
世界中の様々な耐久レースに参戦するなどスポーツ色を全面に押し出すヴァンテージが進化!パワーアップとともにスタイリングまで刷新され、フルモデルチェンジに近いアップデートがされた。英国車の使命をも感じさせる走行性のすべては、アストン本来の持ち味。その実情に迫る。
唯一無二といえるスリル満点のフィーリング
アストン・マーティンといえば、グランツーリスモのDBシリーズが真っ先に思い浮かぶが、一方で常にその後ろにはヴァンテージがひと味違うスタイルで主張してきた。特に3代目以降(2005年)は、ライバルにポルシェ911の名を挙げ、ニュル24時間レースに参戦するなど、名実ともに実績を積んだスポーツカーとして知られるようになり、それなりの地位を築くことに成功している。
そのヴァンテージも4代目(2018年)に進化してからというもの、メルセデスAMGからV8エンジンが供給され、今回も同様にM177型を受け継いでいる――と、微妙なはじまりになってしまったが、2024年2月に発表されたここでリポートするヴァンテージは、4代目のマイナーチェンジ版。フロントフェイスが大胆に代わり、最新のDB12にも似ているから完全な新型車と思われそうだが、しかし実際それに近いアップデートがなされているのは確か。ヴァンテージらしいリアルでスリリングなフィーリングに磨きがかかったようで、もはや911を敵対視せずとも、この強烈な個性だけで魅力をアピールしていくべきだと確信した。
フロントミッドに搭載されるV8ツインターボエンジンは、カムプロファイルと圧縮比が変更され、タービンの大型化や冷却系の強化などを施したことで、実に155㎰&115Nmも上乗せした、665㎰&800Nmを発揮する。同じエンジンを使い、これだけの出力アップを実現したのは異例かもしれないが、この手法は先だってデビューしたDB12に積まれるV8エンジンと同じ。即ち、少々斜めに見てしまえば、ヴァンテージはDB12のショートホイールベース版とも言える。その差は100mm。車重はヴァンテージのほうが43㎏ほど軽く、トルクは同じものの、パワーが15㎰ほど下回るのみ。トランスミッションも同じZF製8速AT、カーボン製のプロペラシャフトと電子制御ディファレンシャルのEデフ、しかも最終減速比まで同じと分かれば、あとは2シーターか2+2仕様のどちらを選ぶかだけのように映ってしまうが、先にも触れたように、ヴァンテージの美点は英国の古典主義に執着したスリル満点のフィーリング。DB12はそこまでではないから、やはりこの味付けは病みつきになるほどクセの強さが表に出ていると思う。
とはいえ、進化を重ねる度に信頼性や安心感が得られるようにはなったのも事実。一般道では控えめに終始し、扱いやすい一面も見せる。そうかと思えば、ドライバーがその気になった時は不思議なほど連動するように良い意味で野蛮な一面を顕にするが、速度域が上がれば上がるほど生真面目に変化していくから面白い。これが、かつてロータスやベントレーなどで手腕をふるったエンジニアのサイモン・ニュートンの狙いのだろう。大賛成である!
とにかくデフォルトのスポーツモードでは、意図的にスロットルを早めに開き、スリップさせながらスタートしたかと思えば、ステアリングを目一杯回して踏み込めば意図も簡単にテールスライドに持ち込めるなど、“ドリフト大好き英国人”の人間臭さが滲み出ていて共感がもてる。もちろんトラックモードは、さすがに秀逸。すべての感触に重みが増し、ミリ単位で忠実に反応するようになるから完全なアタックモードになり覚悟を要求される。言葉にすると似たようなスポーツモデルはあるが、ヴァンテージは世界観が違う。これを理解できなければ乗らなくて結構だ! とクルマ側から訴えかけてくる。この媚びない姿勢は、今やヴァンテージくらいだろう。まさに唯一無二。これは買う、ではなく“飼いたくなる”1台である。
【SPECIFICATION】アストン・マーティン・ヴァンテージ
■車両本体価格(税込)=26,900,000円
■全長×全幅×全高=4495×2045×1275mm
■ホイールベース=2705mm
■車両重量=1605kg
■エンジン形式/種類=-/V8DOHC32V+ツインターボ
■総排気量=3982cc
■最高出力=665ps(489kW)/6000rpm
■最大トルク =800Nm(81.6kg-m)/2750-6000rpm
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:275/35ZR21、後:325/30ZR21
問い合わせ先=アストンマーティン ジャパン リミテッド TEL03-5797-7281