初の草刈りに挑戦!
いやぁ~、想像以上に大変だった。
「山の整備、やるぞ!」と意気込んで、マキタ電動刈払機(かりはらいき)の上級モデルをホームセンターで購入し、加えてワークマンやカインズホームで安全靴やフェイスガードなどの各種ギアも買い込んで、コンちゃんと一緒に出向いたのだが――。
この山とは、スバルが2021年8月16日に千葉県鴨川市に開設した、SUBARU里山スタジオのことだ。スバル本社広報部が「スバルの商品性をメディア関係者に肌感覚で分かってもらうための場」として運営を始めた。なぜ鴨川なのかというと、都心から1時間半程度で行けるところ、という利便性を優先し、その中で自然環境が豊かなエリア内で候補地を探していたところ、たまたま見つけたという。
Googleマップ上で、鴨川市の山間部に嶺岡(みねおか)キャンプ場という表記があるが、その詳細をネット上で調べると、どうやら閉鎖中ということが分かり、鴨川市役所に問い合わせたところ、2015年に閉鎖後は地元の細野地区住民らが管理していることを知る。早速、細野地区の関係者にコンタクトすると、二つ返事でスバルへの貸与契約がまとまった。それが今年(2021年4月)のことで、そこから2カ月ほどで、ビックマイナーチェンジした「フォレスター」の事前撮影会が実施されるというスピーディな展開だ。
ただ、SUBARU里山スタジオは、自動車メーカーとして大規模な予算を組んで再開発をするといった事業ではない。あくまでも、スバル本社広報部が自前の屋外スタジオとして、自分たちの手が届く範囲の作業を積み重ねて作り上げる部署内プロジェクトだ。それを地元住民の皆さんが支える、という草の根活動である。
スバル広報部では以前から、SUBARU里山スタジオっぽい発想はあったそうだが、他の業務が優先し、本格的に場所探しをするまでに至らなかった。それが今回、大きく動いたきっかけのひとつは、昨今のキャンプブームを背景とした本格的四輪駆動車の需要の高まりがある。その上で、先にご紹介した「フォレスター」のビックマイナーチェンジと、北米導入から2年経ちやっと日本導入が決まった「レガシィアウトバック」が相次いで発売されるというタイミングがあった。
3回目で、出迎える側に
筆者がSUBARU里山スタジオの存在を知ったのは、「フォレスター」事前撮影会の少し後、袖ケ浦フォレストレースウエイ(千葉県袖ケ浦市)で開催された、「BRZ」とトヨタ「86」のサーキット試乗会でのことだった。スバル広報部関係者から、是非一度取材にどうぞと言われたが、BRZ/86やEV戦略で企業としてつながりが強いスバルとトヨタとはいえ、いきなり「コンちゃんでデイキャンプさせてください」とも言い出せず…。
まずは、「フォレスター」前期モデルの広報車を渋谷区恵比寿のスバル本社で借り、SUBARU里山スタジオでビックマイナーチェンジ後の車両と外観や内装の比較をしてみた。少し間をおいてから、今後は「レヴォーグ」広報車を借りて、「レガシィアウトバック」などとの内外装の比較。「レガシィアウトバック」では、日頃コンちゃんや、N-BOXのシロちゃんで使っているogawaのカーサイドリビングDX-Ⅱや、JVC KENWOODのポータブル電源やソーラーパネルを持ち込み、短時間デイキャンプを決行した。
そうした中で、SUBARU里山スタジオのさらなる整備が必要だが人手が足らない、という話を聞いたので、「だったら、草刈りから手伝わせて欲しい」ということになり、コンちゃんのSUBARU里山スタジオデビューとなった。とはいっても、あくまでもスバル車のための施設なので、コンちゃんはサポートカーとしての参加にとどめることで、本稿の記事化についてスバル広報部からの許可を得た。
山との付き合い、はじめの一歩
こうして、コンちゃんは初の鴨川市上陸。SUBARU里山スタジオは、鴨川シーワールドなどがある海岸線の市街中心部から10kmほど山側に位置し、集落がある地点からは幅員3mあるかないかの山道を1㎞ほど登る。
現場に到着したコンちゃんは、キャンピングカーというより、まさに”働くクルマ”の雰囲気で、ハイエースとしての本領発揮だ。撮影のため、先日モビリティ神奈川からお借りした、「HIACE CAMPER ALTOPIANO」のネームプレートを装着し、まずは「フォレスター」君にご挨拶。スバル関係者らに、コンちゃんの装備も説明。すると「なるほど、走行中充電するなら災害時にも使えますね」とか「外から見る印象より、車内はいろいろ装備があってビックリ」といった感想をもらった。
そうこうして、準備万端。筆者のタスクはハイキングコースの整備だ。正式名称は、「里山ウォーキング細野元名(ほそのもとな)コース」。以前は、多くのハイカーが訪れていたが、嶺岡キャンプ場の閉鎖に伴い、利用者はほぼゼロに。コース内の大半が草木で覆われ、また2019年の台風15号の影響で倒木も多い状態だった。
そんな状況で、最初から難所へのチャレンジ。急な斜面で電動刈払機を慎重に操作しながら一歩一歩、山と触れ合う。気温は25度前後だったが、安全対策のため上下がっちりガードのフル装備で汗だく。OS1で水分補給しながら、適度に休憩を取りながら作業を進めた。
コンちゃんがウチに来てから、筆者として山に対する関心は高まったが、こうして山の施設に皆さんをお呼びする側にまわってみて、改めて山の管理は大変なことだと痛感した。今後も、SUBARU里山スタジオへのコンちゃん派遣は続く。
この記事を書いた人
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。