登場から30年近くが経ち、今や絶対的王道にいるTE37は、常にアップデートを続け、ついにセンターロックが登場した。同時に過去をリスペクトしながら、最新の技術でまとめ上げたボルクレーシングGシリーズの最新作、G29にも注目したい。
伝統を守りながら未来を切り拓く存在
常に弛まず進化を続けるのがレイズのフラッグシップにあるボルクレーシングだ。その代名詞的存在であるTE37はデビューから30年弱が経ったいまでも最新スポーツカーの足もとを支え続ける。基本的な造形である6本スポークを踏襲したまま、針の穴をつつくようなマイナーチェンジを繰り返して究極のスポーツホイールを目指し、同時に世の自動車の進化に対応してきた。
大きな前進があったのは2016年のこと。JWLやVIA基準に対して約2倍もの要求性能を己に課すというレイズの独自基準「JWL+ Rスペック2」を軽くクリアしたTE 37SAGAが誕生した。それはのちに裏地に凝るかのごとく、ホイールの裏側の最適化などでさらに鍛え上げた「S-plus」へとつながったが、それも今回のモデルを見据えてのことだったのかもしれない。
走りに対する理想主義を追求するポルシェは、ストリートカーに対してセンターロックの導入に積極的だ。サーキットを想定したロードカーである911GT3系だけにとどまらず、911ターボやGTSまでセンターロック化している。
そこに対してレイズ渾身の作品が寄り添った。「TE 37SAGAS-plus」に、センターロックモデルを追加したのだ。
いかにもレーシングライクなセンターパートから、大径ブレーキを鷲掴みにするようなコンケーブを効かせた6本スポーク。ストリートからレーシングへとつながる出で立ちとしては最高にクールだ。シビック用の15インチから始まったTE 37が、まさかポルシェ・センターロックモデルまで到達したことに隔世の感を抱くとともに、同じ時代を過ごした人たちにとっては妙な仲間意識もある。国産車をイジって走って大人になった人たちなら、この連帯感をより強く感じるのかもしれない。
過去への郷愁を感じさせるという意味では、同じくボルクレーシングの新作であるG29もある。件のTE 37が生まれる前、1994年に登場したGr・A エボリューションⅣ。これをオマージュしながら、高出力化、高重量化する自動車トレンドに合わせて、Gシリーズとして結実させたモデルである。当時の狙いはレーシングユースを含めたスポーツカーだったが、結果としてこれはセダン系を含めたストリートシーンのなかでヒット作となった。だからこそ今回はプレミアムSUVからミニバンまでをターゲットに、21インチオンリーとして発進した。
2×9本のクロスメッシュスポークは、繊細とも取れる造形で、エレガントな印象を強く訴えかけてくる。センターパートのスピンドルパッケージ風デザインも、かつてのGr・A エボリューションⅣを彷彿とさせるが、切削技術の進化によりG29にはウェイトレスホールが設けられる。もちろん、重量級であるハイパフォーマンスSUVを堅牢に受け止める“高性能”が宿る。一例としてこのアウディSQ5と抜群に調和していた。
過去の歩みを大切に守りながら、同時に未来へ向けての提案を絶やさない。常に前進を続けるボルクレーシングらしさを感じさせる新作だ。これは日本が誇るべきJDMが育んだ技術であり、カーカルチャーの象徴でもある。実際、これらは、もうすでに世界中から熱い視線が注がれている。
問い合わせ先=レイズ TEL︎06-6787-0019