福島県道70号福島吾妻裏磐梯線
福島県道70号福島吾妻裏磐梯線がこのルートの正式な呼び名ではある。しかし、この雄大な眺めを有する山岳路は磐梯吾妻スカイライン、あるいは、磐梯吾妻道路と呼ばれることの方が圧倒的に多い。
磐梯吾妻スカイラインが有料道路として旧日本道路公団の手によって完成したのは1959年(昭和34年)。経済企画庁が経済白書で「もはや戦後ではない」と謳った3年後のことで、モータリゼーションの世界では富士重工業がスバル360を発売した翌年となる。世相的な意味でみれば、高度成長期に立派な山岳道路が造られたことは、大衆車の登場とともに大きく国民を勇気づけたことだろう。そして、先の東日本大震災の後に観光復興策のひとつとして通行料が無料化され現在に至っている。この素晴らしい眺望を誇る一本の道は、吾妻連峰の山々と人々を結びつけるだけではなく、この山々の周囲に暮らす人々を勇気づけ、どこかで助けてきたのだろう。
かつて、この道のルートは山伏修験のための登山道が通じていたという。その急峻な山道を登り詰め、やがて吾妻小富士が現れる平坦地までたどり着くと登山者は救われるような思いだった。そして、そこに広がる穏やかな風景は極楽浄土のようだったという。その場所は、現在、浄土平と呼ばれ、多くの観光客が足を止め、吾妻小富士に登り、絶景に酔いしれる場所である。