射出成型機も性能向上はあるが、それは主にスピードや自動化の問題であり、製品精度の根幹を変えるものではない。つまり「50年で技術が進歩した」といっても、それは設計思想を支えるツールが便利になっただけで「だから古いキットは劣っている」とはならない。設計思想の変化こそが「更新」の理由なのだ。1960〜70年代、キットとは「未知に向かう読者のためのガイド」であり、ある程度の不正確さや記号的再現に寛容だった。21世紀以降、キットは「すでに知っている者への応答」であり、再現の過剰が求められる。
写真:羽田 洋、秦 正史