いずれも効率化を図るための手段
メルセデスには現在、48V電気システムを使った最新テクノロジー、「ISG」と「BSG」がある。エンジン単体の写真を見るとクランクシャフトから取り出されたパワーを伝達する駆動ベルトが「ISG」にはなく「BSG」にはある。ベルト駆動を排除した「ISG」と、あえて残した「BSG」。ふたつの違いとメリットをより深く追求してみる。
ジャガーIペイスのようなBEVとガソリンやディーゼルなどの内燃機の違いはいくつかあるけれど、決定的な違いのひとつはエネルギー損失にある。エネルギー損失とはBEVならモーター、内燃機ならエンジンが作り出すパワーが、駆動輪に伝わるまでにどれくらい減ってしまうかということ。BEVはたいていの場合、モーターのすぐ側に駆動輪があって、モーターと駆動輪の間にはせいぜいリダクションギアとドライブシャフトくらいしかないから、エネルギー伝達率は90%以上と言われている。モーターの出力が100psなら実際に駆動輪を回す力は90 psという意味である。
C200 AVANTGARDE
いっぽうのエンジンは、クランクシャフトの回転が事実上のエンジンパワーだが、まずここからベルトやプーリーを介して補器類を動かすためにパワーを使い、ATならトルクコンバーターでまた損失、トランスミッション内のいくつものギアをくぐりぬけ、FRなら長いプロペラシャフトを通ってリアディファレンシャルに到達、ここでさらに左右のドライブシャフトに振り分けられてようやく駆動輪が回る。数々の必然的障壁を乗り越えた結果、エンジンのエネルギー伝達率は駆動形式やトランスミッションによって異なるものの、実はおよそ30〜40%しかなく、せっかくエンジンで100psを創出しても駆動輪を回す力はわずか30〜40psしかない。
パワートレインの効率化を図るために、各自動車メーカーはあの手この手で取り組んでいるが、メルセデス・ベンツはこのエネルギー損失に目を付けた。エンジンがせっかく作ったパワーをできるだけ多く駆動輪まで届けたい。そのためには、駆動以外の用途でのエンジンパワーの喪失をなるべく避けたい。彼らが着目したのは、クランクシャフトから取り出されたパワーを使って作動するウォーターポンプやオイルポンプやエアコンのコンプレッサーなどといった補器類。ISGはこれらをすべて電動化して、ベルトとプーリーと補器類をエンジン前部から完全排除した。いっぽうのBSGはウォーターポンプを電動化、エアコンはこれまで通りベルト駆動のコンプレッサーを使用する。
BSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)