ヨーマン・エンジンという表現がある。時代の最先端を走った一瞬を経て「標準」となり、やがて静かにラインナップの下層構造を支える存在となった機械の名である。少々古風な表現だが、普及価格帯にあるテクノロジーを「凡庸」と片づけないためのキーワードだ。RCアーテルAMTが折角キット化した'58プリマスには、不正確なだけのV8エンジンが付属していた。これを正確なヨーマンV8——すなわち'55以来のプリマス・ポリスフェリカルヘッドV8——と世辞にも呼ばなかったアメリカンカープラモ愛好家の矜持は、21世紀のスケールモデルに大きな影響を与えることになった。
写真:羽田 洋、秦 正史