コラム

連載【桃田健史の突撃!キャンパーライフ「コンちゃんと一緒」】~「三菱デリカミニ」や「フィアット デュカド」の人気、貸別荘+アルトピアーノ蓼科で考える キャンパーの近未来~

上級グレードの販売比率が高いデリカミニ

キャンピングカーブームの風向きが変わってきたのか? 最近、そんなふうに感じる出来事が増えてきた。

例えば、三菱「デリカミニ」。実質的には「eK クロススペース」のビックマイナーチェンジといった商品なのだが……。1990年代にヒットした「デリカ スターワゴン」の外装デザインや、キャラクター「デリ丸」を筆頭とするテレビCMなどのマーケティング効果などが相まって、人気爆発。家族で楽しめる、デイキャンプカーといったイメージである。
1月の東京オートサロンでの初公開から5月25日の発売開始まで、受注台数は約1万6000台に達した。月販想定は2500台。このうち6割は4WDで、また上級グレードの比率が高い。
そうなると、カーナビほか、様々オプション装着で軽く250万円を超え、モノによっては経費や税金込みで300万円に到達してしまうほどの高級軽自動車である。人はなぜ、そこまでの対価を支払って「デリカミニ」を購入したいのか?
一般的な解釈は、コロナ禍でライフスタイルが変化したから。それより前、2010年代半ば頃からアウトドアブームだから。実際にアウトドアを体験しなくても、日常生活の中で「アウトドア・ギア(用品)」っぽいファッションを求めるようになったから、といったことを挙げられる。要するに、ユーザーがクルマに対する捉え方が多様になり、「デリカミニ」のように実質的には既存車のビックマイナーチェンジといったメーカーサイドの事情は気にせず、「可愛いから」「なんとなく気に入ったから」「子どもたちが欲しいと言っているから」といった、素直な感情が購買動機になっているように感じる。結果的に、新車の人気が上がればリセールバリューも上がり、中古での下取り価格が上がるので、ユーザーとしての持ち出し額は大きくならない。

そんな「デリカミニ」に対する感覚に近いのが、フィアット「デュカド」ではないだろうか。「ハイエース」ベースが主流というトレンドが長らく続きていた日本のキャンピングカー市場。その中で、より付加価値が高く、さらにメーカー保証がしっかりしているクルマとして、「デュカド」の需要が高まってきている。直近では、東京キャンピングカーショーの現地取材をして、「デュカド」と「デリカミニ」の共通点を感じた。

コンちゃんと新しい体験へ

そんなキャンピングカー市場だが、コンちゃんは相変わらず、ライトキャンパーとして、またリモートオフィスとして活躍している。最近、コンちゃんの利用方法として増えていたのが、貸別荘での楽しみ方だ。主に、長野県内を巡っている。
直近では、女神湖周辺を訪れた。ここは、中央高速と上信越自動車道の中間地点の山間部だ。冬場は氷点下10度以下になり、女神湖の湖面は厚い氷で覆われる。その上をクルマで走行する氷上体験ができることで有名で、日産本社広報部が主催する試乗取材会が毎年開催されている。女神湖周辺には、70年代から90年代にかけて別荘地が開拓された。これらをリノベーションした貸別荘がいくつかある。
ここから南側の茅野市北部では戸数が多い別荘地が多いが、それらに比べると女神湖周辺の別荘地は規模が小さめ。そうはいっても、ひと区画の敷地は300~400坪あり、ゆったりと過ごせる。レンタル価格も、このあたりのホテルに朝食・夕食付で泊まることを考えるとリーズナブルだ。食材は長野県内に店舗が多い、「デリシア」や「バロー」などのスーパーマーケット、または原村「自由農園」で新鮮な野菜などがお手軽価格で揃う。
貸別荘には一般家庭と比べるとかなり広いキッチンが完備されており、また調理器具や食器が揃っているので、料理づくりの時間もとても楽しい。
コンちゃんは、貸別荘の敷地内に停まっているが、気が向けばコンちゃんのスライドドアを両サイド開けて、さらにリアハッチを開けて、自然を感じながらコーヒーブレイクも楽しめる。キャンプ場でコンちゃんにカーサイドテントを張って過ごすこともいいが、貸別荘+コンちゃんという選択肢もアリである。

1年ぶりの「アルトピアーノ蓼科」

今回は、女神湖の貸別荘で2泊し、その間に安曇野市役所と塩尻市役所で、公共交通に関する取材と意見交換を行った。さらに、立山黒部アルペンルートの扇沢~黒部ダム間を走行する電気バス(EVバス)を合わせて取材。夕方に女神湖に戻ってゆったり過ごした。
そして3日目は、アルトピアーノ蓼科に移動した。1年ぶりの利用である。貸別荘に比べれば、ひと区画はこじんまりとしているし、また建屋もいわゆるミニハウス。しかし、この「キャンプっぽさ」が実に心地良い。
ディナーはいつものように付属機器を使っての屋外バーベキュー。大ぶりのエビや豚生姜焼きを新鮮なサニーレタスで捲いたりして…。夕暮れから夜にかけて、ほんのりとして明かりが灯り心が安らぐ。朝は、イングリッシュマフィンと様々な総菜を組み合わせて。
お風呂もいろいろ楽しめる。「アルトピアーノ蓼科」敷地内にある、一組1時間の貸し切り風呂では、内風呂とミニ露天風呂。さらに、クルマで5分程走ると、トヨタの保養所施設がベースである「テラス蓼科」のお風呂が楽しめる。今回は、「テラス蓼科」で朝風呂に入った。青空のもと、目の前には祐大な八ヶ岳が広がる絶景だ。
この周辺は、トヨタが生産側のトヨタ自工と、販売側のトヨタ自販に分かれていた時代に、トヨタ自販が主導してトヨタ販売店も含めた福利厚生施設として大々的に開発した地である。また、地元の蓼科山聖光寺(しょうこうじ)は、トヨタが京都から建造物を移送し、交通安全を祈願するお寺として1970年に開山した。毎年7月には、交通安全夏季台大法要が行われ、トヨタ本社幹部らが勢揃いする。
また、2019年には、豊田章男(現会長)が主導して、トヨタとの付き合いのある大手企業の社長らを招いて自動車産業の未来をざっくばらんに話し合う「タテシナ会議」も開催された。そんな蓼科にある、「アルトピアーノ蓼科」。現地関係者は「9月まで平日でも予約がいっぱい」というほどの大人気だ。
トヨタモビリティ神奈川で販売する、キャンパーシリーズ「アルトピアーノ」やSUVなどの新車購入者が1年に2回、無料で使用できるという、従来の自動車販売店の考え方を大きく超えた発想がしっかりとユーザーに届いているようだ。

こうしたユーザーからのリクエストに応じるため、「アルトピアーノ蓼科」では新たに5棟の増設工事が始まっている。来シーズン(3月)からは利用できるようだ。「アルトピアーノ蓼科」は冬季はお休みである。

さて、これから夏本番。コンちゃんと一緒に、どこに出かけようか? 現在こちら、鹿児島県屋久島でいろいろ思案中である。

フォト=桃田健史 K.Momota

この記事を書いた人

桃田健史

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。

桃田健史

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