全盛期は300超の看板が……!
あなたはこの看板を目にしたことがあるだろうか。
そう、「きぬた歯科」の街頭看板だ。少なくとも首都圏にお住いの方はきっと一度は目にしたことがあるのではないだろうか? 例えば首都高や国道20号線を走行しているとき、さらには新幹線の車窓から見える野立て看板などなど…日々生活する中でこの看板を目にする機会は思ったよりも多い。
「きぬた歯科」の街頭看板はそのインパクト大なビジュアルと数の多さで度々話題になるが、デジタル全盛のこの時代に、医院を構える八王子からかなり離れた場所も含めて設置する“街頭看板増殖戦略”に至った理由やその意図は何なのか? そしてこの戦略の仕掛け人であるきぬた泰和院長とはどういう人物なのか、気になったので会いに行ってみた。
きぬた歯科の看板について、まず一番に気になったのはその設置数。きぬた氏に質問を投げかけてみると「一番多かったときは300か所以上あったけど現在は270か所ぐらいじゃないかなぁ」というお返事が。その数の多さもさることながら、設置しているご本人でも数を把握しきれていないという豪気さには心底驚いた。全盛期から数を減らした理由も決してネガティブなものではなく、より効果的な立地やサイズに絞った結果だという。設置数は把握していないけれど効果測定はしているという、一見矛盾を感じてしまうかもしれないがきっとそれが“きぬたメソッド”なのだろう。
当初の宣伝広告はWEB主体だった?
そもそも当初は、WEB広告主体で広告宣伝を行っており、街頭看板にはそこまで力を入れていなかった。ところが数年後、インプラント事故についての報道によって客数が減ってしまうという出来事があり、その機会に来客導線について独自調査を行った。その結果、当時1000万円超の広告費がかかっていたWEB広告と数十万円しかかかっていなかった街頭看板の集客力にほぼ差がないことがわかった。この調査がきっかけで、街頭看板の有用性に気づいたきぬた氏はWEB広告から街頭看板の設置に宣伝手法をシフト。その結果“街頭看板増殖戦略”が生まれ、今の“きぬたメソッド”が確立した。
きぬた歯科から直線距離で270km超! 伊勢にも進出したきぬた看板
街頭看板の設置は首都圏が中心だが、きぬた歯科から最も遠い設置場所は三重県 伊勢の明和町。きぬた氏曰く「『赤福』が伊勢周辺の電柱看板を占拠していることに対するアンチテーゼ」であると。さらには、きぬた歯科がスポンサーを務める法政大学陸上部が、全日本大学駅伝(伊勢駅伝)に落選してしまった無念を看板の設置によってスポンサーが晴らすといった意味も込められている。上述の通り、きぬた氏はあくまで広告媒体として街頭看板を活用していると語る一方で、唯一の趣味が街頭看板も含めたスポンサー活動とも語っており、伊勢への設置は趣味性にだいぶ寄った活動であるといえる。
今回、きぬた氏にお会いして感じたのは、「何事もやるなら真剣に取り組む」といった並々ならぬ覚悟を持った一本筋が通っている方だということ。そしてご自身の知見に基づいたマーケターとしての手腕と、「看板を見る人が笑ってくれればそれでいい」と語るエンターテイナー性の共存も垣間見えた。
最後に、今後の展開について伺ったところ、「街頭看板を越えるヒットを生み出したいがまだ企画検討中」とのこと。既存のヒットに満足せず新たな企画に挑戦する“看板王きぬた院長”の今後の活動に注目したい。