ディーゼルらしからぬグッドサウンド
最初に試乗したのは注目の2.0リッター直列4気筒ターボディーゼルを積む「20dピュア」だった。このエンジンはXEに積まれるのと基本的には同じユニットなのだが、XFに組み合わされるとだいぶ印象が異なるから面白い。何が違うって、とにかくサウンドがぜんぜん違う! 1800~3000rpmあたりで加速に弾みがつくのは同様なのだが、その時、まったくディーゼルらしからぬ粒ぞろいで乾いたエキゾーストノートを聞かせてくるのだ。そのサウンドはお世辞抜きにスポーティで、「官能的」と称しても差し支えないほど。XEだとちょっとガラガラ音が耳についただけに、これはうれしい誤算だった。室内に侵入してくる絶対的な音量も低く抑えられており、このあたりは上級モデルとしてより入念に遮音対策やチューニングが図られた結果だろう。アイドリングストップなど、エンジンをオン/オフする際の振動も明らかに小さい。ただしそのぶんXEより100kg重いので、血の気の引くような強烈な加速はややなりを潜めたように感じた。
高速巡航は快適そのもの。100km/h時のエンジン回転はわずか1400rpmで、Cd値0.28という優秀なエアロダイナミクスもあって不快なエンジン音や風切音はほとんど聞こえない。無音のまま空気を切り裂き、どこまでも突き進んでゆく感じだ。サスペンションは路面からの入力に応じて減衰力を自動的に可変するダンパーを採用していて、クルーズ時のゆったりとした足さばきもラグジャリーサルーンらしさに溢れている。
一方、コーナリング時にはしっかりボディのロールを押さえ込む設定となるから、街中や高速における快適さからは想像できぬほど俊敏なハンドリングをみせてくれる。ただしそれはXEのように「軽快」と称せるようなものではなく、どちらかといえば「正確」と表現できるもの。これはホイールベースがXEより125mm長く、先代より50mm延長された影響が大きそう。だがこれもXFというクルマのキャラクターにはよく似合っている。このあたりの作り込みの深さが、やはりクルマが大好きな自動車メーカーは違う。