2024年6月28日、国土交通省はアクセルとブレーキの踏み間違いを防止する安全装置の装着を義務付けることを発表しました。また、国土交通大臣は、「来年(2025年)6月に予定されている国際基準の発効に合わせて義務化の準備を進めていく」と発言しています。そこで気になるのが、踏み間違い防止装置を義務化したから絶対に安心なのかということです。今回は、踏み間違い防止装置をはじめとする安全機能や運転支援システムなどが装備されていれば安全なのか考察します。
踏み間違い防止装置があるから安心ではない!
踏み間違い防止装置をはじめとする安全機能や運転支援システムは、安全を保証するものではありません。あくまでも万が一のときの対処をサポートする機能でしかありません。また、どのような状況でも確実に機能するとは限らないため過信は禁物です。
これら各機能の限界については、各車の説明書やカタログに記載されているだけでなく、「機能には限界があります」などとCMで呼びかけています。また、安全機能や運転支援システムが万全ではないことについては、国土交通省のホームページなどに掲載されています。
しかし、クルマの販売がされている現場では、「安全装備がついているから安心」や「◯◯のような場面でクルマが自動でブレーキをかけてくれます」など、ユーザーに勘違いさせるような言葉が使われていることがあるのが実情です。さらに、「自動ブレーキ」や「自動運転」など、クルマが全てを制御してくれるかのような言葉まで広がっています。
このようなユーザーや運転者を安心させる言葉は、クルマを販売するときやクルマの性能をアピールするときに有効です。しかし、どのような環境で、どのような運転をするかは、ユーザーによって異なります。つまり、それぞれのユーザーのクルマの使い方に合う万能な言葉ではないのです。
各安全機能や運転支援システムなどの説明を隅々まで読むと、天候や飛散物、障害物、反射する道路の設置物、速度など、環境によって正しく機能しない場合があるといった注意書きがされています。
このようなことからも、踏み間違い防止装置や安全機能・運転支援システムがあれば安心と言い切ることはできないのです。
安全機能や運転支援システムなどが動作しない事例については、国土交通省の動画で確認することができます。代表的な事例を動画で確認できるため、安全機能や運転支援システムなどが搭載されているクルマを運転する方は参考にしてみてください。
安全機能や運転支援システムを正しく使うことが重要
クルマを購入するときに安全装置の有無を気にする人が増えたり、踏み間違い防止装置もあったほうがいいと考えたりするユーザーが多いことからも、ユーザーの安全意識が高くなっているといえるでしょう。
しかし、ユーザーの安全意識とは裏腹に、装置やシステムの正しい使い方について正しく理解しているユーザーは多くないのではないでしょうか。また、一言で安全機能や運転支援システムといっても、メーカーや車種、バージョンなどによって機能や条件などが異なります。
そのため、安全機能や運転支援システムは無いよりあったほうがいいといえますが、機能やシステムの限界について理解せずに利用することがないようにしなければなりません。よって、安全機能や運転支援システムを使うときは使い方を理解してから使うようにしましょう。また、機能やシステムが装備されているから大丈夫と過信したり依存したりすることがないようにするのも重要です。
装置の標準化によって失われる”考えて予測する力”
踏み間違い防止装置や衝突被害軽減ブレーキなど、安全機能の義務化や標準装備化が進むと、クルマの機能やシステムに依存してしまう可能性があります。言い換えると、運転者は”いざというときはクルマが対処してくれる”と思い込み、運転者自らが考えたり予測したりしながら運転することをやめてしまう可能性が高いということです。
公道における運転が得意な人や安全運転ができる人は、安全装置が作動することなく運転できるだけでなく、装置やシステムの介入が煩わしいと感じることがあります。このように感じる運転者が増えれば、機能やシステムに依存することがなくなり、自然と安全な交通社会になるのではないでしょうか。