トテフ・リンドバーグ最後の名作となった1953年型フォード。象徴的なインディ・ペースカーのことを抜きにしても、ぱっと思いつくだけで「フォード創立50周年」「最後のフラットヘッドV8」という強力なふたつの要素が挙がる。特に後者、歴代最高のフラットヘッド239は21年にわたり君臨したフラットヘッド伝説の頂点であり、アメリカンカープラモ・ビルダーであればアステカの神官に生まれずとも取り出さずにはいられない心臓だった。1998年の新金型でこれが手に入る——訴求ポイントが開かれている。最晩節にこういう仕事を遺せる者は決して多くはないのだ。
写真:羽田 洋、秦 正史