本文のとおりメビウスが「秘密を持たない」ということは、キットというより開発行為そのものを語りの連鎖のなかに置き、その応答の複雑さをまるごとリサーチとして抱え込むということだ。スケールモデルの開発としては前例のないタイプである。それはガレージキットですらない。資料によってもたらされる正確さ以上に、場で語られたこと、あえて沈黙していたこと、問い直されたことが最終的にキットのかたちをとる。厚い関係性が詰めこまれるのだから、当然箱のフタは開けたら最後、閉まらなくなる。もう組むしかない。
写真:羽田 洋、秦 正史