その後のインディ500の隆盛については多くを語るまでもない。グリーンフラッグの前には「バック・ホーム・アゲイン・イン・インディアナ」(ふたたびわが家インディアナへ)の朗唱があり、チェッカーフラッグの後にはミルク・トースト(優勝者は勝利の美酒ではなく牛乳を飲む伝統がある)の儀式があるこのレースは、「ただいま」と「おかえり」に包まれた郷愁を誘うイベントとしてアメリカ人の心に深く根をおろしている。このレースのペースカーは、遡れば順繰りに選ばれる「市販車」であり、アメリカ一般市民の代表としてコースを走る独特の象徴性があった。
写真:羽田 洋、秦 正史