かつてのアニュアルキットはつねに、ひとつの金型のやりくりの産物でもあった。前年のコンフィギュレーションを翌年には変える。ここにミスやコストの制約が影響を与える。変化は進歩ではなく、語りの構文の変更なのである。そこをイヤというほど理解しているから、レベルは「すでに知っている者への応答」として新しいキットを設計する。アニュアルキットを「古くする」のではなく、「対応すべき状況が違う」「接続される語りが違う」からわれわれが対応しようという態度である。これはきわめて正当な姿勢だ。
写真:羽田 洋、秦 正史