カーボンパーツも忠実に表現
昨今は名だたる名車が一方的に、そしてひっそりとその歴史に幕を下ろすことが増えてきた。グレードの整理や選択不能なボディ色が出始めたりするのが“予兆”で、トドメが公式ホームページに添えられる“受注終了”や“販売終了”の文字だ。それを見てファンは「ついにこの日が来たか……、とうとう……、嗚呼」とため息をつく。それに呼応するかのように当該車種の中古車価格が急騰するというのが定番化しつつある。
【画像6枚】日産GT-R ニスモ MY24のモデルカーフォトギャラリーはこちら
R35もその典型的な例だった。2022年の5月に2022年モデルの受注が終了し、多くのクルマ好きが「R35も終わったか……」と買える買えないは別として喪失感のようなものを抱いた。直後に“もっとも射程圏内にあったはず”のR35の初期モデルですら中古車価格は一気に跳ね上がり、随分遠くにいってしまった。実際のところ、それも日産自動車のシナリオ通りだったのかもしれないが、2023年初頭の東京オートサロンでドンデン返しが起きた。例えは悪いが、棺桶に収めた死者が蘇ったかの如く、新マフラーの開発成功がブレークスルーとなってR35が復活したのである。胸を撫でおろすどころか、素直に喜んだクルマ好きが大多数だったことだろう。
そんな興奮も冷めやらぬ中、あれからまだ半年も経っていないというのに、2023年のオートサロンで発表されたばかりの2024スペックのGT-R NISMOが精緻なモデルカーとなって出現した。製作・製造は本項ではお馴染みメイクアップである。日産自動車から提供受けた実車の造形データを元に原型を設計、すなわち実車に正確無比ということだが、ボディの面表現やプレスライン、そして細部の意匠にいたるまで、1/43という全長10センチにも満たない車体内において、限界の解像度で再現している。
実車発売からモデル発売までの期間の短さは、実車取材、設計、生産まですべてを一貫して自社で行うメイクアップならではのアドバンテージ。かといって、その短さが売りというわけではなく、一番の自慢は正確な造形、手の込んだ彩色やレジン、アルミ、ホワイトメタル、ステンレス製エッチングパーツなど適材適所に使い分けたマテリアルがもたらす質感やリアリティにある。R35 GT-R NISMOといえば、各部に“これでもか”とあしらわれたカーボンパーツが有名だが、実はその表現こそが同社のモデルカーの良し悪しを判断する材料ともなり得る。メイクアップの場合は、カーボンパターンを印刷した水貼り式のデカールを複雑な凹凸面にシワひとつ無く貼り込んで、その上からウレタン塗料のクリアコーティングを施し、その後鏡面状態にまで研磨して仕上げている。
その手間暇がそのまま価格に跳ね返って、39,600円(税込)というプライスタグを掲げるわけだが、多少模型製作に腕の覚えがある方でも、「このミニカーと同じように4万円を渡すから仕上げてみてよ」、と言われても固辞したくなるのが関の山。良いものは安くないが、安くない理由が一目瞭然な品を良いものと称することに異論を挟む余地はないかもしれない。
https://www.makeupcoltd.co.jp/products/detail/1393
取材協力:メイクアップ
https://www.makeupcoltd.co.jp/