アッパーミドルSUVは、まさにオールインクルーシブだ。プレミアムでありながら利便性が高く、標準もしくはオプションで3列目シートを備え、それでいて動的性能も秀逸。いざとなれば本格的なオフロードも走れてしまう。ここでは、そんな華々しさに目がいくスターSUVたちとショートトリップへと繰り出し、クルマ本来の魅力や個性を探ってみた。
3台の中では古株だがQ7の総合力は高い
SUVカテゴリーにおけるプレゼンスが相変わらず強烈なドイツ勢にあって、2019年はその先駆けかつ中核たるモデルのフルモデルチェンジが相次いだ。
そのうちBMW X5は当初3L6気筒ディーゼルの35dのみの導入だったが、現在では3L6気筒ガソリンPHEVの45e、さらに4.4LV8ガソリンのM50iが追加され、ラインナップはひと通り完成している。ちなみに35dはオプションで3列シートを装着することも可能だ。
そしてメルセデス・ベンツGLEクラスは2L直4ディーゼルの300d、3L直6ディーゼルの400d、そして3L直6ガソリン+48VのISGの組み合わせからなるマイルドハイブリッドの450の3グレードがラインナップされている。こちらの日本仕様では全グレードで3列シートが標準化され、後々投入されるクーペとの棲み分けが明瞭化された。
そして、これら2モデルの好敵手となるのが、先んじて2016年にフルモデルチェンジを迎えていたアウディQ7だ。現在のラインナップは2L直4ガソリンの45TFSIと3LV6ガソリンの55TFSIの2つ。Q7はライバルに先んじて3列シートを選択肢に用意することでファミリー層などにも無条件に支持を得てきたが、前述の通りライバルも軒並み3列シートを持つことになったことで、独自の長所がいかなるものかというのが注目点になるだろう。
今回、試乗に駆り出したQ7はベーシックグレードとなる45TFSI。5mを超える全長、2mに迫る全幅の体躯をクワトロでドライブするとあらば、果たして2Lユニットで事足りるのかという疑問を抱くのは普通だろう。
……と、その心配は無用だった。大人3人と撮影機材を乗せて走るQ7に著しい力不足を感じることはない。もちろん頻繁に大人数や大荷物と共に移動するという向きには、効率面での素性も悪くない3L V6スーパーチャージャーの55TFSIを勧めるが、シティユースが主ならば45TFSIでも充分対応できるだろう。ちなみにエンジン搭載位置の関係から室内長に余裕があることもあってか、Q7の3列目シートは足元空間がライバルに比べると気持ち広めに仕上がっている。
2Lでも動力性能が成立する最大の理由は、他モデルに対して200kg以上は軽い2000kgという車重にあるはずだ。それもあって45TFSIはワインディングでもほぼ3mのホイールベースを全く意に介さない軽快な回頭性をみせてくれる。ロールの量は大きめながら四輪の接地感はリッチで、路面を確実に掴んでいる精緻な手応えもステアリングを介してしっかり伝わってくる。
ライバルがディーゼルを販売的主力とする中、Q7はベストバイともいえる3L V6ディーゼルを日本に導入していない。それが原因で商機を逸することもありそうだが、現状においても総合的な商品力で見劣りはないと思う。