1958年、アメリカンカープラモ/アニュアルキットがまだデトロイトのプロモーションツールからの派生商品に過ぎなかった頃、一体成型ボディーのエンジンフードは別パーツではなかったことを思い出そう。1960年を迎えるまでフードの下のエンジンは用意されなかったからだ(本連載第8回「スタート・ユア・エンジン」参照)。ファニーカーはもちろんこうした事情とは異なり、市販車を模した一体成型のFRPボディーがスピード・テクノロジーの肝、キットはその忠実再現に過ぎない。しかしその姿は、時代が一周めぐって先祖返りしてみせたような、不思議な安心感がある。
写真:羽田 洋、秦 正史