2023年3月にミドルサイズSUVのGLCは2代目に進化を遂げた。そんな現行型GLCは、’24年度上半期の国内での輸入車車名別ランキングでは2位を獲得。ここでは、メルセデス・ベンツの中で最も売れているGLCの魅力を存分にお伝えしよう。
2代目GLCもいま売れに売れている
2015年に初代が発売されたGLCは2020年と2021年にはメルセデス・ベンツのベストセラーSUVとなった大人気モデル。2023年3月には2代目が日本でも発表となったのだが、いま売れに売れている。2023年10-12月は輸入車販売台数の3位、2024年1-3月は3位、4-6月は2位、7-9月は3位。上位常連はミニやフォルクスワーゲン・ゴルフなどコンパクトハッチが多いのだが、もっと高価なミドルサイズSUVが食い込んでいるのだ。
日本の都市部でも使いやすい上限のサイズで、いまや乗用車の中心的存在のSUVが人気なのはわかるが、ライバルを寄せ付けないのだから、他にも理由はあるはずだ。そこで今回は日本に導入されているGLCの全パワートレインを取り揃えての一気乗りで、ベストセラーSUVの魅力を探ることにした。
エントリーモデルはGLC220d 4MATIC。SUVとディーゼルは相性がいいというイメージは日本でもすっかり定着。販売も多く定番化しそうな勢いだ。今回の試乗車はこの1台のみクーペとなる。GLC350e 4MATIC Sports Edition StarはPHEV(プラグインハイブリッド)で118kmものEV走行が可能。AIRMATICサスペンションやリアアクスルステアリングが標準装備となることを考えればリーズナブルなモデルだ。
メルセデスAMG GLC43 4MATICはパフォーマンス志向でありながら日常域の快適とのバランスがいい。メルセデスAMGGLC63S E PERFORMANCEはGLC43と同様のF1由来の技術を搭載したエンジンにPHEVを組み合わせたトップパフォーマンスモデルだ。
こういった一気乗りのときはエントリーモデルからステアリングを握ることに決めているのでまずはディーゼルのGLC220dから走り始めたが、これぞ伝統的なメルセデスといった乗り味だった。路面が荒れていてもフラットライドで安定性は抜群なのだが、乗り心地は優しい。路面に厚めのカーペットを敷き詰めたかのように感じられるのだ。
コーナーではステアリングの切り始めこそ、すごく俊敏というわけではないものの、切り増していけばグーッとノーズがインに入っていって高い運動性能をもっていることが知れる。刺激はそれほどでもないけれど、スピードが高くても安心してコーナーをクリアしていけるのだ。
エンジンは実用域のトルクが充実していてアクセル操作に対して思った通りの反応を示してくれる。48VのMHEVのなかでも効果が高めのISGが、低回転域のレスポンスとトルクをアシストしてくれているのも効いている。アクセルを全開にしたときの加速は速いというほどではないものの、日常域でのドライバビリティは秀逸。インフォテイメントやADASも含めて満足感が高く、プレミアムSUVの定番と言える存在だ。
GLC350eはディーゼルより刺激的
GLC350eはバッテリー充電量がたっぷりと残っている状態だったこともあって走り始めて登り坂にさしかかってもエンジンはかからずEV走行。それなりに負荷をかけてもタコメーターの針は動かず、これなら一般的な走行ならばエンジンに頼る必要はないことがわかった。
ためしにキックダウンスイッチを含めてベタ踏みするとエンジンが目覚めてぐっと加速感が増した。ガソリン2Lターボは軽快な回転感で伸びやか。低回転からトルクが太い電気モーターは低・中速回転で頼もしく、高回転でパワーのあるエンジンは高速域で伸びやか。エンジンが思いのほか元気なおかげでワインディングロードを走っていてもディーゼルよりも刺激がある。
乗り心地に重厚感が増すのは車両重量が220dに対して380kg重たいからだろう。それでもイヤな硬さなどはなく、あいかわらずメルセデスらしい優しさがある。
コーナーではリアアクスルステアリングの恩恵で曲がり方が素直でスムーズ。重さがネガティブになっていないのは幸いだ。EV走行による環境負荷と燃料コストの低減というメリットだけが享受できると言っていい。
GLC43に乗り換えると、一気に世界がかわったように思えた。エンジンは低回転では低く唸りながらディーゼル以上に強力なトルクでボディを軽々と押し出していく。50〜60km/hまで加速するだけで只者ではない雰囲気がビンビンだ。アクセルを踏み込めば3000rpmあたりから回転上昇の勢いが増し、6800rpmまで鋭く吹き上がる。加速も220dや350eとは桁違いだ。
たった2Lながら排気用タービンと吸気用コンプレッサーの間にモーターを挟み込むことでターボラグを解消。ということは大型タービンを採用しても問題ないから、リッター200psを超える421psを叩き出すとんでもないハイテクエンジンが生まれたのだ。レスポンスも超絶に良くて、まるでNAのよう。サウンドも、多少は作られた感はあるものの程よく刺激的で、長年F1活動してきたメルセデスAMGの情熱を感じる。
乗り心地は適度に引き締まっているが、それでもメルセデスらしい優しさは残っている。靴底が厚めのランニングシューズのようで、運動性能は高いけれど衝撃がダイレクト過ぎない。
とはいえ、ハンドリングもスタンダードモデルとは桁違いで動きがシャープ。タイヤもはっきりとグリップ志向で路面をがっしりと捉えて、コーナーの連続を駆けぬけていく。
680psのGLC63は踏み込むと怒濤の加速!
GLC63のEV走行は、サウンドをつけることも可能で宇宙船的なヒュイーンっとうなって面白い。エンジンはGLC43と同様だが最高出力は476psまで引き上げられ、さらにPHEV用の強力なモーターと合わせれば680ps、最大トルクは1020Nmに達する。
バッテリー容量6.1kWhでEV走行たったの16kmというスペックからは、PHEVをパフォーマンスのために利用していることが見え見えだ。
意を決してアクセルを踏み込むと怒濤の加速が始まる。電気モーターのトルクとエンジンのパワーのいいとこ取りをしているのは350eと同じだが、何しろ0→100km/hは3.5秒だ。次元が違う。タイヤはグリップ志向だが、瞬間的に路面を捉えきれないことがあるくらいだ。
ハンドリングはGLC43以上にシャープで、タイトコーナーでも巧みにクルリと回り込んでいく。車両重量は2350kgもあるのだが、想像以上に巧みなハンドリングをみせるのはGLC43にはないAMG ACTIVE RIDECONTROLがスタビライザーを可変させる効果が大きいからだろう。あらゆる場面で最適のロールとなってタイヤからグリップを引き出しているのがわかる。
最後にGLC63の刺激的な走りを堪能してしまうと、220dや350eはずいぶんと穏やかだったなと大きな違いは感じるものの、振り返ってみれば共通点はあった。
どんなにパワフルになってもシャシーは懐が深く、ドライバーに安心感ややすらぎを与えてくれるのがGLCなのだ。ドライバーを疲れさせないことで、結果的に安全に繋がるというメルセデスの哲学が根底に流れているからだろう。
つまりGLCはメルセデスそのものであり、それが人気のプレミアムミドルサイズSUVで実現しているのだから鬼に金棒。それなりに高価だとしても、売れに売れていることに納得がいくのだ。
【PERSONAL CHOICE】GLC43 4MATIC
加速でもハンドリングでも刺激的なGLC63もいいのだが、パフォーマンスと価格がトゥーマッチ。十分な刺激と日常域の快適性、さらに価格のバランスまでいいGLC43を選びたい。
【SPECIFICATION】MERCEDES-BENZ GLC 350e 4MATIC SPORTS EDITION STAR
■車両本体価格(税込)=10,130,000円
■全長×全幅×全高=4725×1920×1635mm
■ホイールベース=2890mm
■車両重量=2310kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1997cc
■最高出力=204ps(150kW)/6100rpm
■最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/2000-4000rpm
■モーター最高出力=23ps(17kW)/4500-8500rpm
■モーター最大トルク=205Nm(20.9kg-m)/0-750rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション=前:4リンク、後:マルチリンク
■ブレーキ=援護:Vディスク
■タイヤサイズ=前:255/45R20、後:285/40R20
【SPECIFICATION】MERCEDES-BENZ GLC 220 d 4MATIC COUPE
■車両本体価格(税込)=9,070,000円
■全長×全幅×全高=4765×1890×1605mm
■ホイールベース=2890mm
■車両重量=1940kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ディーゼルターボ/1992cc
■最高出力=197ps(145kW)/3600rpm
■最大トルク=440Nm(44.9kg-m)/1800-2800rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション=前:4リンク、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=援護:235/60R18
【SPECIFICATION】MERCEDES-AMG GLC43 4MATIC
■車両本体価格(税込)=11,820,000円
■全長×全幅×全高=4750×1920×1640mm
■ホイールベース=2890mm
■車両重量=1980kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1991cc
■最高出力=421ps(310kW)/6750rpm
■最大トルク=500Nm(44.9kg-m)/1800-2800rpm
■モーター最高出力=13.6ps(10kW)/50-1300rpm
■モーター最大トルク=58Nm(5.9kg-m) /500-4500rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション=前:4リンク、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:265/45R20
【SPECIFICATION】MERCEDES-AMG GLC63S E PERFORMANCE
■車両本体価格(税込)=18,040,000円
■全長×全幅×全高=4750×1920×1635mm
■ホイールベース=2890mm
■車両重量=2340kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1991cc
■最高出力=476ps(350kW)/6750rpm
■最大トルク=545Nm(55.6kg-m)/5250-5500rpm
■モーター最高出力=150ps(80kW)/4500-8500rpm
■モーター最大トルク=320Nm(32.6kg-m) /500-4500rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション=前:4リンク、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前;265/40R21、後:295/35R21
問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610