前に、その衝撃も小さくなってしまったのは残念であった。フォードのスタイリングは、ヘッドライト位置をフロントフェンダー上縁より一段下げ、またフロントグリル上から側面に回り込むプレスラインを巧みに入れるなどし、実際よりもさらに低くワイドなボディに見せるものとなっている。

ホイールベースは2種類あり、ワゴンを含む下級モデルは116インチ(2946mm)、上級モデルは118インチ(2997mm)で、全長では6.1インチ(155mm)の違いがあった。ラインナップは下からカスタム、カスタム300となり、この2つは短いボディ。上はフェアレーンとフェアレーン500で、こちらが長いボディとなる。なお、最上級モデルのフェアレーン500には電動ハードトップのコンバーチブル、スカイライナーがこの年から設定され、注目を集めた。スカイライナーはトップの収納機構を持つ都合からリアオーバーハングが延長されており、フェアレーン500からさらに3.1インチ(79mm)全長が長い。

このスカイライナーの他、1957年型フォードでは新しいボディタイプがひとつ加わった。116インチ・シャシーを使用したクーペ・ユーティリティ、日本でも通じる言い方をすればピックアップのランチェロがそれである。これはワゴンをベースに設計されたもので、カー・ピックアップという言い方でも呼ばれる。トリムレベルとしては、カスタムに相当するベーシックなモデルがランチェロ、フェアレーンに相当する豪華版モデルがカスタム・ランチェロとして設定されていた。

1957年型フォードのエンジン・ラインナップは、5種類のV8と1種類の直6で構成されるが、カスタムのエンジンは223-cidの直6(144hp)が標準で、オプションとして272-cid(190hp)と312-cid(245hp)の2種類のV8を用意。カスタム/カスタム300ともにボディ形式は2ドアと4ドアのセダンのみで、ハードトップやコンバーチブルの設定はない。カスタムにのみ、後席を省略して荷物スペースとしたビジネス・セダンが用意されていた。

シャシーの組み立てやデカールの貼り込みには少々コツが必要
1957年型フォードの1/25スケール・プラモデルと言えば、AMT製フェアレーン500がロングライフ・キットとして思い起こされるが、ここで採り上げるのは2012年にレベルから新金型でリリースされたキットで、最下級のカスタム(2ドア・セダン)である。こうした最廉価モデルがキット化されるのはもちろんレース仕様とすることが目的で、このキット自体もドラッグ仕様に組める他、バリエーションとしてNASCARバージョン(ファイアーボール・ロバーツ)が追って発売された。このほかポリス仕様も存在。ストックのキットは後にギャッサーとの2in1へと改められている。

ボディはプロポーション、ディテールともに素晴らしく、4ドアへの改造なども面白いのではと思われる。ヘッドライト周囲(ベゼル的な部分)は別部品だが、先に接着するとライトを入れられなくなるので我慢しておこう。テールレンズのリムも別部品だが、これは塗装前に接着した。一点だけ、リアウィンドウ窓枠のモールドがハッキリしないので、作例ではCピラー部分に凹ラインを彫り足してある。

シャシーはフレーム別体のリアルなもので、ボディ同様これも良く出来ている。作例では、仮組み時点で前後サスペンションとデフをフレームに固定、一体化してから黒く塗装した。車高・トレッドは全く問題ないが、前輪が軽くネガキャン気味になるので、サス部品のスピンドル部分上側にプラ帯を貼って調整。ただ、完成状態を見るとこれでもまだ不十分であったようだ。

なお、シャシー周りの組み立てでは、まず排気系をフレームに接着するよう指示されているが、このような組み方は到底不可能なので、フレームをフロアパネルに取り付ける際に排気系のパーツをテープでフレームへと仮止めしておき、フレームと同時にフロア側の取り付け穴に接着する方法を採った。また、このエキゾーストパイプはエンジン側のマニフォールドのパーツとうまく繋がらないので、マフラーより前のパイプを一部切り貼りして合わせている。

インテリアは下級グレードらしい簡素さが上手く表現されており、また、親切にも布地部分用の柄のデカールが付いていて好感が持てる。このデカールはシートへのフィッティングもまあまあだが、貼り付けにはマークソフターとフィッターが必須だ。ドア内張り用のデカールはレギュレーターなどの部分を切り抜く作業が必要となるので、できればこれらのモールドは別部品にして欲しかったところ(難しいのは承知であるが……)。

作例のボディカラーはアイボリー、具体的にはカラーコードEのCOLONIAL WHITEをチョイスしたが、「シンプルなグレードのモデルは制作もシンプルに」ということで(?)、缶スプレーを使用した。タミヤのTS-7レーシングホワイトであるが、色調がまさにドンピシャリである。ただし色ムラの出やすいカラーであり、作例も成功とは言い難い塗り上がりとなった。クリアーも缶スプレーを使用し、3回コートしてから研ぎ出して仕上げている。

作例制作=秦 正史/フォト=羽田 洋 modelcars vol.216より再構成のうえ転載

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