シトロエン

待望のBEVモデルを引っ提げて、生まれ変わったこれが新しいC3だ!「シトロエンË-C3」

3世代目はグローバルで560万台、日本でも1万台以上のヒットを記録したC3。4世代目は純BEVの「Ë-C3」を筆頭に、MHEVのAT仕様、MTのみのICEガソリン仕様を擁する。オーストリアで試乗した第一報をお届けしよう。

新機軸を盛り込みつつも焦点がピタリと合っている

事前に伝え聞く限りでは、おそらくË-C4などと同じCMPプラットフォームかと思いきや、いい意味で予想を裏切られた。4世代目となる新しいC3はBEVネイティブのBセグスモールとして刷新されるにあたり、ステランティス・グループの「スマートカー・プラットフォーム」を採用。プロダクト・ディレクターのティエリ・ブランシャール氏によれば、パーツ点数を30%以上も削減しつつバッテリー重量配分を最適化するため設計されたまったくの新規プラットフォームで、従来のC3との共有コンポーネントはブレーキ関連くらいだとか。前作の成功レシピを繰り返す発想がそもそもなかった理由は、BEVがもはや高価格帯のエリート層にとどまるべきではないというロジックによる。フランス本国のCMを検索して見ていただきたいが、革命をモチーフにした動画は愉快だがなかなか衝撃的で、「ポップ」に加えて「大胆さ」を打ち出した4世代目のコンセプトをよく示している。

BEV以外には年末から生産される48VのMHEV+eDCT6速仕様が来年初夏に日本導入予定。写真のブルー・モンテカルロは往年の2CVにインスパイアされた外装色だ。

だからBEVとしてË-C3はきわめて真面目な一台といえる。44kWhのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを床下に収め、低重心化と前後重量配分を最適化できたからこそ、背の高いSUVルックと広い室内による快適性アップグレードを狙った、というのが大まかな成り立ちだ。FFとなる電動モーターのトルク/出力は120Nmと83kW(113ps)と控えめで、WLTPモード最大航続レンジは320kmを掲げている。それでいて上級トリムの「MAX」仕様でも本国価格は2万7800ユーロ。今の円安の換算レートでも500万円以下を実現しているのだ。

新たに「スマートカープラットフォーム」に基づいて設計され、最初から電動化されるように設計されたË-C3。44kWhのバッテリーを搭載し、約320kmの航続距離を実現。100 kW の直流(DC)急速充電により、26分で20~80%の充電可能となる。

画像ではゴツゴツして見えた外観デザインは、実車を目の前にするとずっと親しみやすい雰囲気で安堵感を覚える。前後とも太さの異なる3本のLEDクラスターをコの字型に組み合わせた新しいライトシグネチャーは、確かにスマート顔ではあるが、ハイテク感をトッピングした感じだ。

水平基調を強めた内装はポップでありながら広々感、タッチスクリーンは10.1インチのワイド型となる。

インテリアの特徴は、やはり従来比+10mmのクッション厚となるアドバンストコンフォートシートを採り入れたこと、ダッシュボードの最前方に配置されステアリングの上から視認するメータークラスター、そして2CVを思わせる収納棚のようなダッシュボードだろう。その下段はファブリック張りで、エアコンスイッチは質感の高いトグルスイッチだが、一方でドアパネルのアームサポートも柔らかい素材で覆われ、安っぽい雰囲気は一切ない。

前席はアドバンストコンフォートシート。

最近のシトロエンでお馴染みのトリガー式のシフトをDレンジに入れ、走り出す。街乗りメイン想定のBセグとして回生モードはデフォルトで強めのBモードなので、郊外路や高速道路ではシフト手前の「Cボタン」でコースティングまたはクルーズ側にできる。

後席シートはトランク側からも倒せる60:40分割式を採用。

当初、平滑な路面でステアリング中立付近の座りがやや定まらない感触だったが、むしろこれは1G近くの減衰初期で各輪のサスを自由に動かすためで、ヘンに修正せずとも直進安定性に難はない。コーナーで操舵すると明らかにコントロールの効いた速度でロールが始まり、柔らかだがキチンとした踏ん張り感を返してくる。ストローク量は決して多くないが、シトロエンらしいライド感だ。

5名乗車時の荷室容量は310Lを確保している。

最大のサプライズは、車両重量がICEよりどうしても嵩むBEVらしからぬ、乗り心地のよさだ。低速域やパッチ路面など足下が跳ねまわりそうな局面でも、しっとり落ち着いた上下動で大きく突き上げることがない。個人的に現行C3にはBXに近い乗り味を感じていたが、4世代目は電動化されてむしろ2CVを彷彿させる。原点を忘れていない、良質のスモールカーだった。

【SPECIFICATION】シトロエン Ë-C3(MAX)
■全長×全幅×全高=4015×1755×1567mm
■ホイールベース=2540mm
■トレッド=前:1500、後:1520mm
■モーター形式/種類=ー/交流同期電動機
■モーター最高出力=113ps(83kW)
■モーター最大トルク=120Nm(12.2kg-m)
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=44kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=320km
■サスペンション形式=前:マクファーソンストラット/コイル、後;トーションビーム/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:205/50R17

【SPECIFICATION】シトロエン C3(YOU)
■全長×全幅×全高=4015×1755×1567mm
■ホイールベース=2540mm
■トレッド=前:1500、後:1520mm
■エンジン形式/種類=直3DOHC12V+ターボ
■総排気量=1199cc
■最高出力=100ps(74kW)/5500rpm
■最大トルク=205Nm(20.9kg-m)/1750rpm
■サスペンション形式=前:マクファーソンストラット/コイル、後:トーションビーム/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:205/55R16

フォト=ステランティス ル・ボラン2024年8月号より転載

この記事を書いた人

南陽一浩

1971年生まれ、静岡県出身、慶應義塾大学卒。ネコ・パブリッシング勤務を経てフリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・男性ファッション・旅行等の分野において、おもに日仏の男性誌や専門誌へ寄稿し、企業や美術館のリサーチやコーディネイト通訳も手がける。2014年に帰国して活動の場を東京に移し、雑誌全般とウェブ媒体に試乗記やコラム、紀行文等を寄稿中。2020年よりAJAJの新米会員。

南陽一浩

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