モデルカーズ

テールフィンも華やかにゴースト退治!ポーラーライツ製プラモ「ECTO-1」の違和感を一掃する!後編【モデルカーズ】

高級車キャデラックは最高の実用車でもあった

1959年型キャデラック救急車をベースとした『ゴーストバスターズ』ECTO-1とそのプラモデルについて、おおよそのところは前編の記事(下の「関連記事」参照)においてすでに述べた。ここでは、ベースとなったキャデラック、そしてボディを架装したミラー・メテオについて記述しておこう。

【画像42枚】目力アップ、塗装、組み立て…ECTO-1の制作工程を見る!

1950年代の最後を飾ったキャデラック、その巨大なテールフィンのインパクトは今も絶大である。大メーカーの最高級車にここまで過激なスタイルが採用された例は、空前にして絶後であろう。巨大なフィンに目を奪われて見落としがちだが、基本フォルムはハーリー・アール流の重厚なシルエットに決別し、1960年代を予感させるスマートなものとなっている。これについては、1957年型クライスラー系各車のスリークなデザインに先を越され悔しい思いをしたデザインスタジオのクーデターとも言われている。

ホイールベースは前後の年式と比べても最大となる130インチ(3302mm)、全長は225インチ(5715mm)にも及んだ。ラインナップには、基本モデルのシリーズ62、その上級版のデビル、フォーマルな最高級モデルのフリートウッド60スペシャル、そしてスペシャリティカー的なエルドラドがある。エルドラドのうち、4ドア・ハードトップのエルドラド・ブロアムは専用のボディ(印象的には通常モデルに似るが細部の処理が控えめ)を採用、ピニンファリーナが製造を手掛けた。さらに、2ドアのエルドラドはクーペがセビル、コンバーチブルがビアリッツと呼ばれて区別される。

1959年型のキャデラックには、さらにホイールベース149.75インチ(3804mm)のフリートウッド75(つまりリムジンだが、パーテーションのないセダン版も存在)があり、これをベースとしつつさらにホイールベースを延長した、コマーシャル・シャシーも用意されていた。コマーシャル(商業用)シャシーとは、戦前からキャデラックに設定されてきたもので、救急車や霊柩車に使われるシャシーだ。1959年型のコマーシャル・シャシーのホイールベースは156インチ(3962mm)だが、これは前後の年式でも同様のようである。

コマーシャル・シャシーのフレームはシリーズ75のものよりさらに補強されており、通常モデルのフレームでは後車軸の部分のみキックアップした形状であるのに対し、こちらは持ち上がったまま後方まで伸びた形となるが、後端のフレームレールは積み下ろしのため低い位置にレイアウトされている。GMの工場からは、このシャシーの上にノーズ部分からフロントウィンドウへかけてだけが載った状態で出荷され、架装メーカーへと引き継がれた。つまりキャビン部分からリアまでは架装業者の領域となるが、ドアパネルやリアフェンダーなども補助的に業者へ供給されたという。

架装される車体は前述のように救急車や霊柩車などだが、そのどちらにも使えるものは「コンビネーションカー」と呼ばれた。また、「フラワーカー」と呼ばれるものもある。これは車体後半をトラック状にしたもので、葬儀の際に荷台に花を満載する、あるいはその下に柩を載せて運ぶ、といった用途に使われた。

なお、1959年型キャデラックのエンジンは390-cid(6.4L/325hp)で全モデル基本的に共通だが、エルドラド用のみ出力345hpと強力なものになっている。

機能とデザイン性を高度に融合した美しい架装
ECTO-1に使われたのはミラー・メテオによる架装がなされた車両(コンビネーションカーと思われる)だが、このミラー・メテオとは救急車/霊柩車専門工房で、スクールバスのメーカーとして知られたウェイン・コーポレーションの一部門である。ウェインは1837年にインディアナ州でストーブや農機具を製造する鋳物工場として創業し、1868年に馬車の製造を開始、1888年には農機具製造から撤退して車両製造に専念する。1910年代にフォードT型をベースとするトラックとバスの製造を始め、第一次世界大戦後には主にスクールバスを作るようになった。

1956年、ウェインは事業拡大を図ってオハイオ州の救急車/霊柩車メーカー、AJミラー・カンパニーとメテオ・モーターカーを買収、合併させてミラー・メテオを設立。当時、ミラー・メテオは全米の救急車/霊柩車市場の約50%を占めていたといわれ、キャデラックはコマーシャル・シャシーを優先的に提供した。1970年代半ばまでに、数多くのキャデラック救急車/霊柩車がミラー・メテオ製品として出荷されたが、同社にはよほど優秀なデザイナーがいたようで、その製品はすべてベース車のデザインを上手に生かしながら、機能とデザイン性を高度に融合した、美しいスタイリングが特徴になっている。

しかし、1977年にフルサイズ・キャデラックがダウンサイズされると、乗用車ベースの救急車/霊柩車の需要は急速に冷え込んでしまった。1978年にはミラー・メテオは僅か4台を製造したのみで受注を打ち切り、ついに閉鎖。こうして一旦消滅したミラー・メテオだが、2004年に商標権が別の特装車メーカーに取得されて復活、現在はキャデラックとリンカーンをベースとする霊柩車とリムジンを製造している。

作例制作・文章(後半)=北澤志朗/フォト=服部佳洋 modelcars vol.284より再構成のうえ転載

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