
KYOJO CUPに参戦中の佐々木藍咲選手がクラシックカーレースに挑み続ける理由
女性だけのモータースポーツ「KYOJO CUP」に2023年から参戦している21歳の女子レーサー、佐々木藍咲選手。彼女は昨年から、自身が生まれる遙か前の名車「ダットサン・フェアレディ2000」を駆り、ベテラン勢が集うクラシックカーレースに挑戦している。レーサーを志す“きっかけ”となった憧れの舞台で、今回ついに見事2位を獲得。その激闘の一日に密着する。
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猛者たちが集う「JCCAクラシックカーレース」とは
日本クラシックカー協会(JCCA)の主催する「JCCA筑波ミーティング」は、1975年までに生産されたクラシックカー(同型車は1979年までの生産車まで可)により競われるクラシックカーレースだ。FIAの定める国際モータースポーツ競技規則に準拠したJAFの国内競技規則と同様の厳しいレギュレーションに則し、茨城県筑波サーキットにて春夏秋の3回、JAF公認の準国内競技として開催される。
現役当時にわが国のモータースポーツで活躍した日本車が一大勢力であるが、その参加車両は国際色豊かで、欧州車勢もパドックを賑わしている。年式や排気量、チューニングなどによりクラス分けされたレースのなか、Sクラスレースへのエントリーは約半数がポルシェで、BMW、アルファロメオ、ロータスといった輸入車たちも熾烈なバトルを繰り広げているのだ。
参加ドライバーたちも長年レースを楽しんでいるベテランの猛者揃いだ。そんな中に、レーシングスーツに身をまとった可愛らしい女性の姿を見つけた。実は彼女、女性だけで行われるワンメイクレース「KYOJO CUP」に参加しているレーシングドライバーの佐々木藍咲(ささき らみ)選手だ。
トヨタ・ヴィッツの1.5Lエンジンとトランスミッションを使った、「VITA-01」というレーシングカーを使っての年間シリーズであるKYOJO CUP。佐々木さんは、2025年はその上位にあるフォーミュラクラスへとステップアップするなど、注目株の女性レーシングドライバーである。
現在21歳の佐々木さんがレーシングドライバーを志したのは、実はこのJCCAクラシックレースがきっかけ。
「幼少の頃、両親と見学したのですが、応援している選手が何度も表彰台に上がっている姿がカッコよくて、いつかはJCCAのクラシックカーレースに出ることも夢の一つになりました」
という彼女に、「うちのクラブのダットサン・フェアレディ2000(以下SR)に一度乗ってみないか」と、SP/SRオーナーズクラブから誘いがあったのは昨年2024年のこと。
まずはレースではなく走行会でフェアレディ2000をドライブしたところ、初めて乗るとは思えないほどの走りを見せた。しかも佐々木さんの生まれるより四半世紀も前のマシンである。
自らも愛車SRで積極的にレース参加し、SP/SRオーナーズクラブでクラシックカーレース部門を担当する大村氏も、旧いマシンにストレスのかかる扱いをしないし、タイヤの使い方やコントロールも申し分ないと、佐々木さんの運転センスをベタ褒めだ。
「決勝に繋がる」予選で見えた逆転へのヒント
そして2025年6月15日(日)、
「昨年、テスト的に走行会でSRを運転させていただき、これならレースも問題ないということで、スプリントレースと、耐久レースにも出させていただいたのですが、マシントラブルもあり、まだ満足な結果を出せていません」
という佐々木さんにとって、3回目のクラシックカーレース当日を迎えた。
まずは予選が始まる。前回と同じく今回のコンディションも雨。タイヤはアドバンA050、いくつかあるコンパウンドの中、レイン用のGSをチョイス。前回、前々回と予選クラスポールポジションを獲得しているだけに期待が高まる。
「グリップ感はありましたが内圧を上げられず、タイヤの美味しいところを使えないまま予選が終わってしまいました。ポールを取れなかったのが悔しいですが、ポジションアップのヒントもあり、決勝へと繋げられる予選だと思いました」
佐々木さんが走る「Sレース」は、1975年までに生産された「S75クラス」と1968年までの車両「S68クラス」の混走レースだ。予選1位&2位のブルーバード1800SSSとフェアレディZ432はS75クラス、続く3位と4位は2台のアルファロメオで、佐々木さんと同じS68クラス。それから遅れること約2秒、佐々木さんとSRはS68クラス3位で予選を終えた。
直線で離され、コーナーで詰める! 0.25秒差の激闘
2つのクラスの混走であるので、決勝では総合6番手からのスタートとなった佐々木さん。15台で争われる12周の決勝レースがスタートし、グリッドそのままのポジションで第1コーナーへ進入するSRにチームスタッフも笑顔を見せる。
「一番不安だったスタートが失敗しなくてホッとしました。ダンプコンディション(セミウエット)で、タイヤ選択にはチームと一緒に悩み、予選と同じタイヤで走りました。発進さえできれば、勝てる! と思っていました(笑)」
と語る佐々木さん。実は、過去にはスタート時にエンストし、せっかくのポジションを落としてしまったこともあるのだが、不慣れなキャブレター車という言い訳はもうできない。
コースでは前をいくアルファロメオのストレートスピードが速く、コーナーで追いつき、直線で離されるという展開が続くが、11周目で23号車をパスしてクラス2位に浮上し、トップとのタイム差0.25秒という僅差でチェッカーを受けた。
「ずっと水温計とにらめっこで、最後の2、3周はとてもキツかったですが終わってみると楽しいレースだったな! という感想です。一番大きなトロフィーを取れなかったのは悔しいですが、やっと表彰台に上がれたのは、本当に嬉しいです」
と顔をほころばせた。
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スケジュールの関係で、佐々木さんのJCCAクラシックカーレース次戦は来年になりそうだが、7月19、20日に開催されるKYOJO CUP Rd.2は、全日本スーパーフォーミュラ選手権と併催になる。富士スピードウェイでの夏祭りレースで、カーナンバー8「Kids com Team KCMG」佐々木藍咲選手の活躍に期待したい。